六話 五位の行方と凍てつく波動
「まぁ間違いなく魔物組合が一枚噛んでると思うの」
空になったカップを見つめながらアナシスはそう言った。
五位の行方が分からないのはそんなにありえない事なのだろうか。
前七位の魔王は、城にずっと引きこもってたしそうおかしくはないように感じる。
「なぁ失踪するって良くあるのか? ほら、魔王が嫌になって逃げるとか」
「無理ね。私や特殊な能力の引き継ぎをした世界君ならまだしも、普通の魔王ならありえないのよ。だって、……魔王は魔物組合が選ぶのだから」
思わずゾッとする。
そこまでして、世を整えたいのか。
「四位なんて、世界君と出会ってなかったら死ぬまで使い潰されてたのではないかしら。あれはもう、ある意味呪いね。誰かが気付かせなければ一生回り続けるコマと一緒」
くるくると指をコマのように回すアナシス。
「……なら五位は」
「失踪なんて言ったけれど、恐らく既に消されてるか。それとも魔力封印の牢にぶち込まれてるかのどっちかだと思うわ」
遠見の結晶でも見えないと、アナシスはふるふると首を振るう。
先手を打たれた、のか。
俺とレイオンがこう動く事も読まれていたようで、悔しくてカップを握る手に力が入る。
アナシスはそれを見て、俺の手に自分の手を添えた。
「……世界君を見てると、何かに真剣になるって悪くないって思えるから不思議ね。……さぁ、悔しがるのは終わりよ。仲間に合流して次の手を考えれば良いの。…………ねぇ、惚れた? 私に惚れた?」
アナシスは最後の一言で雰囲気を和やかにした。
おちゃらけることで、俺に気を遣ってくれたのだろう。
なら俺はーー。
「惚れてねぇよ。……アナシス、みんなに紹介する。一緒に行くぞ」
ずっと一人で旅をしてきた幻想魔女の手を握りながら、俺は外へ出た。
先に確保してくれているらしい少し広めの宿。
カレンの魔力探知というスキルを使い、辿り着く。
「はい。こちら序列二位の魔王のアナシス・マジクさんです」
遅れて到着してから俺がそうアナシスを紹介すると、カレンは手に持った大きな荷物をボロボロと落としながら、俺の顔をムニムニと引っ張る。
それ夢かどうか、確認するときのやつだよね?
何で俺の頬で確認するんだよ!
「これは、本物の幻想魔女なのか?」
「本物の魔法少女さんですね! 凄いですよエクシスさん!」
「魔法少女、かつてない興奮を覚えます!」
「やだ、四位ったら意外と大胆なのね。それは私のちゃんとした胸なのだけれど。あとアナシスと呼んでくれて良いのよ?」
アナシスは大人気だった。
女の子って魔法少女とか大好きだもんな。
レイオンはしきりにアナシスの身体に触る。
リザとエクシスは二人してきゃっきゃしていた。
……ねぇ、それよりも俺の事ちゃんと探してくれてた?
この感じ買い物続行してたよね。
食べ物とか生活用品とかめっちゃ買ってるけど、俺の分あるの?
「どうしてアナシスさんが協力してくる事に?」
エクシスがキラキラした目をしながら、アナシスに聞く。
「んー? ……私世界君が好きなの。それだけよ」
この一言で、その場がエターナルブリザードで凍てつく波動。
わいわいとしていた空気が絶対零度により凍っていく。
カレンは俺を頬を強く捻り睨みつけ、レイオンはわりと豊満なアナシスの胸を揉む手をやめた。
リザは俺の右足の脛にローキックを、エクシスは買ったらしい木の実を俺に全力で投げつける。
……この木の実、超硬いね。
「世界。何したのあんた……!」
向けられる疑惑の目。
……したんじゃなくて、されたんですけど。
主に股間とか見られたのは俺だから!
「何かした前提やめろおおと! ……それでも俺はやってないんだ!」
こうして俺たちは騒動の中、新しい仲間を迎える。
俺の疑惑を晴らすのには、しばらく時間がかかりそうだった。




