7-3 動き出す思惑
王宮における翠の役割は、主にこういった法令の整備。国の法令を新たに定めたり、逆に廃止したりするためには、国議において承認される必要がある。そのため、出席権のある上位王族への根回しが不可欠だった。
年配の王族の中には、未だ実力主義に基づいた政治思想を持つ者も多い。翠のような若手の言葉になど、耳を傾けない者が大半だ。
肩を竦める翠を前に、律も苦笑を返す。
「そっちも、色々と大変そうだな」
「すまないね。出来ればここに被害が及ぶ前に、片を付けたいんだけどさ…」
翠に向けて、律は首を横に振った。
「こっちのことは心配するな。自分の村は、自分で守ってみせる」
そう言って微笑んだ律に、ここまで黙って話を聞いていた明が、ふと身を乗り出す。
「ねぇ、律様。これからは律様も、私たちと一緒に戦っていただけませんか?」
律は、きょとんとして明を見やった。
「王宮に上がって、国を変えるお手伝いをしていただきたいんです!私とお兄様が推薦すれば、皇帝陛下はきっと律様を登用してくださいますわ」
上目遣いに律を見つめて、明が言う。
しかし律は、静かに首を横に振った。
「俺の役割は、この村を守ることだ。ここを離れるわけにはいかない」
「そんなこと、他の王族に任せればいいだけの話でしょう?律様の実力なら…」
「明」
律の腕に縋ろうとする明を、翠がそっと諌める。
「勿論、この村から君を取り上げるわけにはいかない。ただ――煉に何か動きがあったら、僕にも情報をくれないか。こちらとしても、このまま好き勝手させておくつもりはないんでね」
「分かった。何かあればすぐに伝える」
律が頷くと、翠もにこりと笑顔を見せた。
「…さて、難しい話はこれで終わりだ。ところで律、前に会った時より随分調子が良さそうじゃないか」
「そうか?」
首を傾げる律を、翠はまじまじと観察し。
「ああ、やっぱり、以前の霊気が戻ってきているみたいだ。この短期間に、どんな魔法を使ったんだい?」
興味津々の翠の視線に苦笑しつつ、律は。
「俺は何もしていないさ。…全部、紅悠のお陰だ」
「ほう?それはそれは」
頬を赤らめて言う律に、笑みを深めて詰め寄る翠。その後ろでは明が密かに、眉を強張らせていた。




