第77話 強制開花 ― ルリカと紫苑、運命のペアリング
それを聞いたカンナは、静かに核心を突いた。
「薔薇宮 ルリカに勝てる?」
部屋が一瞬、静まり返った。
「どういうことですか?」
楓が問い返す。
カンナは淡々と、しかし確信を込めて告げた。
「私はあの二人をペアリングしたいの。
しかし、そのためには紫苑が交花――レズビアンセックスで、ルリカと対等以上の力を持っていなければならない。
まだ早いかもしれない。ルリカは強いわ」
玲奈が心配そうに呟く。
「ルリカは強いよ……」
咲良も、過去にルリカに襲われた経験を思い出し、怪訝な顔で言った。
「私の白百合の能力でも、防ぐので精いっぱいで……対抗するまでは抗えなかった」
カンナは頷き、続けた。
「ぶっつけ本番。チャンスは一回。
紫苑の魔法のキスが、どこまで薔薇の棘を追い込めるか……。
でも、私はこのペアリングを成立させたい。根拠があるの。
絶対的な適性の相性よ。けして人間の相性ではない。
あの傲慢で常に人を見下すルリカと、個人の相性が合う人間など稀だ。
だからこそ、必ず成功させたい」
ゆかりが不安げに口を挟んだ。
「危険です……。似たような方法で、雪乃お姉ちゃんと冴華さんにコントロールされて、
あかりちゃんとの同時絶頂を作為的に成功したことがあるけど……
精神を無理やり侵されることの不安は、よくわかります」
カンナは深く頭を下げ、楓と玲奈に頼み込んだ。
「ルリカは必ず素晴らしい守り人になる。
ここで道を正さなければ、ただの小守り人として終わってしまう。
それだけの才能がルリカにはある。
紫苑も一緒よ。花の適性は高いのに、感情をコントロールできないからペアの相手を見つけにくい。
だからこそ、このペアリングを成功させたいの」
玲奈が腹を決め、楓に視線を向けた。
「わかりました。楓、やってみよう。
もし負けてもまた挑戦すればいい。私たちの手元に置いておけば、
ルリカも私たちにケンカを売るほど馬鹿じゃないわ」
楓も柔らかく微笑み、頷いた。
「かわいい弟子のためにだね」
二人は顔を見合わせて、静かに笑顔を交わした。
カンナはゆっくりと頭を上げた。
生徒会室の窓の外では、遠い中東の戦火がもたらしたレイラインの黒い蔓が、
微かに学園の空を覆い始めていた。
紫苑の「魔法のキス」を強制的に引き出すための、
精神の底からのサルベージ。
暴走のリスクを伴う強引な訓練が、
今、始まろうとしていた。




