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ただの魔法使いですが、推しのアイドル騎士様に執着されています。  作者: 湊一桜
第二章

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部下から愛されるアイドルたち

「今回の戦い、俺たち必要なかったんじゃないですか? 」


「それな!」


 そんな話を聞きながらも、今回は相手が悪すぎたと思ってしまった。難敵だったからこそ、非常勤魔術師も招集されたのだろう。


「団長がドラゴンに登った時、やめてくれと思いました」


 スタンはぺたーっと机に伏せながら、弱々しく告げる。


「だって、エルザにかっこいいところ見せたいじゃん」


 私はビクッと飛び上がる。


 (まさかあの捨て身の行為は、私に自己顕示するためにしたってこと!? )


「す、スタン!!

 私はスタンが強くてかっこいいことを知ってるから、命を大切にしてね!」


「ほんとに? 僕、かっこいいの? 」


「か……かっこいいよ」


 それは眩しいくらいに!!


 神々しいほどの彼の姿に見惚れている私の近くで、


「うぜー」


団員たちがぼやく。


「団長、マジでうぜー……」




「こいつがうぜーのは分かるけど、騎士たちは絶対必要なんだよな」


 聞き慣れた声がして顔を上げる。すると、いつの間にかそこには、ダミアンとお兄が立っていた。


 (そういえば、私の両親について確認があるとか言ってたっけ……)


 考え込む私を前に、ダミアンは言う。


「魔術師だけじゃ、魔物に勝てないもんな。

 俺たち騎士みたいに力は強くないし、近距離にまで迫られるとおじゃんだ」


 そして付け加えた。


「それでもまあ、伝説の呪文メテオなんて唱えられりゃあ、一撃だろうけど」


「えっ!? メテオ出来ないんですか!? 」


 思わず聞いた私に、ダミアンは顔を歪めて吐き出す。


「出来るわけねーだろ。喧嘩売ってんのか茶虫妹は!! 」


 茶虫妹に戻っていて心底ホッとする。


「……たく。お前ら、どんな魔法教育受けてんだか」


 ぼやくダミアンに、お兄は答えた。


「物心ついた頃には出来たんだよな。

 俺たち僻地で暮らしてたから、毎日魔法打ち合って遊んでて」


「そうそう!間違えてメテオで山一つ潰しちゃったり、イクリプスで広いクレーター作っちゃったり」


 懐かしむ私たちを見て、ダミアンとスタンは口をぽかーんと開けている。二人だけでなく、聞いていた騎士たちも。そこで、私たちの普通が全く普通でないことに気付いてしまった。

 マウントを取るつもりは全くないので、慌てて付け加える。


「でも!お兄の言う通り、この街ではおとなしくしていました!!

 派手に魔法を使うと目立ってしまうと聞いていまして……」


「そうだな」


 ダミアンは面白そうに宙を見つめ、その日のことを思い出していた。


「フィリップは、ものすごい登場の仕方をしたもんな。

 空飛ぶ雲に乗って魔術師団に現れて、派手に花火を撒き散らしながら、『雇ってください!俺、ものすんごいですから!!』って」


 (あちゃー……)


 私は頭を抱える。お兄は馬鹿なのだろうか。そして、そんな変人を雇ったダミアンも凄い。


「フィリップはすげぇのに、魔術師団長も変わってくれない」


「それは当然だ。俺にはお前らのファンを上手く操ることなんて出来ないし、団長の仕事も大変そうだし」


 (そうか。お兄は魔術師団長まで打診されていたのか)


 それでやはり、私たちは滅茶苦茶な魔法を使っていたことを思い知る。そして、自分よりも強い部下を受け入れてくれているダミアンも、実はいい人なのだろう。




 ダミアンはぐるりと辺りを見回し、歩き始めた。そしてその後にお兄が続く。


「茶虫妹よ。この続きは企業秘密になるから、奥のゲストルームで話そう」


 そんな言われ方をすると、ダミアンについていくしか出来なくなる。続いてダミアンは、スタンを見る。


「スタン。お前が本気で茶虫妹の身を心配するのなら、お前もこの話を聞いておいたほうがいいだろう」


 スタンはこくりと頷き立ち上がる。その顔からはいつものふにゃーっとした雰囲気は消え、むしろ騎士モードの時のように引き締まっている。


 こうして、ダミアンは私たちをゲストルームに招き入れ、私たち兄妹ですら知らなかった話を話し始めるのであった。






 広いゲストルームの応接セットに、私たちは座っていた。神妙な面持ちのスタンは、守るように私に寄り添っている。どんな話をされるのかビクビクしたが、スタンの隣にいると気分も落ち着いた。


 そして静まり返った部屋の中、ダミアンがお兄に聞いた。


「お前の名は、フィリップ・リリ・エールではなく、フィリップ・リヴィエールなのか? 」


 お兄は少し気まずそうに私を見る。それで、私もはっと我に返った。


 私は、両親の言いつけを守っているはずだった。人にはむやみやたらに本名を名乗らず、エルザという名前のみを名乗っていた。だが、魔術師団の契約書には本名を書いていたのだ。


 (信頼出来る人には名乗っていいって言われていたよね。

 だから、この人たちは大丈夫だと気を許してしまったのだ。

 まさか、それがいけなかったのだろうか)


 青ざめる私の隣で、スタンが頷いている。


「僕はエルザの姓に一瞬目を疑ったけど、気にしないことにしてた」


 どういうことだろう。私たちの姓が、どうしてスタンやダミアンを驚かせるものなのだろう。そしてそれは、嫌な予感しかしないのだ。


 (スタンに嫌われたらどうしよう)


「あ……あのッ!! 」


 私は必死で言い訳をしていた。


「私たち、小さい頃に両親と離れ離れになってしまって!!

 それだから、あまり両親のことを知らないというか……」


 それでも微かに覚えている。お父さんはいつも窓際で本を読んでいて、お母さんは泣いている私をぎゅっと抱きしめてくれたっけ。

 私たちの使う魔法は、お父さんお母さんが教えてくれたものだとか、それを見よう見まねでマネたものだとか。


 両親を思うと、胸がぎゅっと締め付けられるのだった。


いつも読んでくださって、ありがとうございます!

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