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ただの魔法使いですが、推しのアイドル騎士様に執着されています。  作者: 湊一桜
第二章

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やる気のない非常勤魔術師団員

 こうして、非常勤の魔術師団員ということを忘れそうになった時、とうとう魔石が赤く輝いた。神々しく輝く魔石を握りしめ、魔術師団へと走る。


 非常勤の魔術師団員は、私以外にもたくさんいるらしい。その多くが一般人で、女性だっている。そして、その女性の多くがダミアン目当てなのだろうとすぐに分かった。非常勤の魔術師団員は採用試験がない。そのため、どんな目的の者も加わることが出来るのだ。

 ただし、保証人は必ず立てること。団員が不正を働いたら保証人が罰せられることを後から知った。もちろん私は不正などするはずもないが、保証人をスタンにしてしまったことを酷く後悔していた。


 (スタンに迷惑をかけられないから、全力で頑張るしかないよね)






 魔術師団の入り口で、赤く輝く魔石を見せる。その魔石が本物かチェックをされ、大きな建物の中へ招かれた。そこでダークレッドのローブをもらって羽織ってみる。鏡に映った私は、立派な魔術師だった。


 私は身が引き締まる思いだったが、非常勤団員の多くは祭りか何かだと勘違いしているらしい。部屋の隅にいる絵師に、ローブを着た似顔絵を描いてもらったり、赤いうちわを振っていたり、ダミアンの話に花を咲かせたり……目的意識が違いすぎた。


 (あぁ……これなら、スタンの意見を押し切って、正規の魔術師団員になれば良かったわ)


 深く後悔した。




 もちろんここにダミアンが現れるわけでもない。そして、カフェもといファンショップの店員として顔を知られている私は、いろんな女性に話しかけられることになる。


「あっ!店員さんも魔導師団に入ったんだ!! 」


「グッズでお世話になってまぁーすッ!! 」


 テンションの高い魔術師たち……いや、ダミアンのファンに囲まれて逃げたくとなる。


 (私、彼らと繋がっちゃったからね!

 悟られないように、細心の注意を払わなきゃ!! )


 そんな私、いつも通り茶虫のうちわを持っている。それをすかさず見つけられ、


「嫌だぁ!店員さんって茶虫のファンなの!? 」


なんて笑われる。だから私はヤケクソになって、茶虫を推した。


「みんな、茶虫の凄さを知らないなんて、もったいないよ!?

 茶虫はだらしないし、能天気だけど、ちゃんと強いらしいんだから!! 」


 すると、皆は面白そうに笑う。そして、冗談キツいと言い始めるのだ。

 だが、うっかりしていたこともあった。


「そういえばさっき、スタニスラス様を見たんだけど……」


 その名前に飛び上がりそうになる。

 そして彼女は、そのまま衝撃的な事実を告げたのだ。


「スタニスラス様が茶虫のうちわを持ってたのよ!? 」


「「「えぇぇぇえーーッ!!? 」」」


 これには私も飛び上がった。そして、心臓が口から飛び出そうにもなる。


 (まずい。アリスさんが、スタンに茶虫うちわを売りつけたんだ。

 そして、スタンは本当にそれを持ち歩いていたんだ……)


 いつものスタンのように、私がずどーーんと落ち込んだ。これでスタニスラス様も変人扱いだ。

 ……と思いきや、翌日には茶虫うちわが飛ぶように売れたのは、また別の話だ。




 

 そうこうしているうちに、進軍の鐘が鳴る。遠くのほうで、人々の悲鳴が聞こえた。どうやら、いつも通りの進軍が始まったのだろう。


 だが、私の周りにいるのはやる気のない非常勤の魔術師たちだ。私たちが大通りを歩く頃には見送りの人も散り散りになっており、残った知り合いたちが手を振るのみだった。


 カフェの近くを通ると、いつもの人混みは嘘のようになくなっている。ただ、残ってくれたアリスさんだけが手を振ってくれた。私はアリスさんに手を振り返し、前の団員に続いた。

 街の外れには大きな魔法陣が描かれており、神官たちが呪文を唱えている。そしてその魔法陣に人々が乗ると、すっと姿が消えていくのだ。


 魔法使いの私には、神官の使用する魔法は目新しいものだった。そして、それは私の魔法なんかよりも、ずっとずっとすごいものに思えてくる。


 騎士だって然りだ。私はスタンの戦っているところはほとんど見たことがないが、噂によるとすごく強いのだろう。あんなへなちょこなのに、強いのだ。


 スタンを思うと笑みが溢れた。


 (その勇姿をしっかり見届けるとともに、騎士たちをしっかり支援しよう)


 やる気のない集団に囲まれながらも、そう決意するのであった。


いつも読んでくださって、ありがとうございます!

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