二話 アン王国にて
「いやあ、これがアン王国! 割とこじんまりしてるな」
「町もここと後二つくらいしかないぞ。……そうだ、闇野はまた迷子になってくれるなよ。今回はアナシスが居るが、見つからずの魔王なだけあって探すのは大変だからな」
レイオンが俺の右手を握った。
いや、母ちゃんかよ。
それに、え、今ちょっと煽った? やっぱり見つからずの魔王(笑)って二つ名としては最悪のネーミングだわ。
「俺も子供じゃないんだから。おうおう、エクシスまでどうした」
「世界様はすぐに居なくなるので。これくらいが丁度いいです」
大人の俺が女の子二人の真ん中とは、気恥ずかしいな。
カレンの手は剣を握ってるからか少し皮が固いが根本的に女の子の手だ。
逆にエクシスの手は小さくてぷにぷにしてる。
子供っぽさがあり可愛らしい。
「むう、先に取られたのだけれど!」
「私もです。世界さんの代わりにアナシスさん! 手を繋いで下さい」
「そうね、じゃあ右手をどうぞ」
ふと後ろを振り返ると、アナシスとリザがそんなやり取りをしていた。
……リザ、その握る強さはいけない。
アナシスの手の色が変わっちゃうから。
「リザちゃん何か右手が痛いのだけれど。どれだけの力で握ってるの……かしら! 何してるの? ほら、カレンは左手を貸してあげるわ」
「あ、うん……! じゃあ遠慮なく」
照れながらカレンも手を繋ぐ。
いや、何なのこの空気。
家族で旅行してるみたいなそんな感じの空気。
「……カレン、左手も痛い、痛いのだけれど! ……そうよ。リザちゃんを真ん中にしましょう。私は魔法ばっかり使ってたから痛みに弱いの。ちょっと二人とも山ゴリラ並みの握力じゃないかしら」
「山ゴリラはやめて下さい。普通に傷付きますから」
「そうね。これでも乙女なんだから発言には気を付けてよアナシス!」
俺たちはぶらりと街を一周する。
シンプルでいわゆる城下町という感じだが、中には不思議な建物もあった。
魔物とアームレスリング? 魔物と知恵比べ?
「ここ何か変わった店が多いなー」
「ああ、アームレスリングや知恵比べなどは結構人気だぞ」
「ここも魔物と共存している国なのか? 結構さっきから見かけるからさ」
いや新しいというか、異世界なのだから当たり前というか。
「ああ、魔物と共存とか魔王の国とかはある程度固められているからな。疎らになっていたら危ないだろう?」
一理ある。
けれど、これも魔物組合の管理なのか。
そう疑いをもって見てしまうのは、大目に見て欲しい。
当たり前の話だが、知識のある魔物もいればただ暴れるだけの魔物もいる。
そういった辺りが共存の肝になるのだろう。
「実は私の故郷もこの近くなのです」
「吸血族の村か?」
「ええ、別に帰りたくはないのですが」
まるで毒薬を飲んだような顔をするエクシスに、レイオンが声をかけた。
「そうなのか。けれど、近いなら寄っておくべきじゃないか?」
「いえ、全然気にしないで下さい」
「いや、次はそこ行こう。俺は村から追い出したエクシスの一族に言いたいこともある」
折角旅をして、今は一戦力として頑張っているのだ。
こんな仲間と旅をしてる、そう報告するのも悪くないだろう。
浮いていた。
そう言ったエクシスの顔が悲しげだったのを俺は覚えている。
「ですが……! きっとみんな、私のことなんて忘れてますよ」
エクシスの気持ちは良く分かる。
それを知ってしまうのが怖い。
けれど、忘れていたら忘れていたで良いのだ。
その時は俺たちが居るのだから。
「そうかもしれないけど。会っておかないと後悔するかもしれないぞ?」
俺は父も母にも、会いたくても会えない。
その懐かしむ記憶もない。
ならば、会えるうちに行っておくのが良いだろう。
会えなくなってから後悔する事だってきっとある。
「分かり、ました。この国を越えた山、そこに私の村はあるのです。世界様、ちゃんと付いてきてくださいね?」
「みんなちゃんと付いて行くから心配すんな」
「あぁ大丈夫だ。私たちも側にいる」
レイオンはそう言って、俺から手を放してエクシスをゆっくり撫でた。
「ちょっと! リザ食べ過ぎでしょ!」
「えー? それを言うならアナシスさんの方が齧りすぎです!」
「ま、待ってくれるかしら。私は口が大きいから仕方ないのだけれど?」
後ろを振り返ると、今度はアイスの買い食いで揉めていた。
「あ! 見てアナシス、リザ!」
カレンめ、また姑息な手を……!
俺もあの手口に何回やられた事か。
不意だからつい手の方を見ちゃうんだよなー。
ふふ、リザもアナシスも釣られるだろう。
「誰がそんな古いやり方で引っかかるのかしら」
「カレンさん、ちょっとそれはないですね」
だ、だよねー。
いや、その手口も本当は分かってたし!
引っかかってたのも全然わざとだから!
「やるわね! 世界はいつもこれに釣られるのに」
「……世界さんは根が素直ですからね」
「言い換えると単純とか間抜けとも言えるけれど」
く、悔しいが何も言い返せない。
エクシスとレイオンもそれを聞いて大きく頷いていた。
……いや、隣で頷いてんじゃねーよ。
四十部になります。いつも読んで下さる方、そして初めて読んで下さった方。
本当にありがとうございます。
出来ればこれからも読んで頂けるよう、頑張ります。




