一話 新天地へ
「たったの五万ライ? 冗談だろ! サイクロプスにぶっ潰されて五万ライが報酬だってのか!」
俺は怒りに震えていた。
骨の兵や単眼の巨人を倒した結果が五万。
そりゃ塔なら町のクエストと違ってリタイア出来るけど、一応死にかけてるんですけど。
「そう言うな闇野。重要な情報は手に入ったんだしな」
「馬鹿野郎! 誰も文句言わねーからこんな横暴がまかり通ってんだ」
発想は完全にクレーマー。
一度冷静なろう。
モンスター塔クレーマーになってしまう。
「分かった。諦めるよ。……で、そのメイスナイ王国ってどれくらい遠いんだ?」
「そうね、ここから隣のアン王国を越えて山を越えればメイスナイよ」
山はあるが、どうやらそこまで遠くは無いらしい。
これが世界の裏側とかだったら、本気で泣いてたかもしれない。
「そうだ、アン王国に少し寄っても良いか?」
思い出したようにレイオンが俺たちに提案する。
「良いけど。何か用とかあるのか?」
「いや古い知人がいてな。しばらく会っていないから少し様子を見たいのだ」
「分かった。とりあえず今日はもう遅いし、明日出発しよう。それで良いか?」
この国にはアルがいる。
それだけで少し安心してしまうのは、俺の甘い所だ。
五位の事が気にはなるが、今は少しでも早くメイスナイに行くべきだろう。
そこに着けば、否が応でもどうなっているのか分かる。
「そうそう、世界さん。先ほど五位が牢に入れられているのが分かったらしいです」
リザが落ちている紙を拾い俺にそう言った。
「丁度それを考えてた所だ。そうか、殺されてはないんだな」
俺も紙に目を通して、流し読みする。
なになに、謀反の疑いで罰されているらしい、か。
……それを言ったら俺もレイオンもアナシスも全員処刑だな。
魔物組合も焦っているのか、そこには大した情報もないのに五位を捕まえた事に対しての批判が書かれていた。
『不屈王アランドの拘束に異議を申し立てる』
「……不屈王、か」
俺たちは貰ったなけなしの五万ライで、次の旅の用意を整えた。
「ではアン王国に向けて出発だ」
あー、久々にケルベロスに乗るなぁ。
時折リザやレイオン、メンバーで様子を見に行くと、嬉しそうにぶんぶんと尻尾を振るっていたのが可愛らしかった。
「……なぁ、アナシスのあの翼竜なんとかならねーかな」
魔獣の預所は随分大きい。
その中でもケルベロスや魔獅子のグレッチェンは大きい方だったが、その隣に隔離されていた翼竜は少し気にかかっていたのだ。
それがまさかアナシスの竜だったなんて思いもしなかった。
「サリー、なかなか会いに行けなくてごめんなさいね。私が行くとあなた暴れてしまうから……」
灰色の竜はアナシスに撫でられるとぶんぶんと尾を振るう。
その度に土や石が飛び散る。
というか、翼竜にサリーっておかしいよな。
「俺なら、ファイヤーブレイブアルティメットドラゴンとかにするけどな」
おい、超かっこいい名前だろ。
そんな残念そうな目で俺を見るな。
「センスがない。それに尽きますね」
……分かってる、俺だって分かってるよ!
「改めて、アン王国へ」
レイオンの一言で、俺たちは旅路についた。




