第三十九話 ルール
特執局は第一管理街区の構造を一日にして変えた。
確認の為、数日間は街を巡回したが
やがて彼らは他の街へ移っていった。
その処理は、常に同じ速度で行われた。
彼らの行動は迅速で、迷いがない。
街の隅から隅。細かな「ノイズ」まで、短時間で消えていった。
記録上、そこに戦闘と呼べるような衝突は存在しない。それは、選別であり処理だったからだ。
街は変わっていった。
変化は劇的ではない。むしろ逆だ。
“日常の速度のまま”、異物だけが削り取られていく。
残る者と、残らなかった者。
その境界は徐々に理解されていった。
悪事を働く記憶保持者は無論消されたが、
再調整対象者を保護する者、およびその団体も同様に消された。
記憶保持者と長く接触すると、同期が外れやすくなる。
藤崎は身をもって知っていた。
だが見逃された記憶保持者達もいた。
山奥でひっそりと暮らす夫婦に出会った時。
藤崎は静かに伝えた。
「不用意に街へ近づくな。」
自給自足で生活し、ごく限られたコミュニティで暮らす彼らは処理対象外だった。
機能として、合理的な判断を下さなければならない藤崎に残ったほんの少しの「人間的」な部分だったのかもしれない。
やがて、評判が評判を呼び
特執局は他管理地区にも招集されるようになった。
第三地区。第七地区。第四地区
彼らの「整備」は続いていく。
ある日、第二地区の統治室で、藤崎は記録を見ていた。
数字は整っている。逸脱率は低下し、犯罪は消えた。
窓の外では、街が機械のように動いている。
以前より静かで、以前より正確で、以前より均一だった。
藤崎はそれを見て、何も思わなくなった。
地区が、街が整備されていく一方で
藤崎の心から少しずつ何かが失われていった。




