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ただの魔法使いですが、推しのアイドル騎士様に執着されています。  作者: 湊一桜
第二章

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名家の末裔、リヴィエール兄妹

「そうか……」


 ダミアンはいつになく神妙な面持ちで、腕を組んで私たちを見ている。そしてスタンは大丈夫とでも言うように、そっと手を握ってくれる。

 そしてお兄は何かを知っているのだろう、ぐっと口を噤んで下を向く。


 そんな私たちに、意を決したようにダミアンが聞いた。


「お前らは、大魔術師リヴィエール夫妻の子なのだろう? 」


「だ、大魔術師!? 」


 何も知らない私は素っ頓狂な声を上げていたが、お兄は黙って下を向いている。いつもはお調子者のお兄がこんな顔をするなんて、ダミアンの問いは正解なのだろう。


 (それにしても、大魔術師だなんて……)


「リヴィエール家の人は、代々すごい魔力を持っているって噂だからね。

 それでも、エルザがリヴィエール家出身であってもそうでなくても、僕にとっては問題ないんだよ」


 スタンは私を諭すように穏やかに告げる。

 大魔術師についてはよく知らないが、そのスタンの言葉にとても救われた。両親はとんでもない人なのかもしれないが、それでもいいのだと思って。


 思い返せば、私もスタンに同じようなことを言った。スタンが騎士団長のスタニスラスだと震えながら教えてくれた時、ありのままのスタンが好きなのだと告げたのだ。

 今となってはよく分かる。スタンはきっと、私の言葉に救われたのだ。だから次は、同じように私の心を救ってくれる。



「そうじゃないんだよ」


 だが、ダミアンはイライラしたようにスタンを睨む。


「騎士家系のお前には分からないんだろうけどな。

 リヴィエール家っつーのは、魔術師にとって憧れの的でもあって、脅威でもある」


 ごくりと息を呑む私の横で、とうとうお兄が口を開いた。


「ダミアン、黙ってて悪かった。

 もちろん俺は、お前のことを疑っていた訳ではない。

 でも……入団時は初対面だったし……エルザがランダルの地で大軍に襲われたっつーから……」


「た、大軍!? 」


 スタンは青ざめ、私の手を握るその手に力を込めた。


 私だって、早くスタンに話せば良かったのだろう。だが、リヴィエール家がどんなものかも知らなかったし、なぜ姓を名乗ってはいけないのか理解もしていなかった。


 ダミアンはなおも真面目な顔で続けた。


「詳しいことは知らないが、十年以上も前、リヴィエール夫妻は亡くなっている。

 禁断の魔法の研究中、事故で亡くなったという噂だ。そしてリヴィエール家の血筋は途絶えたと信じられていた」


 (でも……途絶えていなかったんだ。

 私の体を巡るこの血は、紛れもないリヴィエール家のものなんだ)


 考えると頭がくらくらしてきた。私は今まで自分が特別だなんて思ってもいなかったし、ただの平民だと思っていた。それがいきなり、大魔術師家系の末裔だなんて……


「この街の治安は悪化しているし、革命軍も活発に動いている。

 革命軍は魔術師を頂点とした国家の擁立を目指しているから……絶対に目をつけられる」


「えッ!? 」


 思わず声を上げた私を、スタンが我慢出来ないとでも言うように抱き寄せる。


「革命軍はリヴィエール夫妻の禁断の魔法を欲しがっているし、リヴィエール家の者を王として立てるだろう」


「王なんて、嫌だよ……」


 私はスタンにすがるように告げた。


「今までは、お前らの存在はバレていなかった。

 でも……まずいかもしれない」


 部屋はしーんと静まり返り、キャラに似合わず真面目なダミアンの話を一心に聞く。


「お前らは、伝説の魔法メテオを派手に炸裂させた。メテオを使えるのは、代々リヴィエール家の者だけだ。だから、リヴィエール家が途絶えていないことを、世に知らせてしまった。


 メテオだけではない。さっきお前らが言ったイクリプスや、崩壊の呪文コラプススとか……それ以外にも、リヴィエール家に伝わる伝説の魔法は数個存在している」


 (イクリプスも、コラプススも使える)


 背筋にゾゾーッと鳥肌が立つのが分かった。お兄を見ると、お兄も真っ青になっている。


「リヴィエール夫妻の子供が生きていると知ったら革命軍はお前らを狙うに違いないが……

 フィリップが転がり込んだのが、ウチの魔術師団で本当に良かった」


 ため息混じりにダミアンは告げた。


「これが革命軍に転がり込んでいたら、世界は恐ろしいことになっていた」




 重苦しい空気が漂う。そんななか、ダミアンが立ち上がった。


「そんなわけで、魔術師団としては、茶虫兄妹の周囲への警戒を強化することにした。

 ……なんてことはない。俺が頻繁に店に現れてやるからな」


「ひぃぃぃいい!! 」


 それはやめて欲しい。私はファンから恨まれるだろし、色々誤解されるだろうし。だが、ダミアンの話に恐怖を感じるのも事実だった。あの日突然襲ってきた大軍は、私に関する何らかの情報を掴んだのだろう。


「騎士団も警戒を頼む。

 騎士にとってリヴィエール家は馴染みのないものだけど、マジで国家存亡に関わってる」


 ダミアンはそう言い残して、青ざめた顔のお兄と出て行った。

 ダミアンなんて嫌なのに、今はダミアンがいなくなるのが酷く怖い。魔法の腕はお兄に劣るが、魔術師団長としては誰もダミアンに勝てないと思った。……悔しいが。


いつも読んでくださって、ありがとうございます!

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