第三十二話 アマテラス
ある日。
藤崎は代表者室へ呼び出された。
部屋に入ると、高木が珍しく上機嫌だった。
「来たぞ」
机の上の端末を指差す。そこには一通の通知。
送信者。中央AIアマテラス。
「招集命令だ」
高木は笑った。
「とうとう後釜を決めるらしい」
「後釜?」
「No.2だよ」
高木は椅子にもたれた。
「第二地区はずっと空席だからな」
「各街区の代表者を集めて選定するんだと。お前も見学するか?」
そして、ニヤリと笑う。
「まぁ、俺が選ばれるだろ」
藤崎は呆れた顔をした。
高木は続ける。
「安心しろ、俺がNo.2になったら街を一つやる」
「十七街区でもいい、好きなの選べ」
「いらん」
即答だった。
翌日。二人は第一街区へ向かった。
藤崎は初めて見る街に言葉を失った。
煌びやかな街並み。綺麗な道路。高層ビル。
笑顔の人々。他の街とは別世界だった。
高木は終始不機嫌だった。
「気に入らねぇ、これが平等な社会かよ」
「結局特権階級がいる。笑えるよな」
街の中央。バベルタワー。
天を突くような巨大建造物。
何重もの認証。何重もの検査。警備ドローン。
その全てを抜けた先。巨大な空間があった。
藤崎は息を呑む。そこにあったのは。
太陽だった。いや。
直径数十メートル。の巨大な球体だった。
無数の光が表面を流れている。
空中に浮かぶ超巨大演算装置。
中央AIアマテラス。
やがて。空間全体に機械音声が響く。
『第二地区管理者選定試験を開始します』
代表者たちが緊張する。
高木も珍しく真剣な顔だった。
アマテラスは質問を続けた。
秩序とは何か。自由とは何か。幸福とは何か。
反乱分子をどう扱うか。人命と社会どちらを優先するか。
代表者達が答えていく。高木も答える。
だが、しばらくして。
アマテラスの光が強くなった。
空間全体が震える。
『再計算』
『再計算』
『候補者更新』
ざわめく代表者達。高木も眉をひそめる。
そして、アマテラスは結論を告げた。
『第二地区統治者』
『適合率99.987%』
静寂。
『藤崎悠人』
誰も言葉を失った。
高木も。藤崎自身も理解できなかった。
アマテラスは続ける。
『秩序維持能力』
『危機対応能力』
『自己犠牲精神』
『感情制御能力』
『統治者適性』
『全候補中最高値』
光が収束する。
職員が一台の端末を運んできた。
黒いスマートフォン。
裏面に刻印された数字。
【0】
存在しない、空席の番号。
No.0。
藤崎は長い沈黙の後。その端末を受け取った。
そして、初めて自分の適性職を見る。
【適性職】
【No.0 統治者】




