第十八話 衝突
雨がアスファルトを叩く。
回収班が一斉に踏み込んできた。
腰には拘束具。
手には警棒型のスタンガン。
「対象を確保しろ!」
高木が叫ぶ。
次の瞬間。
こちら側も動いた。
金属バットが振られる。
単管パイプが唸る。
ガキィンッ!!
鈍い衝突音。
「うおっ!?」
回収班の一人がよろめく。
が、勝機は無い
人数が違う。
相手側が15人ほどに対し、
こちらは、あい含めて7人
しかも相手は武装集団だ。
圧倒的に分が悪いが
榊はそれを既に見越していた。
「藤崎!」
振り向く。
榊は回収班の警棒を避けながら叫んだ。
「二手に分かれる!」
「何!?」
「全員で逃げても囲まれる!後で通信機で集合すればいい!」
スタンガンが振り下ろされる。
榊は身を捻ってかわし、そのまま相手の足を払った。
「目的はあいの保護だ!」
「なら――」
榊は保持者たちを見る。
「俺が引き受ける!」
数人の保持者が即座に頷いた。
安田も状況を理解する。
「藤崎!」
単管パイプを振り抜きながら叫ぶ。
「行くぞ!!」
俺は迷った。
榊たちだけを残していく。
そんなこと。
だが。
その時。
あいの震える手が俺の服を掴んだ。
俺は振り返る。
不安そうな顔。
状況は理解していない。
でも。
何かが起きていることだけは分かっている。
榊が叫ぶ。
「早く行け!!」
俺は決断した。
「あい!」
その手を掴む。
「走るぞ!」
「えっ?」
「いいから!」
安田も続く。
三人は路地へ飛び込んだ。
背後で怒号が響く。
金属音。
悲鳴。
雨音。
全部が混ざり合う。
振り返れなかった。
振り返ったら。
足が止まりそうだった。
俺たちは走る。
ただひたすら。
狭い裏路地を。壁沿いを。雨の街を。
そして。数分後。
ようやく人の気配が遠ざかった頃。
安田が息を切らしながら言う。
「……撒いたか」
俺も肩で息をする。
あいは状況が分からないまま、それでも必死についてきていた。
助かった。
そう思った。
だが。
「残念。惜しかった。98点って所だ。」
後ろから声がした。
全身の血が凍る。
ゆっくり振り返る。
路地の入口。
白い傘。白いレインコート。
そして。
見慣れた顔。
高木だった。
その後ろには回収班が四人。
高木は苦笑する。
「No.2の作戦は正しかったよ」
スマホを見せる。
画面には複数の赤い反応。
「だけどな。お前らやっぱ反応デカく出るから。すぐわかっちゃうんだな。これが。」
その笑顔は昔と変わらない。はずだが
今の俺には。
昔よりずっと遠い人間に見えた。




