やる気のない非常勤魔術師団員
こうして、非常勤の魔術師団員ということを忘れそうになった時、とうとう魔石が赤く輝いた。神々しく輝く魔石を握りしめ、魔術師団へと走る。
非常勤の魔術師団員は、私以外にもたくさんいるらしい。その多くが一般人で、女性だっている。そして、その女性の多くがダミアン目当てなのだろうとすぐに分かった。非常勤の魔術師団員は採用試験がない。そのため、どんな目的の者も加わることが出来るのだ。
ただし、保証人は必ず立てること。団員が不正を働いたら保証人が罰せられることを後から知った。もちろん私は不正などするはずもないが、保証人をスタンにしてしまったことを酷く後悔していた。
(スタンに迷惑をかけられないから、全力で頑張るしかないよね)
魔術師団の入り口で、赤く輝く魔石を見せる。その魔石が本物かチェックをされ、大きな建物の中へ招かれた。そこでダークレッドのローブをもらって羽織ってみる。鏡に映った私は、立派な魔術師だった。
私は身が引き締まる思いだったが、非常勤団員の多くは祭りか何かだと勘違いしているらしい。部屋の隅にいる絵師に、ローブを着た似顔絵を描いてもらったり、赤いうちわを振っていたり、ダミアンの話に花を咲かせたり……目的意識が違いすぎた。
(あぁ……これなら、スタンの意見を押し切って、正規の魔術師団員になれば良かったわ)
深く後悔した。
もちろんここにダミアンが現れるわけでもない。そして、カフェもといファンショップの店員として顔を知られている私は、いろんな女性に話しかけられることになる。
「あっ!店員さんも魔導師団に入ったんだ!! 」
「グッズでお世話になってまぁーすッ!! 」
テンションの高い魔術師たち……いや、ダミアンのファンに囲まれて逃げたくとなる。
(私、彼らと繋がっちゃったからね!
悟られないように、細心の注意を払わなきゃ!! )
そんな私、いつも通り茶虫のうちわを持っている。それをすかさず見つけられ、
「嫌だぁ!店員さんって茶虫のファンなの!? 」
なんて笑われる。だから私はヤケクソになって、茶虫を推した。
「みんな、茶虫の凄さを知らないなんて、もったいないよ!?
茶虫はだらしないし、能天気だけど、ちゃんと強いらしいんだから!! 」
すると、皆は面白そうに笑う。そして、冗談キツいと言い始めるのだ。
だが、うっかりしていたこともあった。
「そういえばさっき、スタニスラス様を見たんだけど……」
その名前に飛び上がりそうになる。
そして彼女は、そのまま衝撃的な事実を告げたのだ。
「スタニスラス様が茶虫のうちわを持ってたのよ!? 」
「「「えぇぇぇえーーッ!!? 」」」
これには私も飛び上がった。そして、心臓が口から飛び出そうにもなる。
(まずい。アリスさんが、スタンに茶虫うちわを売りつけたんだ。
そして、スタンは本当にそれを持ち歩いていたんだ……)
いつものスタンのように、私がずどーーんと落ち込んだ。これでスタニスラス様も変人扱いだ。
……と思いきや、翌日には茶虫うちわが飛ぶように売れたのは、また別の話だ。
そうこうしているうちに、進軍の鐘が鳴る。遠くのほうで、人々の悲鳴が聞こえた。どうやら、いつも通りの進軍が始まったのだろう。
だが、私の周りにいるのはやる気のない非常勤の魔術師たちだ。私たちが大通りを歩く頃には見送りの人も散り散りになっており、残った知り合いたちが手を振るのみだった。
カフェの近くを通ると、いつもの人混みは嘘のようになくなっている。ただ、残ってくれたアリスさんだけが手を振ってくれた。私はアリスさんに手を振り返し、前の団員に続いた。
街の外れには大きな魔法陣が描かれており、神官たちが呪文を唱えている。そしてその魔法陣に人々が乗ると、すっと姿が消えていくのだ。
魔法使いの私には、神官の使用する魔法は目新しいものだった。そして、それは私の魔法なんかよりも、ずっとずっとすごいものに思えてくる。
騎士だって然りだ。私はスタンの戦っているところはほとんど見たことがないが、噂によるとすごく強いのだろう。あんなへなちょこなのに、強いのだ。
スタンを思うと笑みが溢れた。
(その勇姿をしっかり見届けるとともに、騎士たちをしっかり支援しよう)
やる気のない集団に囲まれながらも、そう決意するのであった。
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