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九話 開幕

 コロシアムは熱狂と狂乱の渦が巻き上がる。

 聖戦。

 今日のいや、もしかすれば明日になるのか。

 何にせよこの戦いでこの国の行き先は百八十度違うものになるだろう。


「怯えず逃げなかったことに賞賛を送るわ」


 第一王女は高い全てを見下ろせる席から手を叩いて、闇野一行を褒めた。


「リザ様、アナシス様。そして闇野様……どうか御三方に神の加護がありますように」


 少しスペースを空けた同じように大きめの椅子に第二王女は手を組みながら座っている。


 この国のはずれにある大きめのコロシアムは、元来使われることのなかった建物だ。

 聖戦の為のこのコロシアムは閑古鳥が鳴くように、いままで使われた事は町の魔物たちにもない。

 強い抑止となり、国を纏めていたシステムとコロシアムは地獄のような雄叫びと静かに行く末を見守る町の人たちによって、始まりを告げようとしていた。


「心配なの。闇野世界、頼むの」


 埃に汚れた白衣を不恰好に羽織った小さな魔法薬学の権威は、隣の魔物に押されながら土が舞うコロシアムを見つめる。

 ここにいる三分の二の魔物は恐らく第二王女の応援だろう。

 マモンは白衣のポケットに手を入れながら、飛び出そうとする心臓に意識を向ける。

 ーードクン

 いつもより数倍大きく感じるその心臓は妙に圧迫感を与えていた。




「世界。負けは絶対に許さないんだから」


 カレンがそっと俺にそう言った。

 反対側にある相手の入場門を見つめる。


「任せろって。何よりリザとアナシスがかなり力入ってるしな。もしかしたら俺に回ることなく終わっちまうかもしれねぇぞ」


 ニヤリと笑ってそうカレンを励ます。

 今はそのプレッシャーが心地いい。

 俺は力が入った肩をゆっくりと下げて、息を吐いた。


「ふふ! ぶちかましまてやりますから、この弓で! そうだ、エクシスさん付与終わりましたか?」


 何本も並べられた矢を撫でるようにエクシスが触っていく。

 赤い閃光と確かに感じる魔力にエクシスは会心の出来を伝える。


「ええ、完璧です。いつもより多めに込めましたから。安心してぶちかまして下さい」


 エクシスは弓筒に矢を入れてリザに背負わせた。

 リザがナイラ様から貰った新しい緑のマントは新緑を思い出させるくらい美しい。

 風を受けて先頭に立ったリザはいつもより随分と大きく見えた。


「さて、アナシス。これは私からだ」


 短剣、ダガーとでも言うのか。

 大きめの石が入ったそれをレイオンはアナシスに鞘に入れて渡した。


「あら、レイオンが私にくれるなんて珍しいこともあるのね。ありがとう、ちなみに返さないわよ」


「はは、言うと思ったよ。その何だ、お守りだとでも思ってくれ。うちの国での最上級のお守りだ」


 それをアナシスは大事そうに受け取ると、にっこり笑ってレイオンに飛びつく。


「どうした? 第二位が不安か?」


「私だって不安になることくらいあるわ。ふぅ、レイオンは胸が大きいから本当に安らぐのだけれど。……そうね、何かを背負って戦うのは本当に怖いかしら」


「そうか。それは良いことだな。何ケツには闇野がいる。安心して力尽きてこい」


「それって私が消えるってことじゃないのかしら?」


 俺はそれを見ながら、どんどんと冷静に落ち着いていく。

 慌てるなと、胸のペンダントがそう俺に言っている気がする。

 アルもこの戦いを見ているのだろうか。

 俺はこの世界で一番仲間に恵まれてるな。

 そして、開始のファンファーレがなった。


「さぁ、行こうか」


 先頭のリザの肩をゆっくり押して、俺たちは闇の通路から光を浴びるために外へ向かった。




「おいおい、あれがうちの。……魔物側の戦士ってか」


 豚の獣人が手を組みながら出てくるメンバーに驚いた声を上げる。

 ざわざわと魔物側にその不安げな声が伝播していく。


「大丈夫、かよ。あれ人間じゃないのか?」


「本当だ。ありゃ魔王なんかじゃねぇって! 人間だぞ!」


 それは誰かが声を出せば出すだけ大きく、そして辺りの雰囲気を変えていく。


「人側は分かる。ありゃ勇者とその一行だろうが。それじゃあ、あいつらは」


 不安に揺れる会場を見るかぎり、どうやら俺たちはあまり歓迎されていないらしいな。

 地を踏みしめるように歩きながら俺はそんな感想抱いた。



「静かに!!!」


 そんな中、第一王女は高らかに声を発する。

 静まる全体と、まだ微かにざわつきを残した会場。


「さて開幕と行こうか」


 第一王女側で先頭だった勇者ハイシュバルが、羽織を脱いで髪を掻き上げる。

 その隣に並んで俺たちを見つめる道化の仮面。

 そして錠を外されて虚ろな目の屈強な男が俺たちの前に立つ。


「一番手前へ」


 そう第一王女が言うと屈強な男は更に一歩前へ。

 そしてこちらからはリザが弓を手に持ち一歩前へ。


「二番手、三番手は後ろへ。では、ここに聖戦を開始する!」


 開幕は告げられた。

少し更新が空いてしまい本当に申し訳ありません。


そして少し読みにくいかもしれませんが、三人称を混ぜています。

読みにくいとは思いますが、何卒宜しくお願い致します。

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