7-4 動き出す思惑
「どうやら、奥さんとは上手くいってるみたいだね。それが分かったことが、今日一番の収穫かな」
「分かったから、離れろ」
目の前に迫った翠の笑顔を、律が手で押しのける。
ようやく身体を離した翠は、それでもまだ上機嫌だ。
「…安心したよ。このところ体調も優れないみたいだったから、ちょっと気になってたんだ」
そう言って、ほっと溜息を吐く翠。
そんな親友の姿に、律は。
「…心配かけてすまない。ありがとう」
穏やかに微笑む律を見届けてから、翠は明を伴って屋敷を後にした。
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「…明、さっきから黙りこくって、何を怒ってるんだい?」
律の村を出て馬車に揺られながら、明は長い事物思いに耽っていた。
首を傾げる翠に見向きもせず、明は。
「…別に、怒ってなんていませんわ。今考え事をしているので、話しかけないでくださる?」
言葉とは裏腹に、目に見えて苛立っている妹に対し、翠はしかしそれ以上何も言わず、やれやれと溜息を漏らすに留めた。
(…まったく。何なの、あの子)
あの、紅悠とかいう狐族の娘。律の隣で、すっかり“妻”のような顔をして。そもそもこの結婚は、ただのお試しではないか。
(律様だって、皇帝に命令されて嫌々結婚しただけよ。なのに…)
それなのに何故――律は紅悠に向けて、あんなにも優しい笑顔を向けるのだろうか。
満開の白梅の下で笑い合う、律と紅悠の姿が頭を過る。あんなに穏やかな律の表情を、明はこれまで見たことがなかった。
(…いいえ!律様は、誰に対しても優しいのよ!きっとあの子は、それに付け込んでるんだわ!)
落ちこぼれの狐族の娘など、律の妻としてふさわしいわけがない。律がどれだけ優秀な王族か――それは、明が一番よく分かっている。
(このままじゃいけない…私が、律様を助けなきゃ…!)
流れていく景色を見つめながら、ぎゅっと拳を握り締める、明であった。




