6-8 落ちこぼれの花婿
「それに、“階級に興味がない”というのは、俺も同じだ」
「旦那様も…?」
龍族において、王家出身の人間は大抵、王宮での職を目指す。彼らが見据える先は無論、その頂点に君臨する“皇帝”という最高位だろう。
王族たちが領土争いに躍起になるのも、一族内で活躍が認められれば、王宮への大躍進も夢ではないからだ。
「だが俺は、首長の仕事が好きだ。民と一緒に村を守っていく、この仕事が。…今日、市場で久々に村人たちと話をして、改めてそう思ったよ」
ここで律は、苦笑しながら木の幹にごん、と後頭部を押し当てる。
「要するに、俺も龍族の中では“落ちこぼれ”だ。紅悠に偉そうなことを言える立場ではないな」
しかし紅悠は、そんな律の衣の袖を、両手でぎゅっと掴んだ。
「そんなことありません。…私は、旦那様のこと、心から尊敬しています」
律が再び紅悠を見やると、紅悠も真っ直ぐに、その瞳を見つめ返す。
最初は単純に、妻としての務めを果たさなければと、その一心だった。しかし、律の人となりを知るにつれ、紅悠の中で想いは徐々に変わっていく。
国や村のために、力を尽くして貢献しようとする誠実さ。その反面、自分のことはどんどん後回しにしてしまう不器用さ。
『主人だから』ではなく、そんな律だから、紅悠は支えていきたいと思ったのだ。
「だから、これからも私に、旦那様のお手伝いをさせてください」
その言葉に律は、照れたように微笑んで。
「ありがとう」
木々の隙間から差し込む陽光が、二人の秘密基地を温かく包み込んでいた。




