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ただの魔法使いですが、推しのアイドル騎士様に執着されています。  作者: 湊一桜
第三章

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茶虫兄妹の呪文炸裂

 地面に降りた瞬間、スタンは大切なものを置くように、そっと私を地面に下ろす。こんな時なのに胸が熱くなる。そんなスタンを、


「団長!! 」


騎士たちは半ば悲鳴のような声で呼んだ。


「団長!魔物が多すぎます!」


「どうしてこんな……」


「あぁ!! グレイがやられてる!! 」


 スタンはキリッとした表情で前を向く。そして、やられている仲間のへ駆け始めた。すれ違いざまに剣を引き抜き、グレイさんを襲っている魔物を瞬時に真っ二つにする。次の瞬間には、左側の魔物を倒していた。


「彼、すげぇな」


 いつの間にか隣にはお兄がいる。


「あの強さじゃ持て囃されるのは当然っつーか……

 それに比べてウチの団長は……」


 お兄はそんなことを言うが、お兄が規格違いなだけで、ダミアンは十分強い。大半の魔術師が引き気味なのに対し、彼は魔術師団の最前線に立って魔物を攻撃している。四方八方から激しい火の気が上がっていた。


「フィリップ!」


 ダミアンが魔法陣を描きながらお兄に聞く。


「お前らの魔法は、広範囲をカバー出来るか!? 」


「あぁ、もちろん!」


 ダミアンはホッとした表情を浮かべ、口早に告げた。ただ、目は敵を捉えて離さない。


「今、この街は魔物に取り囲まれている。

 魔物が集中しているのはこの辺りだが、街の裏側は人手が不足している。

 ここにいながら、街の周囲全体を攻撃することは出来るか!? 」


「やってみる!」


 お兄と私は顔を見合わせて頷いていた。




 目の前では騎士たちが魔物と激しい戦いを繰り広げている。その中を、まるで青い矢のようにスタンが駆け抜けていく。そして、魔法が地を、空を眩く照らす。


 お兄は特大の魔法陣を描き始める。よく知っている魔法陣だ。私もお兄の斜め後ろから、全く同じ魔法陣を描く。


 特大魔法陣は、描画に時間がかかる。魔法陣内に描く呪文も複雑で、一語一句間違えてはならない。それを正確に、素早く描いていく。



 そして、お兄と私の魔法陣が重なって白く光る。


「「イクリプス!! 」」


体から凄まじい魔力が放出される。空で煌々と輝いていた月の光が暗くなり、辺りが神秘的な闇に包まれた。そして、四方八方で白く輝く大爆発が起こる。

 地面に広大な穴が開き、その範囲にいた魔物は一掃される。だが、人間は何事もなかったかのように動き回っていた。



 続いて、新たな魔法陣を描く。 

 小さい頃からずっと魔法遊びを繰り返してきた私たちは、息ぴったりだ。お兄と同じ特大魔法陣を描き、再びそれらが重なる。それらは水色に輝き、


「「ビーム!! 」」


眩い水色の光線が、首都の周りを一周する。その光線は味方を避け、魔物を真っ二つに切り裂いていく。



 こうやってお兄と私は、おそらく『伝説の魔法』と呼ばれるものを次々に放っていった。それで多くの魔物をやっつけることが出来たが、取り逃がしたものもある。上手く私たちの魔法を避けた魔物は、騎士団と魔術師団によってとどめをさされるのだった。


 

 特大の魔法陣を描き、全力で魔法を撃った。そのため、さすがの私もへとへとだった。もう立てないほどに消耗した私の前で、ブルーグレーのマントを翻したスタンが、また魔物を一体倒している。


「まだ魔物はいるか? 」


 スタンの声が響き、


「あと残り三体です!! 」


部下が答える。


「それならば、我らで片付けよう」


 彼はそう言い、魔物の血で染まった剣を上げた。



 スタンの言葉は嬉しかった。全力で魔法を撃った私には、残り僅かな力しか残っていない。そして、まだピンピンしているスタンを頼もしく思う。


 お兄がヘタレて、私の隣に腰を下ろす。私もがくっと地面に両膝を突いたときだった。




 体に衝撃が走り、目の前が真っ白になった。

 何が起こっているのか理解するまでもなく、私の意識は遠のいていった。


 意識が完全に途切れる前、


「エルザ!! 」


大好きな彼が私の名前を呼ぶ声が聞こえた。


「スタン……」


 彼の名を呼ぶが、その声が彼の耳に届くことはなかった。


いつも読んでくださって、ありがとうございます!

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