04.ジーン
リリィによる傷の手当てを終えた私とジーンであったが、成り行きとはいえパーティを組んだのだ。共に街へ戻り、集会所へと足を運ぶ。そこで簡単な自己紹介をした。
「ジーンだ。見ての通りアタッカーだ。つい先日ゲームを始めたばかりで、ちまちま敵を倒すのがめんどくさくなってよ。ついついブラッディベアを叩いちまったってわけだ」
リリィが深いため息をついた。「馬鹿なの? ねえ馬鹿なの?」と呟いていたが、がっつり聞こえてますよ。
しかし、お互い良い勉強になったであろう。ソロで大物を倒すのは困難だ。
「私はカノン、そして彼女はリリィ。奇遇だね、私は今日始めたばかりなんだ。それにしてもリリィがいて本当によかった。さっきは危なかった」
「ほんとよ。カノン君がいなかったら私もあなたに手助けしなかったし、今後気を付けてよね」
むすっとリリィは膨れるが美少女がふくれっ面をしても迫力がなく、ただただ可愛らしいだけである。
とはいえ流石に悪かったなあと思い私はリリィの髪を撫でた。
「私こそごめん。もうしないよ」
リリィは目を丸くし、頬を赤らめた。
「カノン君は……ずるい」
「えっ?」
なんのこっちゃ。見た目は男だが中身はれっきとした女だ。
「なんで照れるの。中身なんてたかが知れているだろ」
「だけど反則! それにカノン君リアルでも人気あるんだよ。この前女の子たちきゃあきゃあいっていたもの」
「はあ……」
同性から好かれても(しかも恋愛的に)これっぽっちもうれしくないよ。友好的なのは結構だが、過剰な好意はノーサンキュー。バレンタインの時、クラスの女子に友チョコと称した本命っぽいのをいくつか頂いたので今後貰うのは控えようかな、と思っていたところだ。
「おう、目の前でいちゃつくんじゃねえぞリア充。これ以上いちゃつくんならよそでやってくれ。あーどこもかしこもお花畑繰り広げやがって……何のためにゲームしてると思うんだよ大人しくゲームさせてくれよ」
ジーンが私たちのやりとりにうんざりしている。うん、ごめん。内輪の話なぞ聞きたくなかったろうに。そして何やら現実でうまくいってないようだった。ご愁傷さまである。
「ええと……いろいろと誤解をしているようだけど、まず私とリリィはただの友達だから。何があったか知らないけど……いつか良い出会いがあるのでは」
「出会い厨じゃねーし! ったく、あんた勝手に変な想像膨らませてねえか」
はて、出会い厨とはなんだろう。聞き慣れない言葉だ。後でリリィに聞いてみよう。
「ここで会ったのも何かの縁ですし、フレンド申請してもいいですか? ちょうど始めた時期も同じくらいだし……私は初心者で少しでも効率の良いレベル上げがしたい。役割も被ってないしどうだろう」
「あ、いいね。私も手が空いたら手伝うよー」
私の提案にリリィは快く乗ってくれた。ジーンは面食らって言葉が出ない、といったふうだった。
「勝手に話を進めやがってよぉ。まあ、いっか。俺のログイン時間はだいたい20時~0時ってところだ。その時間内に会えたら付合ってやるよ」
交渉成立だ。私はジーンに手を差し伸べた。
「ありがとうジーン。改めて、今後ともよろしく」
私は気恥ずかしくなりながらも、ジーンに微笑みかけた。
ジーンは照れ隠しなのか乱暴に差し出した手を掴み「おうよ」と素っ気なく返事をした。
リリィが私もフレンド申請! と叫ぶ。
私の初めてのフレンドは、ふわふわでとても大きな銀色の狼。
初日としては喜ばしい第一歩であった。




