9-7 答え
一方、里山の紅悠の前では。
金縛りで身動きが取れない男たちの間を、悠々と歩いてくる人影。
「…見事なもんだ。あんた、単なる村娘ってわけじゃじゃなさそうだな」
新たに姿を現した男に、紅悠は金縛りを保ちつつも目線を向ける。
「俺は赤龍族王家、煉だ。…さあ、こっちは名乗ったぜ?あんたの正体を教えてくれないか」
(…“煉”。この人が――)
朱色の髪、臙脂の瞳。派手な宝飾に錦糸の衣が、他の男たちの中でも一際目立つ。やはりこの者たちが、律が警戒していた赤龍族王家の一味だったという訳か。
彼らの中で唯一、煉には紅悠の金縛りが効いていない。これまでも強引に領土を拡げてきたというが、やはりかなりの霊気の持ち主ということだろう。
そんな煉を警戒しつつも、紅悠は口を開く。
「狐族王家の、紅悠と申します」
「…狐族?」
これまで余裕の笑みを保っていた煉が、わずかに表情を動かした。
「…ああ、そうか。あんたが、ここの首長に嫁いできたっていう…」
しかし、その顔はすぐに、元の薄笑いへと戻っていく。
「へぇ、なるほどねぇ…」
それから煉は、紅悠の頭の先から足元まで、じろじろと観察し始めた。
紅悠が警戒を強める中、煉の視線が再び、紅悠の視線とぶつかる。
「紅悠。お前、俺の妃にならないか?」
「…!?」
思いがけない言葉に、つい、霊力の制御が緩んだらしい。
「れ、煉様、一体何を…!?」
手下の男たちが愕然として煉を見やる。紅悠は慌てて、金縛りを張り直した。
「俺は力のある奴が好きでね。男も、女もだ。お前になら、俺の第三妃…いや、第二妃の座を与えてやってもいい」
「私は、この村の首長、律様の妻です。他の方の妃にはなれません」
毅然として言い放つ紅悠にも、煉は笑みを崩さない。
「その結婚ってのは確か、まだ試用期間中だろう?…そしてその試用期間も、そろそろ終わる頃じゃなかったか?」
「…それは」
口を噤む紅悠に、にんまりと笑みを深める煉。




