四話 王女の願い
「この私、第二王女であるナイラ・アナの騎士となってください。そして貴方のお仲間とそのお力を貸して欲しいのです!」
「騎士です、か?」
世界一似合わない自信がある。
何せ俺は随分と不恰好な魔王なのだ。
魔法どころか槍一つ上手く扱えない。
俺はその意味を考えた上で首を振って、それを拒否した。
「なぜですか! ……お願いします」
「……理由を聞いてもいいですか」
それを聞かなければ話にならない。
どうしてわざわざ俺を騎士にしないといけないのか。
自分で言うのも何だが、俺は悪い意味で拡散された。
今じゃ魔物組合に狙われ、謀反者としてその扱いを受けている。
「私の義理の姉。現代一王女は魔物組合の力と何人かの勇者の力を盾にして、この国を支配するつもりです」
王女は波に打ち消されてしまいそうな小さな声でそう言った。
「闇野世界。この話を受けるべきなの」
「待ってくれよマモン! いくらなんでもそれは無理があるぞ。願いを聞きたいのはこっちとしても間違いないけど、俺は完全に罪人扱いだ。そもそも俺の仲間を見ただろ。特にレイオンとアナシスは魔王だし。俺と居る時点で、もう完全に共犯だ。隣の五位みたいに、魔力封印の牢に入れられるのとは訳が違う。俺たちはいつ殺されてもおかしくないんだぞ!」
焦っているのか、早口になりながらそう説明する。
……そうだ。
俺の言っていることは間違っていない。
不用意に注意を引くような、そんな下策は避けるべきであって決して引き受ける必要はない。
けれど、どうしてだろうか。
目の前にいる王女の泣き出しそうな顔を見ると、俺のその選択が本当に正しいとは思えなくなる。
「分かってるの! けれど、もうこの国には時間がないの!」
「もう対抗できるのは闇野様たちしかいないのです! 父を、そしてこの国をどうか……!」
そう言った王女はもう必死で。
零れ落ちる涙を拭こうともせずに、懸命に俺に向かって頭を下げる。
皮肉な話だ。
見つからずの魔王がいつの間にか、自ら注目を浴びる選択を考え始めている。
けれど、やはり安易にそれを引き受けられない。
俺を信じて付いてきている仲間たちを危険に巻き込む意味なんてあるのか。
足りない脳みそを全回転させて、必死に自問を繰り返す。
「ほう、闇野が尻込みとはこの国の王女は相当じゃじゃ馬らしいな」
笑いながらレイオンが客間から現れる。
「ですね。うちの世界様をここまで困らすとは。感服します。まぁ構いませんよ、私は」
「世界君のやりたいように。私はその覚悟でここに居るのだけれど?」
エクシスもアナシスも、まるで尻込みする俺を後押しするようで。
「私は仲間が行くならそこへ行く。それが全てで、私の全部よ。世界! 躊躇う必要は何一つないわ」
「です! そもそもですよ、この世界をぶっ壊すんですよね? ならばそれをみんなに知らせる絶好の機会です。隠れるのはもう飽きました。というより、もうここまで来るとそれも無理な話ですから」
カレンは俺の背を叩き、リザは優しく微笑みながら俺を押す。
……クソッ、めちゃくちゃ支えられてる。
こいつら何でこんな俺を信じてくれてんだよ。
仲間を傘に、少し怯んだ自分が情けなくて申し訳なくて。
俺は膝に力を入れて、王女を見る。
「その話、受けます」
「ありがとうございます! ありがとうございます!」
「闇野世界、良い判断なの」
俺たちは初めて正面から魔物組合とぶつかる事になった。




