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ただの魔法使いですが、推しのアイドル騎士様に執着されています。  作者: 湊一桜
第二章

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赤獅子の粋な計らい

 こうして何気ない日常が過ぎていく。

 いつも通り過ごしていると、私がリヴィエール家の末裔だとか、革命軍に狙われているとか、そんなこと嘘のように思えてくる。


 だが、私が平穏に暮らしているのは、もちろん首都を守っている軍の皆さんのおかげで……私の知らないところで多くの革命軍の人間が投獄されていたことなんて知らなかった。





「いらっしゃいませ!」


 私はいつものように笑顔で接客する。

 厨房では私の描いた無数の魔法陣から出される魔法が、全自動で料理を作っている。そしてもちろん、客はそんなことは知らない。


「おすすめはありますか? 」


「暑くなってきたので、推しパフェも始めましたよ。

 ブルーハワイ味の青狼パフェ。いちご味の赤獅子パフェ。レモン味の黄虎パフェ。……チョコ味の茶虫パフェもあります!」


「パフェ!? 何ですか、それ!

 それなら黄虎パフェお願いします!」


 新メニュー、推しパフェの売り上げも上々だ。意外と茶虫パフェも人気があり、美味しいと食べてくれる人もいる。




 もちろん騎士たちも買いに来た。


「茶虫パフェ一個と、青狼パフェ五個、テイクアウトでお願いします」


「かしこまりました」


 笑顔で答えて準備に取りかかろうとすると、騎士は告げる。


「自分たちも茶虫パフェを食べたいのですが、茶虫パフェは食べるなとの団長命令が下りました」


 びっくりして飛び上がりそうになる。


 (もう、本当に……何してるのよ……)


 もちろん騎士たちは楽しんで言っているのだが、スタンを思い出してにやついてしまうのであった。





 そんないつも通りの夕方……にわかに外が騒がしくなったと思うと、急いだ様子のダミアンが店に駆け込んでくる。


「「だっ、ダミアン!? 」」


 思わず叫んだ私の声と、アリスさんの声がハモっていた。アリスさんはハートの目をしているが、私にはゾゾーッと寒気が走る。


 (なんでダミアンが来るんだよ……)


 ダミアンはあの日、頻繁に店に現れてやると言っていた。だが、ダミアンが来ることはなかった。私を気遣って来てくれないのだと思っていた。


 (でも、来ちゃったんだ……)



 ダミアンの後ろには、ファンの行列が出来ている。皆が目をハートにし、赤うちわを振ってアピールしている。ドライなスタンに対するファンの態度より、ダミアンのファンの態度は数段上だ。


「ダミアン様ぁぁッ!! こっち向いてウインクしてくださぁい!」


 ダミアンはいちいち振り向いてウインクをする。すると、また黄色い悲鳴が湧き起こる。


 (相変わらずすごいな、そのファンサービス)




 ダミアンはひととおりファンサービスをすると、私を見る。そして、


「店員さん、テイクアウトをお願いな。

 俺と、魔術師団の団員のものと」


私に紙を差し出した。

 どうやらダミアンも私が馴れ馴れしくして欲しくないことを悟っているらしい。だが、その態度がよそよそしい。


「か、かしこまりました」


 私は笑顔で紙を受け取り、それに目を落とした。


 (無茶な注文じゃないといいんだけど)



 だが、その白い紙に書かれているのは、テイクアウトの注文などではなかった。走り書きのような汚い字で、大きく書かれている。


『スタンが何かの術にかかって、眠り続けている。

 大神殿へ行ってやってくれないか? 』


 (……えっ!? )


 予想外の事実に、戸惑いを隠せない。私はきっと、すがるようにダミアンを見ていたのだろう。ダミアンは周りに悟られないように、真剣な目で私を見て小さく頷く。


「それと、店長」


 ダミアンはアリスさんを見てにこやかに言うものだから、真っ赤な顔のアリスさんが頬を押さえて出てきた。そんなアリスさんに、彼は申し訳なさそうに告げた。


「この店員さん、結構魔力消耗してるから、少し休憩時間与えてあげれる?

 ……魔術師の俺には、同族が弱っていると分かるんだよ」


 そして悩殺スマイルを送る。それでアリスさんはさらに真っ赤になってしまって、顔を押さえて叫んでいた。


「エルザ!ダミアン様のオーダーを作ったら、休んできな!! 」


「あ……ありがとうございます!」


 私は手早く数個の赤獅子パフェを作り、ダミアンに手渡す。そして駆け出していた。


 もちろん、ダミアンがアリスさんに告げたことは嘘だ。これっぽっちの魔法で私が消耗するはずがないし、ピンピンしている。だが、彼がなんとか私を行かせてくれようと、頭を働かせたのだ。


 (誰も嫌な気分になっていないし、私だってスタンの元へと向かうことが出来る)


 ダミアンはチャラくて苦手だったが、その人気の理由が分かった気がした。お兄が魔術師団長の座を拒否しているのも理解出来た。





 私は街の中央部の大聖堂へ向かって、全力で駆けている。心臓がバクバクし、体を汗が流れた。


 (スタン……何があったの?

 どうしてスタンみたいな強い人が、何かの術にかかってしまったの!? )


 考えれば考えるほど、嫌な予感しかしなかった。


いつも読んでくださって、ありがとうございます!

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