第33話:白藤の部屋 ― 優しき蔓とすみれの蕾
白藤 ゆかりの自宅は、学園から少し離れた静かな住宅街にあった。
古い日本家屋をリフォームした部屋は、柔らかな間接照明と白藤の花を模した装飾で満たされ、穏やかな香りが漂っている。
誰もいないこの部屋で、すみれ野 あかりは初めての交花に臨もうとしていた。
二人はすでに芽吹きの段階を越え、軽い触れ合いと抱擁を何度も繰り返してきた。
今日、ゆかりはあかりを優しくベッドに導いた。
「ゆっくりでいいわ。あかりちゃん……無理はしないで」
ゆかりの声はいつも通り穏やかで、包容力に満ちていた。
あかりは頰を赤らめながら、小さく頷いた。
すみれ色のリボンが、胸元で小さく揺れている。
二人は向かい合い、まずはそっと抱き合った。
ゆかりの腕があかりの背中を優しく包み込み、白藤の淡い緑がかった光粒子がゆっくりと舞い始める。
あかりのすみれ色の光粒子が、それに応えるように柔らかく輝いた。
唇が重なり、キスは徐々に深くなっていった。
ディープキスになり、舌が優しく絡み合う。
ゆかりの唇は温かく、ねっとりと甘く、あかりの小さな吐息を誘う。
「ん……ゆかり先輩……」
あかりの声が、キスの合間に甘く漏れた。
二人は長い時間、ただ抱き合い、深くキスを繰り返した。
服を脱がせることはまだせず、制服越しに体温を感じ合い、互いの想いを確かめ合うように。
やがて、ゆかりがそっと唇を離し、あかりの瞳を真っ直ぐに見つめた。
「あかりさん……少し、話してもいい?」
あかりが小さく頷くと、ゆかりは静かに続けた。
「私は……15歳の時、初めての儀式で失敗したの。
相手の子の心を優しく包み込みすぎて、逆に感情が暴走してしまった。
教室全体に甘い藤の香りが充満して、数日間みんながぼんやりしてしまったわ……。
あの時、私は自分の『優しさ』が、かえって相手を傷つけるんじゃないかって、とても怖くなった」
ゆかりの声は穏やかだったが、瞳の奥に過去の痛みがわずかに見えた。
「儀式の成功には……お互いの愛の深まりが、とても大事なの。
ただ触れ合うだけじゃなく、心から相手を想い、信頼し合うことがなければ、本当の満開には至らない。
あかりちゃん……あなたが今、私に心を開いてくれているように……私も、あなたをちゃんと想っているわ」
あかりの紫色の瞳が、じわりと潤んだ。
紡への想いをあきらめようとしていた心が、ゆかりの優しい言葉にゆっくりと溶けていく。
「……ゆかり先輩……」
あかりは目を潤ませながら、震える声で言った。
「私……ゆかり先輩と花を咲かせたい。
本当の気持ちで……先輩と一緒に、満開になりたいです」
二人は再び見つめ合い、深くディープキスを交わした。
キスはこれまで以上に熱く、想いを確かめ合うように続いた。
ゆかりの指が、あかりの制服のボタンにそっとかかった。
あかりも、ゆかりのブラウスに手を伸ばす。
ゆっくりと、しかし確実に、お互いの服を脱がし始めていた。
白藤の淡い緑がかった光粒子と、すみれの柔らかな紫の光粒子が、二人の周囲で優しく、しかし確かに絡み合い始めた。




