9-3 答え
*❀٭*❀٭*❀٭*❀٭*❀٭*❀٭*❀٭*❀٭*❀*❀٭*❀٭*❀٭*❀٭*❀٭*❀٭*❀٭*❀٭*❀
一方、そんな様子を、首長邸の庭影から窺う人物が。
(ああもう、一体どうなっているの!?あの二人、全く別れる気配がないじゃない!!)
例によって律と紅悠の様子を偵察しに来た、明である。
(藍龍族の決議も、結局有耶無耶のまま終わってしまうし!ほんっと、役に立たないんだから!)
松の幹に背をもたれつつ、明は頭を抱える。律のためにこれだけ手を尽くしているというのに、どうして。
(どうして、律様は――)
あんなにも切ない瞳で、空を見上げるのか。
「明様?」
不意に聞こえた声に飛び上がる。振り向くと、勝手口から出て来たらしい紅悠が、目をぱちくりさせていた。
「そんなお庭の隅で、どうなさったんですか?旦那様にご用事でしょうか?」
「そ、そうですわ!律様のお力になるために来ましたの!決まっているでしょう?」
紅悠を前に、慌てて取り繕う明。
「貴女なんかよりも、私の方がずっと律様のことを理解していますもの!」
そう、これは全て、律の幸せのため。それなのに何故――なぜこんなにも、胸がざわつくのだろう。
目の前の紅悠は、そんな明の様子を特に怪しむ素振りもなく。
ひとつ頷いてから、小さく微笑んだ。
「…明様に、お願いしたいことがあるんです」
「な、何ですの?」
無意識に身構える明の瞳を、澄んだ紅玉の瞳が真っ直ぐにとらえる。
「明様は王宮にお勤めだと、旦那様からお聞きしました。…でしたら、どうか王宮の方々に、旦那様のお仕事を減らしていただくよう、頼んでくださいませんか?」
その言葉に、明が目を見開いた。
「私が居なくなった後も、旦那様が無理をなさらないように」
「貴女…」
そう呟いた明に向けて、紅悠が深く、頭を下げる。
「どうか、よろしくお願いいたします。」
そうして、裏門から静かに出て行った紅悠の後姿を見つめながら、今度は明が、一人その場に立ち尽くしたのだった。




