6-4 落ちこぼれの花婿
それから、少しした後。
首長邸の広々とした庭で、思い思いに遊ぶ子供たちの姿があった。
「これは名案ですね、紅悠様!ここのお庭は無駄にだだっ広いだけだと思ってましたけど、子供たちがこんなに楽しそうに遊んでくれるなら、手入れのし甲斐もありますよ」
「圭様にそう言ってもらえて、私も嬉しいです」
この場所なら、誰にも叱られずにのびのびと遊ぶことが出来る。
圭と二人縁側から子供たちの笑顔を眺めて、その無邪気な姿に目を細める、紅悠であった。
「ああ~、また失敗した…」
そんな声に目を向けると、一人の少年が地面から独楽を拾いながら、肩を落としている。
「何でうまく回らないんだろう?」
言いながら再び紐を引っ張るが、やはり独楽は地面にぽてっと落ちてしまう。
と、そこへ。
「どれ、ちょっと貸してみろ」
「旦那様!」
いつの間にやら、仕事部屋に居るはずの律が、縁側に出てきていた。
律はそのまま庭に降りていくと、少年の前で独楽に紐を巻き付ける。
「いいか?紐を引くとき、横に引っ張るから上手く力が伝わらないんだ。紐は、こうやって後ろ向きに――」
律の手から放たれた独楽は、地面に降り立つと見事に回転を始めた。
子供たちからも、「おお~!」と歓声が上がる。
律は独楽を拾い上げ、少年に返してやった。
「ほら、やってみろ」
「うん!!」
子供たちが続々と独楽回しに挑戦する中、律は縁側へと戻って来て、紅悠の隣に腰を下ろす。
「里山を立ち入り禁止にすることで、子供たちの行き場がなくなってしまうことまでは、頭が回らなかったな」
「仕方のないことだと思います。この子たちの安全を守るためでもありますし…」
紅悠の言葉に、律は微笑みながらも、溜息を吐いて。
「紅悠が気付いてくれて良かった。政治に携わっていると、理論が先行してどうしても村の実情が後回しになってしまう」
それを聞いて、紅悠は。
「でしたら今度、旦那様もご一緒に、買い物に行きませんか?」
言うと、律は紅悠を見つめて目をぱちくりさせる。
「市場に行くと、村の人たちから色々な話を聞けるんですよ。私もこの村に来たばかりの頃は、随分と勉強になりました」
村の姿は、地図や歴史書を読み耽るよりも、実際に出掛けて行って住民と触れ合ったほうが、より鮮明に見えてくる。
他愛もない世間話の中にこそ、重要な情報が隠れているものだ。
「…そうだな。久しぶりに、出掛けてみるか」
そうして笑い合う二人を、傍らでそっと見守る、圭であった。




