十六話 そしてダンジョンの終わり
「あー、タネもバレちゃいましたしー。別に今日は任務でも何でもないんで。それになんか凄く疲れたので私は帰ります」
「おい、ふざけんな! これじゃあ俺が損しただけだろうが! 俺を殺すだのなんだと言っといてこの体たらく。ねぇ、恥ずかしくないの? 疲労したから帰るとか己を恥じろ!」
帰ろうとする赤に俺は怒号を飛ばす。
このままで終わってたまるか!
「あー、分かりました。もう分かりましたよー。なら一つだけ質問に答えますから」
「何でもか?」
「……やらしい質問以外なら」
いや、そんなやらしい質問が飛んでくる前提で話すのやめてもらえます?
さっきは自分からしてたじゃん。
何なのこいつ、いきなり帰るとか自由すぎてついていけない。
『色』って暗殺だか、殺戮のプロなんだろ?
ちゃんとやれよ、給料貰ってんだろうが!
「俺がこいつに質問する。おっぱい議論してたお前たちがこいつ質問する権利はない。いいな?」
きっと今の俺は鬼をも凌駕する顔をしてるだろう。
ぐるりと一人一人、顔を見つめる。
全員下を向き、俺と目を合わせないように視線を外していた。
一応やらかした自覚はあるらしく、申し訳なさそうに手を後ろに回す。
「なら、お前たちの上はどこにいる」
「答えられま」
「答えられないなら、真剣にお前の胸で俺たちの服を洗濯する。……本気だぞ、一切の妥協はない」
赤はヒッと小さく怯えた声を出した。
きっとそのシーンを想像したのだろう、半ば虚ろな目をしながら俺にボソリと答えた。
「いや、守秘義務とか別にないから良いんですけど、その野獣の眼光やめて下さいー。何だか興奮します」
「うるせえ、さっさと答えろ」
ブルブルと小刻みに震える。
興奮とか言っているが、本当は怖くて仕方ないのだろう。
足は揺れ、手は忙しなく動き続けていた。
「……いいですね旦那。もっと強めに罵って下さい!」
とんでもねぇ変態だな、おい。
あぁ……パトラッシュ、僕もう疲れたよ。
だってこんなに必死で情報を引き出そうとしてるのに、こいつ全然意に介してないんだもの。
「おっと、すいません。……ここから離れたメイスナイ王国、そこに行けば何か分かるかもしれません。私は色の末端なんで詳しくは知らないですけどー。……じゃ、本当に次会う時は敵ですね。でも、あんまり旦那たち殺したくないかなあ」
そう言ってクールに去ろうとする。
「おい、お前の足の下!」
「え? きゃあああああッ!」
ありゃ、アルの穴だな。
聞きたい事があるのか、それとも仲間に加えるつもりなのか。
とりあえず、そう遠くない内にまた会う気がする。
そうして敵意のない敵は、移動穴に落下して行った。
「で、お前らは俺の言葉を聞かずに無視したあげく。さらに意味の分からない議論を始めて迷惑かけたんだけど?」
「つい悪ノリしました。すいませんでした」
「えー、私は真剣だったのだけれど。けど、世界君怒ってるし。……ごめんなさいでした」
「世界が悪……じゃなかった。調子乗りました、ごめんなさい」
ぺこりと謝るレイオンとアナシス。
カレンは確実に俺が悪いって言おうとしたな……。
が、ここまではまだ良い。
俺だって情報を引き出せたし、素直に許そう。
「リザ、世界様の真似をもう一度お願いします」
「えー! ゴホンッ……安物買いの銭失い、ってね!」
「エクシス、リザ……。お前らは何やってるんだよ!」
ゴチンゴチン、ゲンコツを頭に食らわせる。
エクシスとリザは謝るどころか、俺の真似をして遊んでいた。
「痛ーい! 私はエクシスさんにやれって言われただけです。信じて下さい、世界さん!」
「なっ、裏切りなんてずるいですよ。リザだってノリノリだったじゃないですか! ねぇ、世界様も見ましたよね?」
こりゃやっぱり今回は巨乳党に一票だな。
今回のダンジョンのおかげで、次の指針が立った。
目指すはメイスナイ王国。
貴重な経験だったが、もう塔遊びはしばらく遠慮しておこう。
『大変お待たせしました。野闇様、クエストリタイアの準備が整いましたので扉に入って下さい』
こうして俺たちは初めてのダンジョンを終えた。




