5-5 落ちこぼれの花嫁
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その日、弦はいつものように、律から書類を受け取るため屋敷を訪ねた。
「失礼。首長殿、本日王宮に提出する経理報告書ですが…」
仕事部屋の襖を開け、弦が入って来る。
「ああ、もう仕上げてそこに置いてある。」
「ええ、ええ、そうでしょうとも、お待ち申し…へ?今、何と仰いましたかな」
襖の前で、弦は目を見開いたまま、固まってしまったようだ。
律は訝し気に首を傾げながらも、書類を取って弦に手渡してやる。
我に返った弦は、ぱらぱらと内容を確認し。
「た、確かに…素晴らしい、こんなに早く書類が出来上がっているとは。お見逸れいたしましたぞ」
「いや、俺の力ではない。紅悠が手を貸してくれたお陰だ」
「ほう、紅悠殿が…」
言われてよくよく見てみると、確かに資料の途中から、律のものではない筆跡が混じっている。
「…弦、その報告書を見て、どう思う?」
訊かれて、今度は弦の方が首を傾げた。
「どう、とは?項目ごとに丁寧にまとめられていて、非の打ちどころはないかと」
「やはり、其方が見てもそう思うか…」
弦はますます分からない顔をするが、律は気を取り直したように。
「いや、何でもない。じゃあ、後はよろしく頼む」
「承知。…と、そうじゃ、首長殿。ひとつお耳に入れておきたいことが」
弦は律の隣に屈み込むと、声を低めて。
「近頃、赤龍族の一部が活発に動いているようですぞ。…どうやら、この村の領土も、標的にされているようじゃ」




