五話 策略とキメ顔
「もう探すの? もうちょっとお話ししたいわ」
アナシスは俺を見ながらそう言った。
上目遣いに、パチクリと動く目蓋。
……あざといが、嫌いじゃない!!
「良いけど。何を話したいんだ?」
「そうね、好きなタイプの女の子とかどうかしら」
……この子男のツボよくわかってらっしゃる。
勘違いさせる台詞ベスト三位に入る罪深いワードだ。
いや、『TOUSATU』されてたぐらいだから勘違いも何もないんだけどね。
「ほーん。好きなタイプ……それなら変態行為をしない子だな」
「もう、意地悪だと思うのだけれど。どちらかと言えば、そうやって生活を覗かれる世界君の方が悪いわね」
だけじゃねぇ!
堂々と服の匂い嗅がせろとか、正気の沙汰とは思えないのだけれど!
あとそれは、論点のすり替えだと思うのだけれど!
「えっ? なになに私のタイプを教えてくれって? それは! ふふ、せ・か・い・く・ん!」
ちょんと俺の鼻先を指てま突く。
あああああ、強引すぎるこの会話にちょっと喜んでしまってる俺がいる。
何この感じ、空気が甘くて吐きそうなこの感じ!
美人で仕草も台詞も超可愛いとか最高なんですけど!
こんな風にイチャイチャさせると、俺もその気にな、……うん。
やっぱりそれはならねーわ。
冷静に考えて、ずっと見られるとか恐怖しかないし。
何より股間を見られてるとか、最低だわ。
「やめろよ。俺はそんな簡単じゃないんだよ」
「いきなり渋めの声を出してかっこつけないで欲しいのだけれど。ご飯を奢るって言ったらひょこひょこ着いてくるような、そんな柔な男がそんなキリッとした表情しても無駄よ」
は? 何だこの落差。
ジェットコースターも真っ青だな、おい!
下手か? 飴と鞭の使い方が下手なのか?
その私のテクニックが決まったわ、みたいな顔やめろ。
何一つ決まってないから、むしろいきなり攻撃されて驚きのクリティカルヒットだから。
「言い過ぎだろ、訂正しろよ! 心細かったし、優しく声かけられたら誰だって着いてくはずだろうが!」
「訂正はしないわ。……ええ、私はずっとそのタイミングを狙っていたの。常に女の子に囲まれて、周りに誰かいる。そんな状況から世界君が一人になるその瞬間をね!」
ドヤ顔でとんでもないこと言ってんぞ!
完全に誘拐犯の発言だし怖い、超怖い!
着いていかないって言ったらこいつ絶対俺を誘拐してただろ!
「アナシス、もし俺が着いていかないって言ってたらどうしてた?」
「魔法で捕まえて、……じゃなかった。別の機会に頑張ることにしてたわね。まぁそれが妥当じゃないかしら」
ダウト!!
前半隠しきれてないからな。
こいつの方が俺よりずっと素直、じゃなかった。
……お馬鹿な子だったよ。
何ならお馬鹿すぎてちょっと安心しちゃったよ……!
「それより世界君はどうして私についてきたの? ご飯の為だけ?」
「いやら普通に優しくて美人だったから。……『だった』だからな?」
「美人? 私が?」
本気で俺を疑うアナシス。
別に変な事を言ったつもりは無いが、もしかしたら禁句とか、そんな台詞だったかもしれない。
「やだ世界君。……私嬉しくて、嬉しくてつい魔力が暴走しそう。下手したらここ壊しちゃうかもしれない」
もうやだこいつ。
どうやったら壊す結論になるのから、是非ともご教授お願いします。
「そうそう、大事な話を伝え忘れていたわ!」
思い出したかのように、アナシスは少し大きめな声を出した。
「まだ何かあるのか?」
「ええ、あのね世界君。五位が失踪してるらしいわ」
アナシスはそう淡々と事実を告げた。




