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ただの魔法使いですが、推しのアイドル騎士様に執着されています。  作者: 湊一桜
第一章

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12/31

推しの笑顔は最高だ

「わぁ、すごい!!

 お花畑、綺麗だね!」


 私は一面に広がる白い花畑を見て、声を上げていた。

 この都会に、こんな場所があるだなんて。そして誰もいないということは、誰も知らない場所なのかもしれない。


「エルザなら喜んでくれると思った」


 スタンはしゃがみ込み、白い花をぽきっと折る。そしてそれを器用に編み込み始めた。そんないつも通りのスタンにほっとする。


 スタンは下を見て花を編みながら、消え入りそうな声で告げる。


「ごめん……声が震えちゃって。

 なんだか、エルザを見ることも出来なくって……」


「うん……」


 私は、小さく身を震わすスタンの横にしゃがみ込む。そして、次第に長くなっていくその花を見ていた。


「言わないといけないと思ってても、怖くて言えなかった。

 エルザはきっと幻滅するだろうし、僕から離れていくだろうと思って……」


 私は抵抗するように、首を横に振る。


「本当の僕は、かっこよくもなんともない。

 弱くって、臆病で……」


「そんなことないよ」


 下を向いてもじもじ花を編んでいるスタンに、抱きつきたい衝動に駆られる。

 不安を感じていたのは私だけではなく、スタンだって同じだったのだ。


「あの時は、助けてくれてありがとう。

 スタン、すっごくかっこよかったよ」


「えっ……」


 上げられた茶色の瞳から、目が離せなくなる。微かに青みがかった、綺麗な茶色い瞳から。そして、その健康的な肌色の頬は、微かに赤みを帯びている。


「でも私、ありのままのスタンが好きなの。

 優しくって、おっちょこちょいで、わざと雷に撃たれたりして……」


「ありのままの僕が、好き……なの? 」


 スタンに聞かれると、我ながら何てことを言ったのかと恥ずかしくなる。

 好き、だ。私の好きは、スタンの好きとは違うかもしれない。だけど、それでいい。こうやって友達として隣にいられるだけで、私は幸せだ。推しだからではなく、スタンという一人の人物と共にいたい。


「そっか。ありがとう、エルザ」


 眩しいほどの笑顔で、スタンは私を見た。その顔からは、さっきまでの弱々しくて暗い表情が消える。

 憑き物が取れたように、すーっと。


「改めて自己紹介するね。

 僕の名前は、スタニスラス・シュヴァリエ。首都ニーズの騎士団長。

 好きな食べ物はエルザの作ったオムライスで、趣味はエルザと街を歩くこと」


「私ばっかりじゃん」


 思わず吹き出す私と、幸せそうに笑うスタン。彼は編み上がった花冠を、そっと私の頭に乗せる。


「だって、僕もエルザが好きなんだもん」


 その好きは、私の好きとは違っている。だけど、それでいい。こうして彼が隣にいてくれるだけで、私は幸せだ。






 頬を染めながらスタンを見ていると、突っ込まずにはいられなかった。ずっと気になっていたことを、私はとうとう聞いてしまう。

 

「スタン……騎士団長のスタンとは、全然違うよね? 」


「あー……絶対突っ込まれると思ってた」


 先ほどまでの甘い表情は消え、スタンはすでにいつも通りのスタンに戻っている。その様子に安心する。


 (だって、あんなに甘い瞳で見られると、勘違いしそうになってしまうよ)


 スタンはいたずらそうに笑いながら教えてくれた。


「僕は遠方の出身だから、ここではあの髪色肌色が珍しいらしくって。

 目立つから悩んでいたら、神官のロランが魔法のピアスを作ってくれたんだよ」


「ロランって……」


 スリースターズのロランだよね? なんて言いそうになる私を、スタンはわざとらしく遮った。


「ほら!」


 スタンはその左耳のピアスの飾りを、すっと引き抜いた。すると、スタンの周りに青いもやが現れる。ぐるぐる渦巻くようなもやに囲まれながら、その姿が変化する。

 髪は白銀に輝き、先に微かな青色が灯る。健康的な肌色は、すっと色素が抜けたような薄い色へと変わる。そして茶色の瞳は深い青色へと変化する。

 一瞬にして現れたのは、他でもないスタニスラスだった。その美しさに失神してしまいそうだ。


 彼は決して公の場では見せない笑顔を浮かべる。まるで太陽のように、優しくて眩しい笑顔だ。その笑顔に、胸のときめきが止まらない。


「エルザ、ありがとう。僕と仲良くしてくれて」


 推しに言われると、ぶっ倒れてしまいそう。いや、少なくとももうすぐ鼻血は出るはずだ。


「これからも、ずっと一緒にいてね」


 白い花畑の中にいる、光り輝くようなスタン。これは幻だろうか。いや、幻のはずがない。スタンと一緒にいるということは、この姿にも慣れないといけない。


 (そ……そんなの無理だ……)


 アイドルオタクとしては、頭を抱えて叫びたい気持ちでいっぱいだった。


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