表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
4/29

03.レベル上げは計画的に

 ものの数分でゴブリン十体の駆除は終わった。今は落としたアイテムを一つ一つ拾っているところである。


「この木の破片って何に使うだろ」


 ゴブリンの落とした木の破片をひょいとかざしてみた。なんの変哲もない木の破片とゴブリンが持っていた木で作られたこん棒を眺め私は首を傾げた。


「こん棒はともかく、木の破片は素材として使えるはずよ。それで盾を作りましょうか?」

「おお。助かる」


 なんと頼もしい。

「私、戦闘職がメインだから物作りはあまり得意ではないけれど……カノン君が装備できるような簡単なものならそれなりに作れると思う」

「そうなんだ」


 楽しみにしててね、と彼女は笑った。

 私は木の破片を彼女に預ける。依頼をこなしたところだし、ギルドに報告して報酬を受け取ろう……そう思っていた矢先だった。


「いってぇええ!!」


 男の悲鳴が聞こえた。振り返ってみると、大きな熊に追いかけられている大の大人の姿があった。


「レベル差がある相手を引っかけちゃったのね。あとで辻蘇生してあげようっと」

 しれっとリリィは傍観を宣言した。意外と淡白な反応。それでいいのか、熟練者。

 ちらりと熊のステータスを見る。レベルは15。私は先ほどの戦闘でレベルが3になったばかりである。かなり無謀だ。けれど……。


「リリィ、ごめん。援護して」

「ふぇ?」


 私は真っ直ぐ熊に向かって走る。男は息を切らしながら熊と対峙していた。


「どいて!」


 男の肩を押す。男は僅かによろめいたが、私の姿を認めると鋭い眼光をこちらへ向けた。

「はあ!? お前何だよ。こいつは俺の相手だ、邪魔するな!」

「残りのHPが少ないやつが何言ってるんだ! 私が引きつけるから何とかしろ!」


「何とかしろってお前……俺よりレベル低い奴に言われたかねえよ」


 熊そっちのけで繰り広げられる低レベルな言い争い。リリィが痺れを切らし、間に入ってきた。

「はいはーい! カノン君の介護は私がやるから、あなたはアタッカーらしくさっさと倒してちょうだい。パーティ申請するわよ」

「はぁあ?わけわかんねえ……」


 ぶつぶつと男は文句を言いつつもパーティ申請を受理した。案外素直な奴なのかもしれない。


『ジーン=キッドマン LV.5

 クラス 槍術士

 HP 120/680 MP120』


 彼の容貌をじっくり観察する余裕はなかったが、人狼とよばれる種族だということは一目でわかった。がっしりとした強靭で頑丈な体躯にピンと真っ直ぐに立った三角の耳。ふさふさと揺れる銀色の尻尾。私よりこいつのほうが盾に向いているのではないか? と思えるほど体格は良い。


「バリア展開。カノン君、熊を痛めつけてそこの狼男よりヘイトを稼ぐのよ!」

「……ヘイト」


 敵の敵対心、もとい意識のことだったか。要は注意を引きつけとけってことだ。

 

「了解」


 連撃、突き刺し。熊は小さく呻くが大してダメージは通っていない。これがレベル差か。やはり咄嗟とはいえ無茶なことをした。リリィには迷惑をかけたなあといまさらながら思う。


「ジーンにヒールします。カノン君ヒールヘイトに注意」


 リリィが回復魔法を唱える。そう、味方の回復行為は敵の意識がそちらへ向いてしまう危険性がある。つまり、リリィが攻撃を受けてしまうのだ。

 先ほど覚えたスキルを使おう。

 

「闘志! 私が相手だ」


 攻撃力を上げるスキルを発動。与えるダメージが多いほど、敵の意識はこちらに向く。


「そうら、乱れ突き! ヘイト管理頑張れよっと」


 男はにやりと不敵に笑う。こっちは必死に助けようとしているのにお気楽なものだ。毒づきたい気持ちは山々だが、獰猛な熊の腕がすぐ目の前にあった。


「――ッ」


 熊が私を薙ぎ払う。瞬時に受け身をとったがあっけなく吹き飛ばされた。疑似の感覚だが、痛い。私はよろよろと立ち上がった。


「カノン君にヒールします。ジーンは追撃を!」

 

 リリィが冷静に指示を出す。

 ジーンが槍を投げ、熊に圧し掛かった。熊のHPは半分。かなりシビアな戦いである。

 というかよく半分もHPを削れたものだ。この力の差を考えれば上々なのでは?

 だが、その瞬間。


「ぐっ……!」


 ジーンが噛みつかれた。私は血の気が失せ、さあっと青くなる。


「離せ! この馬鹿!」


 目一杯力を込めて、剣を振りおろした。生々しい、肉が絶たれる感覚がこの身を襲った。

 右腕が切り落とされた熊はジーンを手放し、もがき苦しみながらのた打ち回る。その隙にジーンの首根っこを掴み、私の方へと引き寄せた。


「無事か!?」

「ああ、すまねえ」


 肩で息をするジーンは弱々しく頷いた。安心するのはまだ早い。敵はまだ倒れてはいないのだ。


「リリィにヒールもらってこい! その間はなんとかする」


 そして再び剣を構える。正直、一人で耐えるのはつらい。

 ゲームとはいえとんだ無茶をしたものだ。


「諦めたらそこで終わるわよ! 食らいなさいっ。ルミナスよ!」

 リリィ、いやリリィ様が声高々に叫ぶ。あれだけ苦労して減らした熊のHPがあっというまにゼロになり、跡形もなく消えていった。呆気ない幕引きである。


「ええと、リリィ?」

「いい教訓になったじゃない。レベル上げは計画的に! なーんてね」


 そうだ、忘れていた。彼女のレベルは89だった。私たちの努力はいったい……。

 

『カノン=アンデルセン LV.8

 クラス 剣士

 HP 750 MP 320

 種族 ヒューム(男)』


『リリィ=ベル LV.89

 職業 プリースト

 HP 6600 MP 8920』

 種族 ハーフエルフ(女)


『ジーン=キッドマン LV.10

 クラス 槍術士

 HP 920 MP170

 種族 人狼(男)』

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