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第十九話 殲滅、骸骨の群れ

「さて、試してみようか!」


「はーい!行きますよー!」


 コウヘイさんがそう叫ぶのを聞こえる。それと同時に私は能力を発動する。

 今回は『狂化』じゃないんだよね。もう一つの能力、『大剣化』。

 モモカさんの作戦は単純明快。私たちのもつ唯一の範囲攻撃系能力とでも言えるものを試してみないかっていうことだった。

 それは、私の『大剣化』だ。考えてみたらそうだよなーって。あれを範囲攻撃系の能力って考えてなかったけど、仲間にも被害が及ぶ可能性もあるし、確かに範囲攻撃だよね。

 それと、今回能力を発動させるのはモモカさんのスキルの範囲内なんだよね。それと、『平均化』の使用もなし。

 実際、私の『大剣化』でどれだけの被害を2人に与えるかが分からない。だから、防御力を3人に分けるのは危ないってことになった。

 言われてみればそうかもね。だから、私たちにできる最大の防御を整えたうえで発動するってことになった。


 私が『大剣化』を発動すると、刀身だけがものすごい長さになる。あのときよりも明らかに長いよな……。15mぐらいあるかも。そのまま、私は剣を勢いに任せて振りぬく。それだけで面白いように骸骨(スケルトン)が切り刻まれていく。ただ、やっぱり剣をふりぬくと重たい。剣を落としそうになる。だけど、頑張れば大丈夫だ。

 モモカさんが、『大剣化』の長さは攻撃力によって変化するというより腕力によって変化するんだろうって言ってた。

 どんなスキルも基本的におかしな使い方をするってことさえなければ、自分自身が危険な目に合うことはないようになってる。だから、力を込めればどんなに大変でも剣を手から落とすことはないはずなんだって。

 いや、正直それを聞いてるから頑張ろうって思うけど、本当だったら手からすっぽ抜けてもおかしくない重さだよ。本当に。


 私は何とか手から落とさずに耐えきると、そのまま、なんとか剣の勢いを止めた。


「はぁはぁはぁ」


 私は、一回使っただけで結構疲れてるのを実感する。それで、結果は……。


 目の前に見えるのは、骸骨(スケルトン)の残骸、残骸また残骸。

 とりあえず、見える範囲の骸骨(スケルトン)は守護者(ガーディアン)の範囲内にいるやつら以外は全て死んでるように見える。


「やったー!成功だ」


 そう思ったんだけど、今の奴のせいで完全に骸骨(スケルトン)の残りが敵は私だと判断したみたいで、全部が私に集まってくる。

 あー気持ち悪いなー。


「とりあえず、このまま、守護者(ガーディアン)の範囲外に出て、いつもみたいにやろう!だいぶ数も減ったしこれならなんとかなりそうだ」


 そのコウヘイさんの言葉を聞いて私はすぐにその場から駆け出す。

 私が走れば、骸骨(スケルトン)も私についてくるから、自然にモモカさんの周りに敵はいなくなる。これなら、全員に攻撃することもできそう。


「あー、コウヘイさん来ないで!中にいていいよ!」


「え……?あ、あぁ……」


 コウヘイさんは、全ての敵が私に引き付けられているのを見て、私が考えたことに気が付いたのか、うなずく。

 私は、全ての骸骨(スケルトン)が守護者(ガーディアン)の範囲の外に出たことを確認すると、向こうが攻撃を仕掛けてくる前にそのまま『大剣化』を発動。もう一度骸骨(スケルトン)たちに向けて剣をふるう。

 結果はさっきと同じ。そのまま切り払われていく骸骨(スケルトン)の群れ。もうこの階層で生き残ってるのはほとんどいないんじゃない?


「いや……本当にすごかったな……」


 コウヘイさんが残ってる骸骨(スケルトン)を倒すために私の近くに寄ってきながらそう言う。実際わたしもびっくりだよね。『大剣化』がこんな風に使えるなんて思ってなかったからさ。最初に使ったときは、何も分かってなかったんだな。全然封印する必要がなかった能力だったんじゃん。


「実際、これで攻撃のパターンは増えたと思う。9階層の骸骨(スケルトン)の軍勢にどれだけ通用するかは分からないけどさ……」


 コウヘイさんがそう言ってるけど、確かにそうだ。今までの私たちは結局『狂化』と『平均化』での攻撃しか知らなかったからさ。それに比べたら相当な進化だ。


「でも、ユイさんしか攻撃に参加できないですし、私のスキルの範囲内の敵は倒れませんし、狭い範囲では使えないですし……この階層みたいな大部屋じゃないと少し厳しいかもしれません」


