6-3 落ちこぼれの花婿
少年がぽかんとしながら起き上がるのを確認して、紅悠はほっと胸を撫でおろす。
次の瞬間、固唾を呑んで見守っていた村人たちから歓声が上がり、少年と一緒に遊んでいたらしい子供たちが、一斉に駆け寄ってきた。
そんな中、一人の老人が子供たちの方へ近づいてくると、肩を怒らせて怒鳴り散らす。
「この、大馬鹿者が!桜の下で遊んではならんと、あれ程言っておいたじゃろうが!!」
目を吊り上げる老人を前に、子供たちはすっかり委縮して固まってしまっている。紅悠はそんな老人の肩に、そっと手を置いて。
「ご隠居様、どうか大きな声を出さないであげてください」
それから紅悠は、子供たちの前に屈み込む。
「どうして桜の近くで遊んじゃいけないか、分かる?」
紅悠が聞くと、子供たちは揃って、首を横に振った。
「桜ってね、とても病気に弱い木なの。こんな大きな木でも、ちょっと傷が付くだけで、そこから病気が入り込んで枯れてしまうこともあるのよ」
言いながら紅悠は、桜の幹にそっと手を触れて。
同時に幹が光だし、たった今折れて内部が剝き出しになった傷口が、光がやむ頃には表皮で覆われていた。
「これでもう大丈夫。今度から、この場所では遊ばないようにね。春になっても桜が咲かなかったら、寂しいでしょ?」
紅悠の言葉に、子供たちはしょんぼりしながらも、頷いた。
「はいはい、これで一件落着!ほら、先生もお家に戻らないと!…この人、昔は村塾の先生をしてたもんで、厳しい人なんですよ」
圭に言われて、先ほど子供たちを説教していた老人は、渋々家路についた。
「まあ、この子たちも遊び場がなくなっちゃって、可哀そうなんだけどねぇ…」
「遊び場が…?」
紅悠が圭に聞き返す。
「ほら、こないだ、里山に立ち入り禁止令が出されたでしょう。あの場所は良く、子供たちが遊び場にしてたのよ」
「そうだったんですか…」
これまで外遊びを我慢していた子供たちだったが、それもついに限界を迎え、言いつけを破ってこの場所で遊び始めてしまった、ということだろうか。
紅悠は再び、子供たちの前に屈むと。
「じゃあ、今から新しい遊び場に、連れてってあげようか」
その言葉で、ようやく子供たちの顔に輝きが戻った。




