第15話 残る熱 ― 経験の差
休日の余韻は、夜になっても桜良の体から離れなかった。
自室のベッドに横たわり、黒髪ロングをシーツに広げた彼女は、紫銀の瞳を天井に向けていた。
昼間、温室のベンチで交わした軽い抱擁。
紡の小柄な体が胸に預けられたときの柔らかさと温もり、あの甘い百合の香りが、まだ肌に染みついているようだった。
体が熱い。
経験を重ねた身体は、ただの抱擁だけで敏感に反応してしまう。
「ん……」
小さく息を漏らしたその時、部屋の扉が静かに開いた。
銀白の髪を肩に流した白百合 澪が、いつもの優しい微笑みを浮かべて近づいてきた。
「さくら……今日は遅くまで出かけていたのね。お姉さまが、ちゃんと癒してあげないと」
桜良は抵抗する気力をすでに失っていた。
身体は姉の愛撫に慣れきっている。拒否しても、結局は快楽に飲み込まれることを知っていた。
「お姉さま……今夜は、少し……」
言葉を遮るように、澪の指が唇に触れた。
「いい子にして。お姉さまが全部、綺麗にしてあげるから」
澪は優しく、しかし確実に桜良の寝間着をはぎ取った。露わになった白い肌に、銀白の髪が絡みつく。
掌が胸の膨らみを包み、親指で頂を転がす。舌が首筋を這い、ゆっくりと下へ滑っていく。
「あ……っ」
桜良の体が小さく跳ねた。
身体は正直だった。何度も重ねてきた愛撫に、すぐに花弁が開き、花蜜が溢れ始める。光の粒子が淡く舞い上がり、部屋に甘い百合の香りが広がった。
澪の舌が、秘められた花芯に触れた。
巧みに、執拗に、吸い、舐め、刺激する。
桜良の腰が無意識に浮き上がり、指がシーツを強く握りしめた。
「んぁ……あっ……お姉さま……」
身体は慣れている。快楽の波が、次第に大きくなっていく。
しかし、心は違った。
閉じた瞼の裏に浮かぶのは、紡の琥珀の瞳だった。
小柄で純粋な、あの少女の体。経験など一切ない、震えるような柔らかさ。
もし自分が紡を抱いたら……あの無垢な体が、自分の経験豊富な指や舌にどう反応するのか。
その想像が、罪悪感とともに、予想外の悦びを呼び起こした。
(紡さん……あなたの花は、こんなに乱暴じゃなくて……優しく、そっと……)
快楽が深まるにつれ、想像はますます鮮明になった。
紡の小さな喘ぎ、恥ずかしそうに赤くなる頰、震える指先。
「あ……んっ……はぁ……」
桜良の唇から、思わず本音が零れ落ちた。
「……紡さん……いい……」
その瞬間、澪の動きがぴたりと止まった。
銀白の髪が揺れ、澪の瞳が一瞬で冷たく鋭くなった。
「……今、何と言ったの?」
桜良はハッと目を見開いた。
だが、快楽の余韻で体が震え、言葉が出てこない。
澪の声が、低く、怒りに満ちて響いた。
「他人のことを考えながら、私の愛を受けているの?
さくら……あなたは、私のものなのに……!」
澪は荒々しく体を起こし、桜良の頰を両手で掴んだ。
欲望と嫉妬が混じった瞳が、妹を射抜く。
「許さない……絶対に許さないわ」
澪は乱暴にシーツを払い、部屋を後にした。
扉が強く閉まる音が、静かな夜に響き渡った。
一人残された桜良は、乱れたシーツの中で体を起こした。
まだ熱い肌に、余韻の光の粒子がゆっくりと消えていく。
胸の奥が、痛いほどに疼いていた。
(……私は、もうすでに……紡さんを、愛している……)
その事実に、桜良はようやく気づいた。
姉の愛撫に慣れた身体と、心が求める純粋な花。
二つの間で、彼女の蕾は激しく揺れ始めていた。
守り人としての重圧、現守り人の力の弱まり、そして初めて芽生えた本当の恋——。
すべてが、これから彼女を試そうとしていた。




