一話 今後の方針と向かう国
「身体は大事ないか? ……闇野、本当にありがとう。マラガが刺され死にかけている時、私は激昂し、我を忘れていた。一国の魔王として、これほど情けない事はない。けれど、お前のおかげで大事な臣下を失わずに済んだ」
そう言うと、改めてマラガさんとレイオンは深々と頭を下げた。
水汲み場で行われるような事ではないが、俺もそこで水を差すほど野暮ではない。
礼は素直に受け取った。
「気にすんな。けど俺の能力もたまには役に立つんだな。だんだんと人外じみていくのがアレだけど。……何にせよ全員無事で良かった」
「今度は私が闇野の力になれるように、必ず借りは返させてもらう」
「そういうのは無しだろ。そんなんやってたら、俺は借りを一生返せなくなるぞ」
今回もそうだ。
レイオンが、もし俺たちをこの国へ移動させてくれていなければ。
本当に宿や、そこらの道で殺されていたかもしれない。
俺はふとあの殺意を思い出し、思わず身震いした。
「あれは黒と言ってな。魔物組合の暗殺部隊『色』の一人で間違いないだろう」
名前を明かさず、コードネームで呼び合うようなもんか。
今までレイオンも魔物組合の一人だったからあの時黒と断定していたらしい。
それにしても何色あるのだろう。
あれ組み合わせは無限だぞ、まじで。
「けれど、どうやってここに世界さんが居ると判明したのでしょうか」
リザはそう言いながら首を傾げる。
確かに不思議な話だ。
「それに関しては心当たりがあります。闇野様、身体に違和感があったりしませんでしたか?」
マラガさんが、そう俺に聞いてくる。
うーん、違和感……。
そう言えば喉の調子が悪かった気がする。
まさか、それが?
「体外ではなく体内で違和感があれば、恐らくそれは魔界虫と呼ばれる小さな虫によってです。体内にある魔力を探知させ、追跡と闇野様の断定をしたのでしょう」
俺はそれを聞いて急いでうがいをした。
虫が喉にいたってのか。
けれど、あのタイミングの良さなら信じるしかない。
おええええええええ!!
「大丈夫ですか? 体内に虫。考えるだけで私も吐き気がします」
エクシスは何度も繰り返しうがいをする俺の背中を摩ってくれた。
しかし、そこまでやるのか。
きっと大量の魔界虫とやらを放ったのだろう。
リザもカレンも、そしてレイオンまでうがいを始めた。
「ふぅ……。本格的に動き出した奴等に対して、昨夜こちらも動く事を決めたのだ。闇野、他の魔王にも協力してもらおう。このままでは私たちもその内すり潰されてしまう」
他の魔王、だと。
絶対怖い人達じゃないですかー。
……と言ってもそれが一番妥当だろうな。
勇者は繋がっている可能性があるので、却下。
とは言え、俺たちだけでは魔物組合は潰せない。
ならば、という訳か。
「俺は賛成だけど、みんなはどうだ?」
「早急に力が必要な場合は大きいものから狙う。それが定石ですから、問題ありません」
「他の魔王がどんな英雄をモデルにしてるのか気になる。あっ、私も構わないわよ」
「世界さんが良いなら、私はそれで」
話はまとまった。
最悪の場合、例えば協力どころか魔物組合に連行されるとか。
そうなれば当初の予定通り卑劣な手を使うことも辞さないつもりでいく。
女の子ならスカートをめくるとか、男なら股間を狙うとか。
我ながら発想がクズすぎる……。
まぁ、元は序列なんて概念を破壊するつもりもあったのだ。
何を思われようが関係ない。
……けれど素直に協力、実際は厳しいよなぁ。
城内はそれはもう綺麗さっぱり片付いていた。
昨日、あの廊下で剣が振るわれ魔術も使っていたなんて言っても誰も信じなさそうだ。
これも魔術で修理したのだろう。
心なしか昨日より新品感がある。
俺たちは城内へ戻り、レイオンの部屋で今後について改めて話していた。
「私も狙われる身となった。ここで円卓の主導をマレガとトリストンに任せようと話し合ってな。私がいない間はマリーンもここに居てくれる。今更置いてくなんて言わないだろう?」
レイオンもそう言って旅に付いてきてくれるので、正直少し安心した。
無論置いて行く気もなかったが、それでも一国の主だ。
無理強いは出来ないし、素直にそれを俺は喜んだ。
「助かる。俺一人だと他の魔王と交渉とか無理そうだし」
「私も実際他の魔王の実態が分からん。何せ会う機会もそう無いしな」
向かうは五位の魔王の国、アルミナレ。
……それより何でみんな自分の国があるの?
俺なんて誰も居ない町一つだけなんですが……。
悲しいかな、やっぱり格差ってどこにでもあるんだね。
そう少し残念な気持ちもしながら、けれどよく考えれば政治なんて俺にもそして、他の奴らにも無理そうだ。
なのでそれはそれで良かったとしておこう。
いやーまじで国が滅びかねないからな、こればっかりは。
「では、みな行ってくる!」
「お嬢様、闇野様! 吉報をお待ちしております!」
ケルベロスの遠吠えに、グレッチェンも釣られるように吠える。
盛大なパレードのような見送りとともに、俺たちは次の国へ出発した。
読んで下さり、ありがとうございます。
ここより二章となります、引き続きお付き合い頂けますと幸いです。




