終-2 その先に
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翌日、二人は予定通り、皇帝の間を訪れた。
「此度の結婚、誠にめでたいのう。狐族もさぞ喜んでおることじゃろう」
「ありがとうございます」
上機嫌らしい皇帝を前に、二人は揃って頭を下げる。
皇帝は、そんな若き夫婦の姿に目を細めて。
「礼を言うべきは、余の方じゃ。これで、肩の荷が一つ降りた」
そう言って、安堵の溜息を吐いてみせる皇帝に、紅悠と律は顔を見合わせた。
「それは一体…どういう意味でしょうか」
律が尋ねると、皇帝は長い眉毛の奥の瞳を、きらりと光らせる。
「…知りたいかの?神獣族に伝わる、伝承の真実を。」
再び顔を見合わせる二人。
すると皇帝は徐に玉座から立ち上がり、窓辺へと歩き始めた。
「…太古の昔、神獣族は種族の別に関わらず、皆が同じ世界に暮らしていたのじゃ。そこには国も身分も存在せず、皆が互いを思いやり、質素だが平和な世界じゃったという」
一つの世界に様々な種族が存在し、彼らはそれぞれの能力を活かして、皆で助け合いながら暮らしていた。しかし、そんな世界に、いつしか自らの利益のみを追求しようとする輩が現れる。
その者たちはより豊かな生活を求めて、食料や土地を独占し始めた。その分、周りの者たちは飢餓に苦しんだ。
そして人々は自らを守るため、助け合うことをやめた。代わりに、土地と食料の奪い合いが始まった。
より多くの利益を獲得するため、人々はやがて同種族の者を仲間とみなして共に戦い、異種族の者を排除するようになる。争いは徐々に、種族間の紛争へと変わっていった。
「そんな中、百年ほど前のある日を境に、争いがぴたりと止んだ。その日、各種族の長たちが、一斉に建国を宣言したのじゃ」
種族長たちは、自らの一族が豊かに暮らすための広大な領土を、それぞれ別の場所に見つけ出した。
建国と同時に種族長たちは王となり、一族の民たちに約束した。国土の外に出なければ、今後は争いもなく、豊かで平和な生活を送ることが出来ると。
こうして神獣族たちは、それぞれの国に分かれて暮らす、今の世界が出来上がったのだ。
「激化する戦いの最中、各種族の王たちは、水面下で綿密な計画を練り上げた。当時多くの民たちが、異種族を悪と思い込んでいたからのう。この争いを止めるためには、それぞれの国土に民を囲い、異種族間の関わりを断つしかなかったのじゃ」
その結果、各種族の民たちは、それぞれの国の王のもと、協力し合って建国を進め始める。国を分かつことで、奪い合いを繰り返していた人々が再び、助け合うようになっていった。
そして人々は王の言いつけを守り、決して他国の種族とは関わろうとしなかった。
しかし、その裏で、王たちの間ではとある「密約」が交わされていたのだ。




