十五話 巨乳党VS貧乳党
さて、これはどうすべきか。
リザの弓も、エクシスの爆破魔法や付与もすべて躱されているこの状況。
「まだ続けますー?」
赤は甘えた声で俺に尋ねる。
続けるも何も当たらなければ、話にならない。
能力が何かそれさえ分かれば対策は出来るが、なかなか尻尾がつかめない。
まさに暖簾に腕押し。
時折アナシスも時を止めてみたが、一瞬こそ動きは止まるが同じく攻撃は当たらなかった。
ふぅ、まずは冷静に考えろ。
がむしゃらに突撃しても、俺の攻撃なんて蚊のそれに等しい。
「……いや、丁寧にぜんぶ避けてるってことは、受けたり出来ない。つまり、攻撃に当たったらいけない理由でもあるのか」
ここで分かるのは、絶対回避などの能力であるか、それとも装飾品にスキルをつけているか。
前者であれば強いが、それなら時魔法を受けた時に僅かでも動きを止めれるはずがない。
まず、魔法が当たらないからだ。
「なら、装飾品とかに加護や恩恵を……?」
攻撃を与えないといけない。
そこに気を取られて、俺は一切の汚れがない赤い頭巾にようやく気付いた。
ブーツは土で汚れて、膝を擦ったらしくスカートも茶色くなっている。
「……ってことは! おい赤ずきん、お前今すぐ服脱げ!」
「なっ! 頭がおかしくなったのか闇野!」
レイオンは構えた剣を鞘に入れて俺にツッコむ。
いや、別に頭はおかしくなってねーよ。
むしろこれは元々だよ。
「世界さん不潔です、最低です! で、でも! あ、あの私なら……。少しだけ、少しだけですから!」
リザあああああ!!
そのスカートに手をかけるのをやめなさい!
前に占い師に言われたスケベだってやつ、もしかしたら本気で当たってるかもしれないな……。
「ちょ、世界! 戦ってる最中に、相手の服の下が見たいわけ? あんた欲望に忠実すぎるのよ! 馬鹿じゃないの!」
「全くです。もしかしたら、敵は世界様かもしれません。こんな幼げな少女に服を脱げ? しかも敵に要求ですか。さすがにそれは鬼畜を通り越して変態です」
待て、誰も話聞いてくれないんだが!
俺が穴に落ちた時は、めっちゃ心配してくれてたじゃん。
何これ、俺が敵の前でもスケベなこと考えてるみたいに言うのやめて?
「みんな、待って! 私は世界君の言ってることが分かるわ。負けを認めるなら服を脱げ。そう赤に通告しているのね。けれど、それは私にお願いすべきであって敵に願う必要はないのだけれど。あんな洗濯板みたいな胸に世界君は性的欲求なんて湧くはずないもの!」
なぁに勝手に人のフェチの話をしてるんですか。
俺の事を遠見の結晶で勝手に見たくせに、あまつさえそれをバラされるなんて最低の人間じゃないですかー!
……いやね、ここの世界にも巨乳の女の子が載ってる本があるんですよ。
念写っていう神技術で!
いやー異世界も現界もエロは共通ですね!
巨乳セレクトさん、いつもありがとうございます!
「あ? なんかー、聞き捨てならないんですけどー。もしかして? 巨乳が偉いとかそんな風に思っちゃってます? アナシス・マジクがそんな歳いったら垂れ下がるような脂肪の塊で優越感に浸ってたりしないっすよねー」
え、カチンとくる所ってそっちなのか?
今争うべき所ってその乳の話なの?
違う、その話になると確実に脱線してるんだけど!
「は? おっぱいは大きい方がいい。当たり前のことなのだけれど。レイオンもそう思うでしょう?」
「まぁ、闇野もこっちの方が良いと言っているみたいだしな。残念ながら実例が既にあるのだよ」
これ、シリアスな場面だったはずだよね。
俺抜きで戦いが始まりそうなんですけど。
おい、レイオン。
勝ち誇った顔して胸強調するな。
「ちょっと待って下さい。おかしくないですか?」
よし! それで良い。
それで良いんだ、エクシス!
この流れを止めて、その赤い服に何かスキルがかかってるって言え!
「そもそも世界様は、常に私の胸元を見てるんですけど?」
B・A・K・Aなの?
俺が冷静にツッコんでる時点で俺より酷いからね君たち。
おっぱいの話はもう良いよ、やめてよ。
しかも、さらっと俺に罪擦り付けるとかタチ悪すぎだろ!
「ストーップ。巨乳党の私から言わせてもらえばもう世界なんてどうでも良いわ。こういう言葉知ってるかしら。質より量、ないよりある方が良い……ってね!」
巨乳党って何だよ。
そんな政党があれば即座に票入れるわ!
じゃなくて! 何で巨乳党の人は勝ち誇った顔でいちいち胸強調するのだろうか。
今はその話し終わろうよ!
それが目的じゃないから、ね?
「カレンさん知っていますか? 安物買いの銭失いって、ね!」
もういったい何を口走ってるのかな、このエルフっ子!
もしかして信じたくないけど、それって俺の真似なのか?
そんな濁った声してるのか、俺って……。
そして構図は完全に巨乳党はアナシス、カレン、レイオン。
貧乳党は赤、エクシス、リザになっていた。
……もう俺帰っていいか、巻き込まれて爆撃浴びるの嫌だし。
「で、興味はないけど本当はどっちが好きなの? たまに風呂上がりにやらしい視線を感じることもあったけど、それも私の魅力かなって思って言わなかったわ。まぁ、世界も巨乳の方が良いわよね?」
「お前それただの暴露じゃねーか! っていうか、そんなデリケートな話を俺に振るなよ! ほら、今からでも普通に戦おう? な? 折角発見した赤の弱点の話を潰してやる事じゃねぇよ……!」
「それはいけないわ。世界君には答える義務があるのよ。パーティリーダーとして、ね」
こんな時だけパーティリーダーとか言いやがって。
そもそもな、こういうのはきっと男同士でするのが楽しいんだぞ。
何でどっちに転んでも火傷しそうな展開になってんだ!
「敵ですが、あなたの目に狂いなさそうですしー。信じてますから」
「いや、敵をそんな簡単に信じるなよ!」
どうしても結論を出さないといけないのか。
そもそもどうしてこんな事になったのか、俺はそれを考えるのをお終いにした。
「あああああ! もう! じゃあ、言うぞ」
世界がスローになる。
俺の声を待って、全員が祈るような瞳をしながら手を合わせた。
早鐘を打つおれの心臓、手からは汗を噴き出して落ち着かない。
「俺は! 俺は一番足が好きなんだあああ!!」
俺はありったけの力で叫んだ。
これでこんな醜い争いが終わるなら、俺は自分の身を粉にしよう。
「いや、論点はそこじゃないわ。今の話は乳よ、おっぱいなの」
「ああ、私もそこに同意だ。闇野、逃げるな立ち向かえ!」
「……もう、やだ」
俺は自爆しただけで、ふと気付けば議論は終えていた。
性癖を自爆した魔王、世界に何人いるのだろうか。
俺は自身を呪いながら、この戦いに終止符が打たれた喜びを噛み締めた。




