第110話 儀式2日前 最後の仕事「カンナへの仕返しの計画」
朝の学園は、柔らかな陽光が廊下に差し込む穏やかな時間だった。
桜良と紡はいつものように、温室の近くのベンチで待ち合わせをしていた。
儀式まであと2日。世界のレイラインはますます乱れ、二人の緊張も頂点に近づいていた。
紡は黒いショートヘアーを軽く揺らし、琥珀色の瞳を真剣に輝かせながら桜良を見つめた。
「桜良さん……今日から、本気で計画を立てましょう。
カンナ先生への仕返し……もう、時間がないんです」
桜良は腰まで流れる黒髪を指で軽く払い、紫銀の瞳をわずかに細めた。
気高い表情に、珍しく戸惑いの色が浮かぶ。
「ええ……確かに、このタイミングしかないわ。
儀式を終えて私たちが正式にペアになると、他の女性との交わりは完全に禁じられる。
カンナ先生のあの余裕たっぷりの態度……今のうちに、少しだけ返しておかないと」
紡が意外と積極的に身を乗り出した。
「私、考えたんです。
カンナ先生を『もっと特別な指導をお願いしたい』って甘く誘って、桜良さんの部屋か特別温室の個室に呼び出すんです。
そこで二人で同時に攻める。桜良さんが上から、私が横から……蔓のような愛撫で絡みついて、先生の余裕を崩すんです」
桜良は少し目を見開いた。
いつも優しく控えめな紡が、こんなに具体的なアイデアを次々と出すとは思っていなかった。
「紡……あなた、意外と積極的ね。
……感心するわ。でも、少し戸惑うくらい大胆だわ」
紡は頰を少し赤らめながらも、敬語を保ったまま熱を込めて続けた。
「だって、桜良さん……あの時の指導、思い出すたびに花の力がざわつくんです。
この嫉妬を、逆に力に変えたい。
先生を二人で同時に攻めて、初めて乱れた顔を見たいんです」
桜良の唇がわずかに緩んだ。
紡の言葉に、自分の胸の奥にあった同じ感情が呼び起こされるのを感じた。
「私も……同じよ。
カンナ先生のあの落ち着いた微笑みを見ていると、なぜか胸がざわつく。
これはただの嫉妬じゃない。私たちの花が、先生の存在を強く意識している証拠かもしれない。
……それを、儀式前の最後の機会に、ちゃんと向き合っておくべきね」
二人はベンチに並んで座り、具体的な計画を練り始めた。
ユーモアと真剣さが混ざった会話が続く。
紡がメモ帳を取り出し、積極的に書きながら提案した。
「まず、呼び出しの言葉はこうです。
『カンナ先生、儀式前に最後の特別指導をお願いできますか? 桜良さんと二人で、先生の技術を徹底的に学びたいんです』って、甘く囁くように。
先生はきっと、いつもの余裕で来てくださるはず」
桜良が感心しながら頷き、少し笑みを浮かべた。
「ふふ……あなた、なかなか計算高いわね。
それで個室に入ったら、私が先生の後ろから抱きついて胸を優しく揉みながら耳元で囁く。
あなたは正面から先生の太ももに絡みついて、指でゆっくり刺激する。
同時に二人で攻めれば、先生も最初は余裕を見せても、徐々に息が乱れるはずよ」
紡が目を輝かせて付け加えた。
「横向きの蔓絡みと、上乗り花抱きを交互に使いましょう。
私が先生の左側から体を密着させて、桜良さんが右側から……
先生の成熟した体を、二人で同時に包み込んで、逃げられないように」
桜良は紡の積極さに少し戸惑いつつも、紫銀の瞳に強い信頼の色を浮かべた。
「紡……あなたとこうして計画を立てていると、なんだか心強いわ。
嫉妬の感情が、こんなに明確な力になるなんて……
私たちの花は、先生を攻めることで、もっと強く結ばれるのかもしれない」
二人の会話は真剣さと、どこか楽しげが混ざっていた。
紡が
「先生が乱れた顔で喘ぐところ、想像しただけでドキドキします……」
と頰を赤らめると、桜良が「あなたったら……」と軽く笑う。
しかしその奥には、儀式を目前に控えた本気の決意があった。計画を一通り固めた後、二人は温室の奥へと移動した。
まだ行為には入らないが、花芯合わせの練習を再開する。
桜良が紡の小さな体を優しく抱き寄せ、額を触れ合わせた。
「紡……この計画を実行した後、私たちはもっと強く結ばれるわ。
カンナ先生への仕返しは、私たちの絆を確認するための、最後の儀式前の試練よ」
紡は笑顔を崩さず、しかし熱を込めて答えた。
「はい、桜良さん。
私もそう思います。先生を二人で攻めて、乱れたところを見たら……
その達成感を胸に、明後日の本当の満開に臨めそうです」
二人は静かに体を寄せ合い、軽い触れ合いから花芯合わせの予行練習を始めた。
まだ本格的な絶頂には至らないが、互いの花の光が淡く混じり合い、甘い香りが漂う。
計画実行への意欲が、二人の間に確かな熱となって広がっていた。
「明後日……本当の満開が待っているわ」
桜良が静かに呟いた。
紡は小さく頷き、桜良の手に自分の手を重ねた。
「はい……その前に、カンナ先生に、ちゃんと仕返しを……」
朝の陽光が温室のガラスを透かし、二人の影を長く伸ばしていた。
儀式2日前、最後の「仕事」が、静かに始まろうとしていた。




