9-8 答え
「あの噂、案外本当だったのかも知れねぇな。狐族の娘と結ばれた龍族の男は何とやら、ってやつさ」
「…そんな迷信、本気で信じているのですか?」
眉を顰める紅悠に、煉は鼻で笑って見せ。
「勿論、今まで気にも留めてなかったさ。…だが、百聞は一見に如かずだ。あんた、落ちこぼれが過ぎて国を追い出されたんだろ?それがどうして、これだけの霊力を使えるのか…律と結婚したお陰で、内なる力が目覚めたんじゃねぇのか?」
「そんなこと、あるはずがないでしょう」
そう、これは紅悠が、元より持っていた力。しかし煉は、すっかり例の伝承を信じ込んでしまったようだ。
「お前を手に入れれば、俺はもっと強くなれる。俺の妃になれ、紅悠。」
「…いいえ、と申し上げたら、どうするのです?」
紅悠を映す煉の両の目には、獲物を欲する狂気にも似た光が宿っている。そんな煉を試すように、紅悠が尋ねると。
「それなら、今からこの村を乗っ取るまでだ」
「…!!」
紅悠の反応を楽しむかのように、煉が口の端を吊り上げてみせた。この言葉は決して脅しではないと、不敵な笑みが語っている。
「お前が俺と共に来るというのなら、この村には手を出さない。…こんなちんけな村より、お前の方がずっと大物だからな」
「――…」
煉の言う通り、紅悠は離縁される身。そうなればもう、律のために紅悠が出来ることは何もない。
ならば、せめて最後に一つだけでも、律の力になれるなら。
「…私が貴方に従えば、二度とこの村に足を踏み入れないと、お約束いただけるのですか?」
紅悠の言葉に、煉は満足げに頷いた。
「ああ。俺はやがて、この国の頂点に立つ男だ。約束は必ず守る」
言いながら煉は、ゆっくりと紅悠に歩み寄る。
「さあ、こっちへ来い。紅悠」
煉が、紅悠に向けて手を伸ばした、その時。




