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八話 直前

「忘れるな。やばかったら引き返せよ!」


 俺は念を押す。

 これからカレンは相手を探る仕事に出る。

 これは遊びでも何でもない、勝つための大事な仕事だ。


「分かってるから。エクシスもいるし何かあったら爆破魔法と付与してもらって帰ってくるわよ」


「世界様は私の事を子供が何かだと思ってませんか? こう見えて本職は多分、サポートです」


「オロオロするな闇野。娘を嫁に出すわけではないのだぞ」


 いやオロオロするって。

 必要な事といえども超心配だぞ。

 あー落ち着かねえ!


「さて、一応遠見の結晶をあなた達に合わせてあるから何かあったら私がすぐに飛んでいくわ。世界君の顔がやばいし、しっかりね」


 ここに来てストーカーアイテムの遠見の結晶が役に立つ。

 城内くらいの範囲であればアナシスの空間転移は使える。

 安全はバッチリだが……。


「気配遮断使うわよ。エクシスにもこれは使えるし、制限時間は一時間もある。充分ね」


「ええ、一時間あればケツの毛まで毟り取れますよ」


 ブン、と音を立て目の前にいたカレンを見失いエクシスも見失った。


「神の加護を、お二人に」


 ナイラ様はそう言って手を合わせて祈る。

 俺も真似しようかな。




「さて、俺たちは本格的に最後の一人を選ぼう。聖戦まであと二日だ」


 方法は例に倣って三対三の勝ち抜き。

 俺としては一番最初に行きたかったが、リザがそれを許さなかった。


「私が遠距離、世界さんが超近距離と後はアナシスさんかレイオンさんですね。私としてはまだ完全に手の内が分かっていないアナシスさんが良いとは思いますが」


 アナシスはずっと旅をしてきた。

 そしてレイオンは魔物組合と行動を共にしたことがある。

 一長一短だな……。


「今回はアナシスに譲ろう。私が出て手の内がバレていると少し厄介だ。勝ち抜きである以上は身内にも全容が分からないアナシスの方が良いだろう」


「あら、冷静ね。承知したわ。で、世界君! ちょっと本気出しても良いのかしら?」


「本気出してくれないと困るんだが。でもまぁ、これで決まりだな。後は順番か」


 二番を俺にすべきか、アナシスにするべきか。


「私が二番で良いかしら。世界君の能力だと連戦は厳しいわ」


「精神的になぁ。分かった、リザが一番で二番にアナシス。最後に俺が行く」


 リザの弓はまだおおっぴらになっている訳ではない。

 油断すれば黒竜を葬ったときのように一撃で散ってくれる。

 そしてアナシスもまだ未知数だ。

 塔の時もまだ本気を出しているとは思えない。


「御三方……! よろしくお願いします。あなた達に私の命を賭けます」


 覚悟とはこういう事なんだと改めて思った。

 命を賭ける、口にすれば簡単だがことナイラ様に至ってはそれが冗談ではすまない。

 割と狂った制度だが、それ故に本気にならざる得ないのか。


「ふぃー。たっだいまー!」


 出発してから二十分ぐらいだろうか。

 カレンとエクシスが早々に帰って来た。

 その顔はやり遂げた顔をしており、成果は上々だったのだろう。


「世界様、相手が分かりました。不屈王、色、そして勇者です」


「あの馬鹿姫、堂々と不屈王と色を魔物組合からこちらへ向かわせてるって家臣にゲロってたわよ。もーびっくりよね」


 油断か怠慢か。

 もしこれが分かっていなければ直前まで爆発的なアドバンテージだっただろう。

 不屈王、これは調べれば分かるが色に関しては不明だ。

 赤みたいに変てこな奴もいれば、黒のように殺意しかないサイコ野郎もいる。


「うっし。とりあえずカレンとエクシスはこれから町で不屈王とハイシュバルについて聞いてきてくれ」


「でしたらマモンに着いてきて貰えるように先に鷹を飛ばしておきます。お二方はもう少し大変だと思いますが、よろしくお願いします」


 俺たちが来たと姫に伝えたのは鷹だったのか。

 随分と有能で便利な鷹だな。


「姫様に言われちゃね。あっ! そうだ、鷹を追われると面倒だから気配遮断を使っておくわ。二人も二人と一匹も変わらないでしょう。城を出るまでだしね。それくらいならコントロール出来るわ」


「そうですね! では、カレン様、エクシス様はこちらに」




「しかし、カレンは本格的にアサシンっぽくなってきたなー 」


 俺は出て行ったカレンにそんな感想を抱いた。


「あれはかなりの才能だぞ。あそこまで気配遮断や加速を使いこなす者を私は見た事がない」


 レイオンはそうカレンを評価した。

 それに関しては意義はない。

 気配感知なども誰よりも早いし、その範囲も広いのは塔でも確認したしな。


「エクシスさんの魔法も付与によって威力を強めてますね。数も多いですし、威力アップや防御ダウンさせたり出来るようになったらしいです」


「あれも才能ね。けれど、リザちゃんも引けを取らないわ。弓の破壊力は本当に凄いのだから」


 着々と準備が整っていく。

 俺は完全に他人任せな能力なので、その会話に混ざれないのが悔しいが仲間が強くなるのは素直に喜ぶべきだ。


「世界さん。我儘を言ってしまいごめんなさい」


 リザが申し訳なさそうに俺を見つめる。


「謝んなよ、俺がリザに頼んだんだから。信用してるけど無茶はすんな。それは俺の専売特許だぞ」


「そうだぞ。この聖戦は降伏すればそれで一戦は終わるのだから。後ろにはアナシスと闇野がいるんだ、無茶だけは避けてくれ」


「頑張ります! 絶対に、負けませんから」




「ハイシュバルはどうやら魔の槍を持ってるみたい。貫けば何か起きる系の。んで、不屈王はあんまり分からなかったけど、世界系の能力ね」


 こいつ、だいぶ説明を端折りやがったな。

 いやハイシュバルの得物が分かっただけで良かったとしよう。

 『魔槍』、俺の知ってる知識で言えば貫けば爆発するとか呪いをぶちまけるとかがあるけど、これは恐らく呪いをぶちまける系か。


「これマモンさんから聖戦に出るメンバーにって、頂きました」


「そうそう。出るメンバーの話をしてそれぞれに合った薬だそうよ。戦いの前に飲んでくれって」


 緑の液体の入った小瓶が三つ。

 そこにはテープのような物でリザへ、闇野世界へ、アナシスへと書かれていた。

 明らかに俺だけ色が汚いけど、それは特別なだと思っておこう。


 さぁ、いよいよだ。

 世界を揺るがす様な大事件を起こしてやる。

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