6-5 落ちこぼれの花婿
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それから数日後の朝、律と紅悠は二人で市場を訪れた。
簡単な買い物だけ済ませて帰って来るはずだったのだが、首長邸に通ってくる子供の親たちから次々に挨拶を受け、気付けば小一時間ほど村人たちと会話を交わしていた。
「うちの村の住民が、こんなに饒舌だったとはな…」
屋敷に戻ってきた二人は、市場で買ってきたお茶を飲みながら縁側で休憩中だ。
今の時間、子供たちは村塾に通っているため、庭は閑散としている。前からこんなに静かだっただろうかと、今では不思議に感じるくらいだ。
「旦那様は、子供たちにもご家族にも、大人気なんですね」
「もとはと言えば、紅悠の考えたことだろう?」
くすくすと笑う紅悠に、照れたように頭を掻く律。確かにきっかけを作ったのは紅悠だが、律が子供たちから好かれる理由は別にある。
仕事に余裕があるときには、律は子供たちの様子見がてら庭に出てきては、チャンバラや相撲の相手をしてやったり、壊れた玩具を直してやったりしているのだ。
紅悠が縁側を通りかかると決まって、子供たちが「今日は首長様来ないの?」と聞いてくる。
(旦那様が優しい方だって、村の人たちが分かってくれてよかった…)
長い事この屋敷で働いている圭ですら、律のことを『不愛想で仕事にしか興味がない』と誤解していたのだ。
これからもっともっと、村人たちと律の間の距離が縮まっていけばいいと、紅悠は思うのであった。
「…あれ?」
ふと、庭先にあるものを見つけて、紅悠は思わず駆け寄る。
「旦那様、これ、フキノトウですよ!」
紅悠が屈んだ先に、まだ残る雪の下から顔をのぞかせる、黄緑色の蕾の姿が。
「ああ、毎年この時期になると生えてくるぞ?」
「そうなんですか?じゃあ、もっと見つけて、今夜はフキノトウのお料理ですね!」
そう言って、嬉しそうにフキノトウを摘み取る紅悠。天ぷらにおひたしにフキノトウ味噌…頭の中で、一気に想像が広がる。
他にも生えていないかときょろきょろしていると。
「…それなら、この先の裏山に行けば、もっと沢山出ていると思うが」
「本当ですか?」
ぱっと振り返った紅悠に、律はくすりと笑みを零し。
「ついておいで」
「はい!」
律について、紅悠は庭の奥へと進んでいった。




