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七話 カレン先生の伝説学

「五位が、か。それはまた随分と都合がいいな」


 レイオン達に事の顛末を告げ、俺たちはどうするかを話し合っていた。


「結論としては、今の五位を消して新しい五位を就任させる。……けど、そこまでするだろうか?」


「何らかの私たち以外の違う要因があったと考えても良いかもしれないわ。アナシスさんはどう思う?」


 夜更け、リザとエクシスは先に眠った。

 どうやら長距離の移動に疲れていたらしい。

 宿はフレイヤ国からの計らいで、多少広い所にさせてもらっているが、ベッドが五つしかない為どうやら俺が地べたのようだ。

 まだ起きているのが俺とレイオンとアナシスとカレン。

 小料理をつまみつつ、俺たちは話を進める。


「うーん。五位は正義感も強いと聞いたの。元々疎ましく思っていたっていうのは充分あり得る話かしら。それと集団になられる危険の回避。こうして魔王だったり、力を持つものが集まるのを極端に嫌うのよね。魔物組合(あいつら)は」


 アナシスは椅子に三角座りをしながら、カレンに答えた。


「思ったんだけど、魔物組合って何が権力を握ってるんだ? そこが結局よく分からないんだよなぁ」


 色々と話を聞いても浮び上らないその情報。

 ここまでになると、相当徹底している。

 相手が全く見えないし分からないので、まるでアイマスクをしながら道を歩いてるみたいだ。


「私も魔王になって長いのだけれど。それに関しては聞いた記憶がないわ。もちろん、遠見の結晶で見ようとしたことがあるけれど。……ダメね、魔力封印が邪魔して内部どころか、本拠地まで分からないのよ」


「レイオンは? 何か聞いた記憶ないの?」


 カレンがレイオンに尋ねる。

 レイオンも魔王になって長いらしいので、何か知っていればと思ったのだが力なく首を横に振った。


「残念ながら。……いつも何か連絡があるときは一般人を遣わせるし、私も本部の場所すら分からないな。……支部のような所なら知っているが、数が多いし意味も無いだろう」


「敵未だ見えず、か」


 俺がそう言いながら、チーズに手を伸ばす。

 もう少しこの国に居るべきだろうな。

 今は手がかりが何よりも欲しい。

 アナシスのおかげで戦力という意味では拡大したが、やはり情報がないのはあまりに痛かった。


「そう言えばアナシスのモデルは何なの? 教えて!」


 出たな、伝承オタク。

 カレンは以前レイオンの能力のモデルについて熱く語る機会があった。

 どうやら英雄譚や伝承、伝説などを好むらしく今日も買い物で英雄譚を買ってきていた。


「えーと、確かエイアとかだったかしら? もう随分全力は出してないのだけれど」


 エイア? 分からないんでカレンさんお願いします。


「まさか……エイアって、あの時空間の幻想王の……? あっ、世界は知らないだろうから教えておくわ。エイアっていうのは時と空間を司る伝説の大魔導士よ。ひとたび魔法を使えば空間を切り取り、時を逆行させたり、進行させたり、止めたり出来るの。その昔、エイアが出た戦いでは敵軍の時間を書き換えて兵を全て骨にしたと言われているわ。それだけじゃなくてね! 火、水、土、風、黒魔法、白魔法。ありとあらゆる魔法においてこの先どんな魔法使いでも勝てないと言われるくらい、魔法に長けているのよ。ちなみに今も生きてると言われてるわ」


 いっきに肺の空気を吐き出したのか、レイカはぜぇぜぇと息を荒げた。

 いや、単純に尊敬する。

 ここまで詳しくなるのにどれくらい本を読んだのだろう。

 カレン先生、今日も説明ありがとうございました。

 おかげでアナシスが今日使った時間魔法も納得しました。


「カレンは凄いのね。私の元になったモデルだけれど、正直私より詳しいわよ」


 アナシスはその早口に圧倒され、驚いていた。

 レイオンのモデルであるガランダームだかガンダームだかの時も凄かったもんな。


「それほどでもあるわ!! ねぇ、世界のモデルとか知ってたりしない?」


「ダメージに関する能力のモデル……いえ分からないわ、ごめんなさいね。そうそう、それを結晶で見ていたけれど、なかなか癖の強い能力よね。私は相当強い能力だと思うのだけれど」


 攻撃もそうだけど治癒もできるしなきゃ。

 ……痛いけどね。

 もう泣くくらい痛いけどね!

 強いて言うなら、ダメージを受け渡すだけじゃなくて傷も塞がるのが凄いと思う。

 出血とかになると血までは補給出来ないのが少しネックだが。

 悲しいかな、少しずつ痛みにも慣れてきているところが怖さでもある。

 きっとそのうち俺はゾンビにでもなるんだろうな……。


「発動が少し不憫だが、鎧にかかる防御魔法なども無視できるのは利点だな。悔しいが、私もダメージを受けたし。何より左手のダメージ変換はかなり応用も利くだろう」


 レイオンがうんうんと俺の手を見ながら頷く。


「少しじゃねーよ! 凄い不憫だよ! 俺もレイオンみたいにカッコいい剣が欲しかったし、アナシスみたいに時空間魔法使いたかったぞ!」


 本音も本音。

 けれど最近ダメージ変換とかも覚えたので、以前ほど辛くはない。

 秒数制限がわりとシビアで発動条件もクソだが、それなりに満足はしている。

 ……俺は完全に気付いたからな。

 発動の時は必ず爆風が起きる。

 という事は、スカートを捲れる!

 それも合法的に、だ!


「世界君今邪な顔してたのだけれど。何を考えていたのかしら」


 や、やだなー!

 何にも考えてないっすよー!

 ……とは言え無い物ねだりをしても仕方ないので、適当に理由をつけて俺の能力は凄いとそう思うことにしてる。

 じゃなきゃ、やってらんねーよ……。



「コホンっ……! とりあえず。しばらくはこのアルミナレで情報を集める。これで行こう」


 乾燥の国アルミナレで、俺たちはしばらく行動する。

 敵の動きを探る、単純に思えてなかなか難しい話だった。

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