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第二十話 9階層の実態

「ま、マジかよ……」


 9階層にたどり着いた瞬間、俺はその光景に圧倒されていた。

 いや、8階層と変わらずに骸骨だらけなのは間違いない。骸骨だらけも骸骨だらけ。ただ、問題はそこじゃない。目の前に見えている骸骨、全てがただの骸骨(スケルトン)じゃないってところだ。


「……一匹も下位種がいませんね……」


 モモカさんも同じことに気づいて、そう低くつぶやいているのが聞こえる。

 一昨日、初めてここに来た時には大体半分ぐらいが普通の骸骨(スケルトン)だったはずなんだよ。それが、たったの二日で全て上位種に……。


「下位種の骸骨(スケルトン)と上位種との戦力差ってどのぐらいでしたっけ?」


「えーっと、最低レベルでも約5倍ですね」


 モモカさんも絶句しながらそうつぶやく。

 あっ、こっちに気づかれた。ヤバい。


「と、とりあえず引き返しましょう……」


 俺はみんなに向かってそう言うと、みんなすぐにうなずいてくれる。と、とりあえず戻って作戦会議だ。



「さて、あれはどう戦いましょうか?」


 実際、さっきの数倍の実力のある魔物がうじゃうじゃいるところで戦わなければいけないという事実に俺たちは震えている。

 勝てんの?あれ。


「一部屋一部屋の大きさが問題なんですよね……」


 そう。8階層がなんとかなったのは、ベヒーモスがすべての壁を既に壊してくれていたというのが大きい。全ての壁がなく、守護者(ガーディアン)の範囲外の部分が部屋の中でも広く確保できたこと、さらに『大剣化』の能力が使いやすかったこと。この2点がある程度簡単にクリアできた理由だ。

 しかし、9階層はそうはいかない。

 ギルドで仕入れた9階層の一年以上前のマップを確認してみると、その部屋の数は大小8個。一番狭い部屋なんかは、モモカさんが入ってしまうとすべてが守護者(ガーディアン)の範囲内になってしまうほどの大きさだ。

 そんな大きさでは当然『大剣化』を使用して戦うことは不可能。そうなると、一体一体相手にしなければいけないということになる。

 相手にできないわけではない。実際、骸骨兵士(スケルトンソルジャー)は普通に『狂化』を使えば倒せるし、モモカさんなしでも魔物部屋(モンスタールーム)も突破出来たわけで、ただ倒すだけなら問題はないだろう。


 問題は骸骨兵士(スケルトンソルジャー)よりも強い種類がどれだけいるかだ。

 骸骨騎士(スケルトンナイト)に骸骨魔術師(スケルトンマジシャン)に骸骨僧侶(スケルトンプリースト)ぐらいならまだいい。正直、骸骨軍曹《スケルトンサージェント》が大勢いたら……。


「最大の問題は、骸骨司令官(スケルトンコマンダー)がいるかどうかです。それがいた場合それぞれの骸骨(スケルトン)は知能をもつことになります。そうなっていた場合、人の軍隊とそう変わりはありません」


 モモカさんが恐ろしいことを言う。


「でも……やるしかないですよね?とりあえず、入った一部屋目は広い場所ですから、私の『大剣化』を使って倒すのがいいんじゃないですか?」


 うーん……とりあえず一回それでやってみるか……。


 俺たちはまず一度目の作戦を実行するため上の階に進む。さっき使った雰囲気で考えると、正直一部屋目で『大剣化』を使える場所は終わりのはず。ここである程度うまくいく見通しが立てば、あとはこの部屋に引き付けて……ということが可能だ。まぁ、骸骨司令官(スケルトンコマンダー)がいなかったらなんだけどね。そいつがいた場合はこの部屋に引き付けるということがおそらくできなくなる。そうなったら、こつこつ倒していくしか戦う方法が今のところ思いつかない。


「よし!ユイ!やれ!」


 俺の声に反応するようにユイが『大剣化』を使う。それによって打ち払われる骸骨の群れ。その姿はさっきと変わらない。

 うん。効いてる効いてる。大丈夫そうだな。

 とりあえず、一部屋目の骸骨(スケルトン)たちは一掃できた。うまくいきそうじゃん。


 ……ただ、待てど暮らせど他の部屋から骸骨(スケルトン)の軍勢が押し寄せてくる気配がない。普通、仲間がやられたと気づいたらすぐにやってくるのが骸骨(スケルトン)の習性なのに……。


