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ただの魔法使いですが、推しのアイドル騎士様に執着されています。  作者: 湊一桜
第三章

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騎士団長は、結婚したい

 スタンは困った顔で、ダミアンとロランを見た。だが、二人ともこくりと首を縦に振る。


「本当にいいの? 」


 何度も確認するスタンに、イラついたようにダミアンが言う。


「煮え切らない男め。

 ハッキリしない男は嫌われるぞ!? 」


 その瞬間、スタンは二つのペンダントを、スパッとひと斬りで真っ二つに割った。青黒いペンダントからは禍々しい霧がシューッと吹き出し……そしてやがて、ただの黒い石となった。


 それを見ていると、ホッとしたような少し悲しいような気持ちに襲われる。


 (形見は無くなったけど、両親の思い出は胸の中に生きているよ)


「これで、革命軍が全治全能の石を求めることも無くなったな。

 もう、この世には存在しないのだから」


 安心したようにダミアンが告げた。





 それから、私たちはいろんな話をした。

 

 皆が私たちを見つけてから現在に至るまで、たくさんの話を。



 洞窟から飛び出した私たちを見つけたのは、騎士たちだった。彼らは大急ぎで神官を呼び、ロランが駆けつけた。ロランは魔法陣によって私たちを大聖堂へ飛ばし、治療を行う。


 神官の中では、紛れもなくロランの力が一番強い。そのロランが必死に治療して、体の傷は何とか治癒した。だが、どう頑張っても焦げた髪だけは戻らなかった。


 それを知ったスタンが、ロランに怒り狂っていたらしい。ロランがいなかったら、私たちは死んでいたかもしれないのに。



 ダミアンとお兄が、革命軍が使っていた洞窟を調査した。生き埋めにされた人が多数おり、皆で救助をした。捕まった者は現在、牢屋に閉じ込めてある。


 革命軍の中には、軍で楽しく過ごしているダミアンとお兄を見て、考え方を改めた者もいるとのことだ。すぐに解放とはいかないが、遠い未来、彼らがこの軍のためにその力を使ってくれればいいと思っている。





「エルザが正しい心を持った人で良かった。

 スタンもいい相手を見つけたな」


 ダミアンは裏表のなさそうな笑顔で私を見ている。そんなダミアンを見ながら、ふと思った。

 私はダミアンが大の苦手だったが、今やとても信頼していることに気付く。


 (不思議だな。あんなに嫌だったのに……)


 ダミアンをぼーっと見ていると、頬を膨らませたスタンに聞かれた。


「エルザ、なんでダミアンのほう見てるの? 」


「えっ!? 」


 咄嗟の質問にどぎまぎする私。こんな私をまた抱きしめ、好きだ好きだというように頬ずりし、甘い声で囁くスタン。


「ダミアンがいい男なのは分かるけど、エルザを一番愛してるのは僕だよ?

 僕以外の男を、そんな目で見ないでよ」


「まさかスタン、嫉妬してるの!?」


 思わず聞くと、彼は恥ずかしげもなく言い放つ。


「当然じゃん。嫉妬するに決まってるじゃん!

 エルザは可愛いから、そうやって男が寄ってきて……」


「ちょっと待って……」


 私は震える声で、スタンに告げていた。


「その言葉、そっくりそのままスタンに返したいよ」


 元はと言えば、スタンは絶対零度の青狼スタニスラスだ。初めて出会ったその日から、ファンにきゃあきゃあ騒がれていた。異性が寄ってくるのは、むしろスタンのほうだ。


 複雑な顔をする私の前で、スタンは急に背筋を伸ばし、お兄を見る。そして、真剣な顔で告げた。


「フィリップさん。僕は、エルザが人気者すぎて不安です。

 エルザとの結婚の許可をいただけますか? 」


「「えっ!? 」」


 お兄と私の声がハモっている。

 予想外の言葉を聞いた私は大慌てだ。


「ち、ちょっと待って。なんでいきなりそこまでぶっ飛んだわけ?


 あっあのね、スタン!私たちはまだまだキスだってしていないのに……」


 そう言って、さらに恥ずかしくなって口を押さえる。


 (キス!? スタンとキス!?

 そんなことをした、私、くらくらして倒れてしまいそう)


 だが、スタンはすでにその気らしい。そのゾッとするほど綺麗な顔で、にやっと笑った。


「キス? してるよ? 」


 (……えっ!? )


 まさか、ほっぺにチュとか、おでこにチュのあれのことを言っているのだろうか。それだけで、もちろんドキドキしてしまうことには変わりないが……


 深く考え込む私に手を伸ばすスタン。そしてそのまま、そっと唇を重ねた。柔らかい唇の感触とスタンの甘い香りに、頭がくらくらする。倒れてしまいそうなほど、顔が熱い。


 スタンがそっと唇を離すと、皆が真っ赤な顔でこっちを見ている。ダミアンに至っては、目を両手で覆い、その隙間から見ているほど。


 (み……みんなの前でするなんて!

 ファーストキスだったのに!! )


「スタンの馬鹿ぁぁああ!! 」


 私は大声が、青い空に響き渡っていた。


いつも読んでくださって、ありがとうございます。

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