 あぁ、それも確かにそうか。さすがモモカさんは色々考えてるな。

 剣が大きくなりすぎるせいで、7階層の魔物部屋(モンスタールーム)ぐらいのサイズで使えたかどうかは微妙なところだと思う。


「どうなんでしょうね。この『大剣化』私の調整の仕方で少し短くもできるんですかね」


 大抵の技、能力は基本的には何も調整しないでいると限界まで力を出してしまう。だけど、訓練すれば調整もできるようになる。それこそ、勇者ショウはその限界まで引き出した技を連発したせいで魔力切れを起こした。だけど、時間をかければ調整できるようになって、そんな心配なくなるだろうってコウヘイさんが言ってた。


「うーん。どうだろうな。やるにしても、相当な訓練が必要だからな……」


 コウヘイさんは考えながらそう言ってる。


「え?けど、コウヘイさんの前のパーティーの勇者は少しすれば使いこなせるようになるだろうって言ってたじゃないですか」


「あぁ、あいつはあれでも勇者だからな。戦闘の勘は抜群だったんだよ。そのあいつなら、一月もかからないだろうけど……」


「そんな、勇者ができるなら私だってできますよ!私は戦闘用のユニークスキル持ちですよ!勇者よりすごいんです!」


 コウヘイさんは、勇者のことは評価してるのに、私のことは評価してくれてないみたいだ。そんなの、ありえないよ。勇者にできるなら、私にだってできると思ってもらいたいところだ。


「あ、あぁ……そうだよな。あいつができるってことはユイにもできるはずだよな。ごめん。俺はまだショウとパーティーを組んでた時のことを忘れられてないみたいだな。俺の今の仲間はユイとモモカさんなんだし、2人の力は信頼しないといけないよな」


 そう言ってコウヘイさんが少し、しゅんとしている。私が怒りすぎたみたいになっちゃった。


「あー、別にそんな私のことを信頼してないって思ったわけじゃないから大丈夫ですよ……。そんなに反省されるとこっちが申し訳なくなります……」


「……あのー。お二人ともお話し中のところ申し訳ないのですが、もうこの階層の骸骨(スケルトン)の群れは全員討伐できたみたいですよ?」


 私とコウヘイさんが2人で反省していると、モモカさんが守護者(ガーディアン)を解いて近づいてきた。確かに、何も考えずに剣をふってたけど、いつの間にか手ごたえがなくなってた。話をしている間に全員倒しちゃったみたい。

 完全にうまくいったね。本当にモモカさんの作戦に感謝だ。


「いやーよかった。これで、先に進めるな……」


 コウヘイさんが思わずため息をつく。

 いや、頑張ったのは私なんだけどね。というか、コウヘイさん、この作戦で何かしたっけ……?


「ユイ。俺がこの階層の作戦ではほとんど何もしてないって思ってるだろ。今」


「え?やだなぁ。そんなこと思ってませんよ。やだなぁ……」


 な。なんでバレたんだ!


「俺が一番それを気にしてるんだよ!俺が2人のスキルの力を活かして作り上げたパーティーのはずなんだけど、ここでは完全に俺がいなくても大丈夫だったなって」


 コウヘイさんがそんな風に嘆いている。

 えー。別にそんなことあんまり気にしてなかったけどなぁ。


「女の子二人に守られるだけの男ってのはなかなか格好悪いんだよな……次の階層ではしっかり俺が『調整』して勝ってみせるぞ!」


 なんか、気合いの入り方が普通の理由とは少し違う気もするけど、コウヘイさんはやる気を出してくれたならよかった……のかな?


「さて、じゃあ、とりあえず9階層に向かいましょうか。実際、まずは上を歩いてみて、どの程度の敵の規模で、どの程度の上位種がいるのかを確認してみないことには作戦も立てることができません」


 私とコウヘイさんはそのモモカさんの言葉にうなずく。ここまではまだ前座みたいなものだったんだよな……。ここからの9階層からが本番。

 いや、前座の時点で、もう見たくないってぐらい骸骨(スケルトン)の残骸を見ることになって、もう嫌なんだけど、しょうがない。

 それじゃあ、9階層に行こう!


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