28 胡瓜博士の葛藤と束の間くつろぐ洋梨子
するとそんな博士の様子を伺っていた洋梨子が
「お父さまの気持ちはよく分かりますが、実際問題として政府も警察も手を尽くしてもどうにもならないということでしょう?
このままだと建築物はどんどん破壊され、大人も子供も殺されていく。またウイルスを撒き散らそうとするかもしれないし、被害は拡大するばかりだわ。
ここはお父さまが意地を張っているところではないと思うの。人々の命がかかっているのよ」
「人々の命というが、亡くなってしまった地底人たちの命はどうでもいいのか?」
「どうでもいいはずないでしょ。確かに政府はとんでもない愚かなことをしてしまったわ。でもだからといって地上の人々も見殺しにしていいということにはならないわ」
「じゃどうしろというのじゃ。洋梨子、お前はもう普通の女の子の生活を楽しんでいる。2度と特殊スーツは着ないんじゃろ?」
「また普通の女の子の生活ができるように、いえ、みんなが普通に暮らせるように、もう一度お父さまが開発した、科学の粋を凝らした特殊スーツを着て7人と戦うわ。
これは必ずしも正義とは言えない、辛い戦いになると思うけど、やるしかないわ」
「洋梨子や、こんなことになってしまって本当に申し訳ない。じゃがおまえにそんな覚悟があるのなら、わしも全力でサポートするぞ。道のりはどんなに険しくとも、おまえがいつかきっと普通の女の子の生活を取り戻し、愛する人に出会える日が来ることを祈って」
「お父さん、愛する人に出会うっていうのは余計よ。私は恋なんかしないもん」
「今の洋梨子には何を言っても無駄のようじゃ。そのうち自分で分かるまでは。ところで私の助手の中で最も優秀で、わしの研究を熟知している佐川美都子さんを紹介しよう。
わしも大分年をとった。わしにもしものことがあった時は佐川さんにサポートしてもらってくれ」
「佐川美都子です。私も陰ながら胡瓜博士及び洋梨子さんの力になれるよう頑張りますわ」
「父がお世話になっています。よろしくお願いします」
「よし、洋梨子や、とりあえずゆっくり休み、余暇を楽しみなさい。その間にワシと佐川さんで全力で地底からやってきた7人の居場所をつきとめてみせるぞ」
胡瓜博士はハムスター型のミニスパイロボットを再び世界中に放ち、地底人たちの足跡を追った。地底人は見かけ上は地上の人間とかわらないので、捜索は難航していた。
洋梨子は博士からの連絡を待つしかなかったので、体が回復すると友だちと出かけたりして普通の女子の生活を満喫していた。
こういう生活をしていると、自分があの特殊スーツを着て戦っていたなんて夢のようだった。もうあのような恐ろしい場面には戻れないような気さえしたのだった。しかし一度博士からの連絡があればこの身を投げ出して戦わなければならない運命だった。




