第十五話宣言した朝
第十五話宣言した朝
アラームが部屋中に鳴り響き目を覚ました私はすぐさま昨日の宿題を終わらせ朝のシャワーを浴びた。
「……スッキリした」
私がお風呂場から出ると、良い匂いがしたので周りを見ると昨日買った鮭おにぎりを食べている彩那の姿があった。
その姿を見て思わず声をかけてしまった。
「今おにぎりを食べて朝食を食べられるの?」
「分からないけど、お腹すいちゃって」
おにぎりを食べながらお腹を鳴らしている彩那を見て強くは言えなかった。
「可愛い」
リスのように口いっぱいに頬張る彩那を見て溢れた言葉を彩那は聞き逃さなかったようで、おにぎりを飲み込んですぐに私にハグをしてきた。
「ちょっと彩那もうすぐ行かないと間に合わないよ!!」
「もうちょっとだけ」
抱きついてきた彩那から寝息が聞こえてきて私は焦って起こした。
「……んん、それじゃあ行こっか」
袖で目を擦っている彩那を見て愛おしくて仕方ないという思いでいっぱいになったが、それは恥ずかしくて口には出来なかった。
そして朝食を食べるために一般のお客さんと同じエレベーターを使ってホールに向かった。
エレベーターから出てからすぐにただでさえ空いたお腹がさらに空くような良い匂いが漂ってきた。
私がお腹を鳴らすと彩那が喩え話をしてきた。
「これって上手く言えないけどお腹空いてる時に飯テロの動画を見た時みたいなそういう時の状態みたいな感じしない?」
なんとなく理解できたので、私は軽く頷いた。
普段なら理解がなんとなくでも完璧に理解出来ましたみたいな雰囲気を出す。
彩那相手になら少しは本心を出せるようになってきたことに私は安心感に近い感情を抱いた。
「いつかはみんなにも本心で接したいな」
「それでしたら私にもそう接してくれてもいいですよね白本さん」
呟いてしまった言葉を後ろにいた橘さんに聞かれてしまい私はものすごく焦り戸惑っていた。
「愛海は穂乃果ちゃんにしっかり本心で接してるよ」
彩那が私を庇って答えてくれた。
だけどそれだけではダメだと……私は勇気を奮い起こして橘さんに説明した。
「そういうことだったらそう考えてもおかしくはないわよね。……話すの相当勇気が必要だったでしょ、話してくれてありがとう」
橘さんに少しなら心を開いてもいい……のかも。
「まあ彩那様を幸せに出来ないのでしたら私が奪いますけどね」
「ちゃんと彩那のことは私が幸せにするから!!」
橘さんに彩那を奪われたくないと思った私の声は自然といつも以上に大きくなってしまい周囲の視線を一斉に集めてしまった。
その直後先生がホール全体に聞こえるほどの音楽を流した。
しかもその音楽は話題になっている物だった。
先生は口パクで『なにかあったみたいだけど大丈夫?』と察して音を出してくれた。
私と彩那は口パクで先生に感謝を告げた。
振り向くと涙目の橘さんが「それでいいのよ、それで」と言って同じ班の人の下へ走っていった。
「どした穂乃果っち、なんかあったん?」
「そうよそうよ穂乃果のそんな顔見たことないよ」
「……大丈夫、あくびが出ただけだから」
「そういうことにしといてやろう。んじゃバイキング楽しもうぜ二人とも!!」
私はそんな橘さんを見て強い人だということを改めて実感した。
私とは大違い……私は堂々と奪う宣言出来るようなそんな強い人間じゃない。
そもそも彩那にまともに告白さえできなかった私と違って彩那を好きって言ってる橘さんだと、橘さんの方が彩那を幸せに……ううん、私が彩那を幸せにするって言ったんだから幸せにする!!
「彩那行こう!!」
私は人前だというのに彩那の手を引き、朝食のバイキングの前まできた。
少しずつだけど私も良い方に変わっている、そんな気がする。
それからというもの修学旅行での私は彩那に楽しんでもらうべく恥を捨てて頑張った。
そうしていると時間はあっという間に過ぎていき帰宅時間が来てしまった。
彩那も私も両腕が千切れるのではと思うほどの買い物をしていたためところどころ休憩を取りながら家まで歩いていた。
そうしていると私は錦秋通りでのことを思い出していた。
「ねえ愛海なんかこれって錦秋通りでのデートの時みたいだよね」
彩那も同じこと考えたんだ、そう思うと心が温かくなるのを感じた。
「そうだね、でもあの時はまだ付き合う前だったからデートって言えるのか分からないよ」
「付き合う前でもデートはデートでしょ……私は愛海と行ければそれはデートなんだけどなぁ、愛海は違うの?」
「私も……そうだけど、あれから何回も考えるんだ。本当に彩那の恋人は私で良いのかなって、修学旅行で改めて思ったんだけど橘さんの方が似合ってるんじゃないかって……私じゃなくてもいいかもって怖くなって……ごめんね彩那そんなこと考えて」
「ううん、"そんなこと"じゃないよ。愛海が本気で悩んだんでしょ、というか私さ嬉しかったんだよ二日目の朝に穂乃果ちゃんに『ちゃんと私が彩那を幸せにするから!!』って言ってくれたこと。私はこの修学旅行で改めて思いました、私の恋人は愛海しかいない愛海じゃなきゃ嫌だって! 悩んでくれたことも私の幸せを考えたからなんでしょ、私は愛海の誰かのために行動出来るそういうところが好きなんだよ」
「彩那はそう言ってくれるけど、本当はただ嫌われたくないから……優しい人を演じてるだけで本当の私はそんな優しい人じゃない」
「そんなことない!! 愛海は人のことを思える優しい人、それに優しくなかったら咲美ちゃんを連れてお父さんから逃げたり咲美ちゃんのために働いたり出来ないでしょ」
「そんなの当たり前のことをしてるだけで、優しくなんてない」
「それを当たり前って思える愛海は優しいよ。廃棄の時だって食べ物に謝ってから廃棄するでしょ……それに実を言うと私、愛海が思うほど優しくないよ」
「そんなことないよ」
「そんなことあるの! だってゆでたまごの黄身が苦手だから残しちゃうことだってあるしピーマンだってまだ苦手だしそんな感じで好き嫌い激しいよ」
「でも彩那が苦手な物を頑張って食べてるの見てるけど?」
「とっ、とにかく愛海は優しいし私の自慢の恋人なの、分かってくれた?」
初めて彩那が声を荒らげたのを見てさすがの私でも理解出来た。
「分かったよ。私が優しいのはまだうーんって感じだから少しずつ理解しようと思う」
「私も愛海が優しいと思うことしたら教えるようにするから、自信持って」
「うん、ありがとう彩那」
「お礼を言いたいのはこっちだよ、私の恋人になってくれて……それから一緒にいてくれてありがとね」
読んでいただきありがとうございます!!
更新は出来るときにしますね
いつもとちょっと書き方を変えてみました




