↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ただの魔法使いですが、推しのアイドル騎士様に執着されています。  作者: 湊一桜
第三章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
39/48

リヴィエール兄妹のこれから

 眩しい朝の光。体はすうっと軽い。そして、温かい手……



 目を開けると、目の前にはスタンの顔。美しくて切なげで、思いっきり飛び上がりそうになった。


「お、おはよ、スタン!! 」


 私はかろうじてそう告げ、状態を起こす。酷く消耗していたはずなのだが、体は驚くほど軽い。


 (まさか私、死んじゃったの? )


 そう思ったが、そうではないようだ。


「エルザ!! 」


 スタンはその青い瞳に涙をいっぱいため、子供のように口をへの字にして私に抱きつく。


「ちょっと待って、スタン。

 何があったの? ここはどこ? 」


 すると、聞き覚えのある新たな声がした。


「ここは大聖堂です。あなたは酷く消耗し、三日間眠られました」


「三日間!? 」


 私は飛び上がる。そして叫んでいた。


「仕事行かなきゃ!! 」


 

 前世バリキャリOLの私からしたら、無断欠勤は絶対にしてはいけないことだ。ただでさえ忙しい職場なのに、三日間も店を開けてしまったのだ。


「大丈夫です。『Alice’s cafe』には、あなたが重大な事件に巻き込まれ、療養中であることをお伝えしています。

 アリスさんも大層心配しておられました」


「重大な事件……」


 その言葉を反芻し、ようやく思い出した。

 私は恐らく革命軍に捕まり、命の危険に瀕していたのだ。そこでスタンが助けてくれて……どうなったのだろう。


 ぐるっと辺りを見回すと、私は白いベッドに横たわっているのが分かった。隣には、私に抱きついているスタン。ベッド脇には、相変わらず穏やかな表情のロラン。前方にはダミアンとお兄もいる。


 (うわっ!スリースターズと茶虫が揃ってる!! )


 密かに興奮してしまったのは言うまでもない。


 だが、私たちが洞窟から脱出した後、どうなったのだろう。




「スタンさんから話は聞いている。

 偉かったな、全治全能の石を奴らに手渡さなくて」


 お兄が私の頭を撫でる。だが、髪の感触がいつもと違い、動揺を隠せない。そして窓に反射した自分の姿を見て、飛び上がりそうになった。


 腰まであった茶色い髪は、今や肩上までの長さとなっている。


 (そうだ。魔法で攻撃されて、髪が焦げてしまったんだ)


 スタンはあんなに美しいというのに……髪だけが私の取り柄だったのに……この姿じゃますます自分が惨めになる。

 泣きそうな私の頬に、スタンはそっと頬を寄せた。そして、泣きそうな声で告げる。


「全力で守ると誓ったのに、エルザに辛い思いをさせてしまった。

 僕は騎士失格だ」


 もちろんそんなことはない。私は一縷の望みをかけ、スタンを呼んだのだ。そして、私たちは今こうしてここにいる。


「スタンはそんなに落ち込むな。じめじめした男は嫌われるぞ」


 ダミアンが笑いながら言う。そしてそのまま、私に聞いた。


「エルザは、もし良かったら、何があったか教えてくれないか?

 あの夏祭りの夜、急にお前の姿が消えて、俺たち皆必死で探してたんだ」


 それで私は、捕まってからのことを事細かく説明した。皆は私の話を、時には青ざめ、時には怒りながら聞く。




「相手は革命軍で間違いないな。スタンの証言もあるし」


 ダミアンは唸る。


「そもそも、魔術師中心の差別国家を擁立するなんて、頭がおかしいとしか思えない。

 

 エルザが断固として拒否してくれて良かった。これで彼らも、エルザを引き込むのは絶望的だと分かっただろう」


「そうですね。

 エルザさんと茶虫さんは、革命軍に関わることを恐れ、リヴィエールの名を隠されていました。

 だが、今後はリヴィエールの名は革命軍にとって脅威になるに違いありません」


「あぁ。絶対に革命軍に入らないリヴィエール兄妹が軍のバックについていると分かると、首都奪還も諦めるだろうな。


 ……何しろ、リヴィエール兄妹は首都に集められた魔物を一掃し、エルザに至っては革命軍を殲滅してしまったから」


 ダミアンとロランが頷きながら話し、スタンも私を抱きしめたまま頷いている。そしてふふっと笑い、私の頬にキスをする。それだけで私は真っ赤になる。




「これにて、とりあえずは一件落着でしょう。

 ですが、エルザさんは全治全能の石を使い過ぎました」


 ロランは浮かない顔で告げる。


「私たちの推測からすると、エルザさんの寿命は、この石によって十五年ほどは削られています」


「十五年!? 」


 スタンは素っ頓狂な声を上げる。そして、縋るようにロランに聞く。


「どうにかならないの? エルザはまだまだ生きなきゃならない。

 出来ることなら、僕の寿命を十五年削って欲しい!」


 そして、ぽつりと付け加えた。


「忠誠を誓ったのに、エルザ一人守れない僕なんて、生きる価値はないんだよ」


 だが、私は違うと思う。

 私は首都に来て、毎日楽しい日々を過ごしてきた。ピンチの時は助けてもらったし、今もこうして元気にしている。これも全部、スタンのおかげだ。



「スタン。この石、斬って? 」


 私はペンダントを外し、それを机の上に置いた。こんな私を、皆が驚いたように見ている。

 そんな彼らに、私は笑顔で告げる。


「人の生死は、石に決められるものではないと思うの。寿命が尽きたら穏やかに眠る、それが人間らしいと思うの。


 それでも、この石を持っていたら、これからも願ってしまう。

 この石のせいで、人間らしい生き方が出来なくなる」


「でも……形見でしょ? 」


 スタンの声は震えていた。

 スタンは優しい。こんな時まで、両親を失った私の心を心配してくれるのだから。だが、私は今、大切なみんなに囲まれて、とても幸せだ。


「お父さんやお母さんも、今となってはこれを壊して欲しいと思うな。

 革命軍もこれを狙っているんだし」


 私の言葉に、お兄も頷く。そして、首にかかる瓜二つのペンダントを外し、私のそれの隣に置く。


「スタンさん、俺のものも一緒に、お願いします」



いつも読んでくださって、ありがとうございます!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。