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九話 骸骨兵と魔法

「草原? なんだこりゃ」


 暗かったはずの部屋に陽が入り、外へ出る。

 部屋はもう戻れないようにする為か、バタンと音を立てながら自動で閉まった。


「何もない、ですね」


 リザの声が空に散る。

 見渡す限り、一面の緑。

 これが最難関、なのだろうか。


「魔力反応はないわね」


 カレンがスキルを発動しながらそう囁いた。

 途端、つけ毛を外し臨戦態勢になる。


「おい、どうした?」


「死者ならそりゃ魔力なんて感じないはずよ! 世界右見て! 右、右いいいい!!」


 指示に従って右を見る。

 ……骸、骸骨とでもいうべきか。

 剣と盾持つ骸骨兵が、うじゃうじゃと、虫のようにわらわらと進行してくる。

 軍じゃねーか、あれ!


「ほう、一面の最初からやってくれる。よし陽はあるな。……咆えろ、アークライト!!」


 楽しげに、軽やかにレイオンは剣を抜く。

 何でちょっと楽しそうなんですかね。

 それにしてもあんな数の骸骨を見たのは、生まれて初めてだ。

 いや、初めてでなければおかしいのだが。


「えーい!!」


 地下道に響くような、けたたましい爆裂音。

 初弾はやはり、リザだった。

 放たれた矢は、一面を爆散させて散り散りにする。

 ガラガラと骨が無作為に崩れる音がした。


「……金色爆発!」


 続けざまに、道を開けるようにエクシスが魔法を放つ。

 リザとエクシスは遠距離から確実にその骨の兵を削り取っていた。

 ……容赦ないですね、お二人。


「闇野、カレン! 前に出るぞ、進め!!」


 好機と見たのか、綺麗に列を成していた骨が崩れるとレイオンは先頭に立ち駆け出した。

 獅子女王は、その光り輝く剣で最初に進行してきた骨の兵を、一振りで崩し更に進もうとする。


「はい、それ以上は進行しないで欲しいのだけれど」


 アナシスは後ろでそう呟くと、手を振るった。

 ゴッゴッと耳に残る不快な音を立てながらケーキを切るように空間を切り断つ。

 ブレーキをかけたように、その場で走る足を止めて俺たちはアナシスを確認する為に振り返る。


「アナシスめ、やってくれる!」


「な、なんじゃありゃ……!」


「地面が、浮いて……」


 ぷかぷかと宙に浮かぶ、地の塊。

 アナシスが魔法を行使した部分全てが綺麗に無くなっている。

 奈落へと引き込まれるように落下する骸の群れはまさに地獄に落ちていく様だった。


「世界君。今回は私とリザちゃんとエクシスちゃんであれ全て狩りとるわ。そこに立っていて下さるかしら」


 アナシスはそう言うと、パチリと指を振るった。

 指揮者のように指を動かすと、信じられないくらいの氷弾が空間から姿を見せる。

 一つ一つが、人より大きい。

 それが、軽く見積もっても三十はある。


「では、私が放った後は宜しくね」


 ウィンクしながら、そうリザとエクシスに甘えた声で言った。


 ーー氷の隕石による砕ける快音、もう骸骨兵に列などない。

 残ってる兵は無感情にただ前進を繰り返そうとするが、山となった骨や、地の裂け目に右往左往する。

 ぶつかり砕けた氷の粒は陽を浴びて光を反射し、それが雪のように見えた。


「ではリザ。残兵に向けてあれ、いきますよ!」


「はい、お願いします!」


 リザの弓にに、何やら魔法をかけるエクシス。

 それは一瞬で終わり、リゼが矢を番えてそれ放つ。


「付与(ギブ)による、魔界の弓です!!」


 レーザービーム、破壊光線。

 その一言に尽きる。

 地を捲り上げ、草を塵に変えながら、黒の閃光は残り兵を滅する為に強烈な速さで疾走する。

 流星、黒い流星は着弾すると残る敗兵を全て粉に変えた。


「……な、なにあれ」


 カレンがそう俺に聞く。


「いや、俺が聞きてえよ!」


 氷の隕石と、黒の流星によって五百は居たであろう骸骨兵を姿を消した。

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