6-7 落ちこぼれの花婿
「狐族では毎年、王族の階級を定める試験があります。その試験に合格することで、階級に応じた様々な役職が与えられるんです」
試験における階級は上位から下位まで十二段階あるが、王族に生まれた子供たちは十二、三歳にもなると、この階級試験に参加するようになる。
「試験では霊気の実力を測るため、それぞれの階級に見合った課題を課せられます。私も十二歳の時、一段階目の試験を受けましたが…その時の課題は、『小鳥を使って枯れ木を蘇らせる』というものでした」
あるモノに宿る霊気を、他のモノに移し替えるという作業は、霊気を扱う上で最も初歩的な技術だ。
しかし当然、霊気を吸い取られた小鳥は衰弱し、命を落としてしまう。
「籠から取り出した小鳥の、温かさと鼓動を感じた途端…私にはどうしても、その小鳥から霊気を吸い取ることが出来ませんでした。そして私は史上初めて、第一段階の試験に“不合格”となったんです」
手の中で怯え、必死にさえずる小さな命を奪うことが、紅悠には耐えられなかった。
そしてこれ以降紅悠は、階級試験に参加するのをやめた。
参加したところでまた同じような課題が出て、同じような結果に終わるだろう。結果紅悠は、狐族では唯一、階級を持たない王族となったのだ。
「幸い私の師匠は懐の深い方で、私が試験に参加することをやめても、変わらず指導を続けてくれました。私自身階級には全く興味がなかったので、“落ちこぼれ”でも、全然構わなかったんです」
そこまで一気に話し切り、紅悠は溜息を吐いた。
隣で律は、紅悠の話を黙って聞いていたが。
――ぽん。
不意に、頭の上に、重みと温かさを感じた。
紅悠が驚いて顔を上げると。
「…紅悠は、“弱い”んじゃない。ただ優しいだけだろう」
律は、紅悠の頭に乗せた手で、そのままそっと髪を撫でる。
「紅悠は自分の力を、誰かを助けるためだけに使いたかった。違うか?」
(旦那様…)
紅悠に向けられる律の視線は、いつも以上に優しい。律の瞳を見つめ返して、紅悠は、こくりと頷いた。
「それなら、自分のことを“落ちこぼれ”と卑下する必要はないさ」
律は紅悠の髪から手を離すと、もう一度空を見上げる。




