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第四十四話 謎の女

安田と木島は女を倉庫へ連れ帰ることを決めた。

道中、安田は何度も女に事情を尋ねたが、

下を向いたまま答えなかった。


木島も無理に聞こうとせず、ただ隣を歩く。

そして時折、女が転びそうになる度に支える。

それを何度も繰り返し

三人が倉庫にたどり着いた時には既に日が落ちかけていた。


突然の客人に倉庫内はざわついた。

「その人誰?」

「スパイ…。じゃないだろうな。当然後で確認するが」

「木島の姉らしい。」


そんな声が飛び交う。


女はしばらく俯いていたが。

やがて小さく口を開いた。


「……木島依子です。」


安田が思い出したように口を開いた


「そうか。名前をまだ聞いてなかったんだ。

しかし、同じ組織内に木島が2人か…ややこしいな」


咄嗟に木島が口を開く

「じゃ…じゃあ俺のことは今後は翔ーーーーーー」

「よろしくな、依子さん。」


皆の不信感は

一瞬で笑いに変わった。


笑いの声が波のように引いた頃

依子の腹の虫が盛大に鳴った。


倉庫が静まる。


木島が言った。


「姉ちゃん。腹減ってる?」


依子は小さく頷いた。


その後。

依子は食べた。とにかく食べた。


とにかく食べた。

缶詰。パン。カップラーメン。出された物を次々と平らげる。

灯火のメンバー達は微笑みながら見守っていた。


安田が小声で呟く。

「おいおい、今日の収穫分、全部食う気かよ。」

佐伯教授が眼鏡を押し上げる。

「3日程絶食したような様子だ。好きなだけ食べれば良い。」

木島は少しだけ笑った。

「昔から大食いな所あったんですけどね。」

その直後。

依子は椅子から落ちた。

「姉ちゃん!?」


眠っていた。

文字通り気絶するように。





深夜の倉庫の一角。

その日も幹部会議が開かれていた。

テーブル代わりの木箱を囲み。

安田が腕を組んだ。


「それでだ、木島」


誰もが考えていることを口にする。


「彼女は何者なんだ。なるべく詳しく教えてくれ。」


木島も答えられない。十六管理街区で失踪してから

姉がどこで何をしていたのか。

なぜ今になって現れたのか。何一つ知らない。


その時だった。

会議室代わりの部屋の扉が開いた。


全員が振り向く。

そこにいたのは依子だった。


眠そうな目を擦りながら。

ふらふらと歩いてくる。


「起きたか。丁度いい。座ってくれ」

安田が言う。


依子は椅子を引いて腰掛け、周囲を見回した。

そして小さく呟いた。

「EARシステムについて、皆さんどこまで知っていますか」


「EARって、市民を兵士化するシステムだろう。」

すかさず榊が言う


その様子を見て、依子は小さくため息を吐いた

「やはり、そのくらいの認識ですよね。

わかりました。私の知っていること全てを話します」

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