「これは、おそらくいますね。骸骨司令官(スケルトンコマンダー)」


 モモカさんがそう言う。

 まぁ、そういうことだよね。


「普通は、一部屋分の自分たちの仲間を倒せるような強さを持った敵なら、すぐに次の部屋にやってくるはずです。それなのに、私たちはすぐに動き出していない。ということは、何か理由があるはず。そこまで読んでいると思いますよ。このまま、私たちが次の部屋に進まないとずっとこのまま膠着状態が続きます」


 そう、モモカさんが相手側の司令官の思考まで読んで俺たちに話してくる。

 こっちの司令官(モモカさん)も相当考えている方だと思うけど、相手は魔物なのに同じぐらい考えてるのかよ……。

 どうすりゃいいんだ……。


「うーん。次の部屋の広さってどのぐらいでしたっけ?」


 ユイが不意にそう聞いてくる。


「今はどの程度になっているかは分かりませんが、この部屋の半分ぐらいですね。この部屋はギルドにあったマップの広さと変わらないので、ほぼ正確だと思いますよ」


「なるほどー。じゃあ、『大剣化』の剣のサイズを半分以下にできればそっちの部屋でも使えるってことですよね。私がすぐに訓練してできるようにしてみせますよ!」


 ユイはやる気満々みたいだけど、それは……。


「よし!『大剣化』」


 そう言ってできる剣のサイズはさっきと変わらない。


「うーん。全然小さくならないなぁ。力を抑えようと思ってやってるんだけどな……」


 そう言いながら、ユイは何度か試してみているけど、全く小さくならない。


「……ユイ。頑張ってくれてるところ申し訳ないけど、そのままやってたらどのぐらいかかるか分からないよ……」


 俺は申し訳なさそうにそう言う。


「えー。けど、私がこれをできるようになれば簡単なわけでしょう?さっき、コウヘイさんも言ってたじゃないですか。そのうちできるようになるって」


 いや、確かにそう言ったけど、それはユイがショウに負けたくなさそうだったから……。

 そもそも、ショウだって俺が魔力の補給をしてやってたからその方法はまだマスターしてないわけで……。

 ん?ショウ?俺が魔力の補給……?


「あ!いける!いけるかもしれないぞ!」


 一つ、戦う方法を思いついた。この方法を使えば、次の部屋のサイズぐらいなら剣を小さくできるかもしれない……。


「え?なんですか?」


「『大剣化』は、ユイの攻撃力とか腕力によって剣の大きさが決まってるんだろ。ってことは、ユイのそのパラメータを下げることができれば……」


「いや、分かってますよ。だから、そうしようと思って試してみてもうまくいかないんじゃないですか。そもそも、攻撃力とか腕力なんか自分でいじれるわけ……あっ!」


 ユイが途中まで自分で言った段階で、俺の言いたいことを察したらしい。


「あぁ、そうか。そうですよね。どうしてこんな簡単なことに気が付かなかったんだろう……」


 モモカさんも悔しそうにそうつぶやく。


「そう。ユイが腕力を下げられないなら、別の人が下げればいいんだよ。誰がって、俺が」


 なんで自分の能力のことを忘れてたんだ。今のパーティーになってから、どちらかというとそれぞれのパラメータの補強につながると思ってしかスキルを使ってなかったから忘れてたよ。そもそも、俺が前のパーティーをクビになった理由は足を引っ張るから。それは俺のパラメータが他の人よりも低いせいで他の人のパラメータを下げることになってしまうからだった。そう。俺の『平均化』は人のパラメータを下げるスキルでもあったんだ。


「じゃあ、一旦この部屋で試してみるか……」


 と、その場で実験を行ったところ、見事成功。予想通りの剣のサイズになってくれてる。

 これなら、次の部屋でも『大剣化』が使えるぞ。


 そのまま、次の部屋部屋に向かい、威力を調整した『大剣化』で敵を打ち払っていく。

 一撃一撃の威力が落ちているから、さっきよりも少し時間がかかってしまうけれど、特に問題はない。

 敵のいない部屋が2部屋になったら、こちらの戦略も立てやすくなる。

 それこそ、一部屋にモモカさんを留めておいて、そのまま俺たちで攻めて行くことも全然余裕だ。

 そうなれば、俺たちは全くダメージを受けずにそのまま前へ進めることになる。

 もう、ここまで来ると負けることが想像出来ないレベルになってくるよな。

 ただ、敵には司令官と将軍が控えているわけで……。

 このまま一筋縄で行くとも思えない……。

 さて?敵の中ボスと大ボスはどこにいる……?




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