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加護持ち領主の和平活動  作者: アイゼン・ジム・トンプソン
第三部 タクミの成り上がり編
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久々の再開は話が尽きないけえ!

「ミヒャエルさまああああ!」

「マリちゃん…」


見てわかんだろ。

女だっての。


腰も細いし、胸も結構あるし。

このバカモグラには負けるけど。


バスコががばっと立ち上がると、マリアの頭をつかんだ。

「むううん!!」

「ぎゃあああああ。割れちゃう!頭がクルミのように割れちゃう!」

「落ち着けい!タクミが困っておろうが」

「…バスコ」

「おう、タクミ。この姿であうのは初めてだな!」

「おう。久しぶり」


バスコはずいぶん髪が伸びた。

けど、いつもとは違って貴族らしい上着とか来ているからちょっと違和感がある。


マリアが、椅子を俺とフェルナンドにすすめると、桃の匂いがするお茶を淹れてくれた。

「・あ、これ“薔薇のお茶館”で飲んだやつだ!」

マリアはにっこりとほほ笑んだ。

「ええ、“薔薇のお茶館”はオラニエ家が買収しましたの」

「買収!?そんな金誰が…」


ああ、オラニエ家はお金持ちだったな。

「・・・まあ、その話はあとで聞くよ。ところでなんでここが?てかグロリアーナは?」


マリアが紫色の花がのったケーキを切り分けてくれた。

マリちゃんと俺が120度づつ、フェルナンドが30度、バスコは2度くらいしかなかったけど。


「…モグラ娘。もっとよこさんか」

「べー、モンタグート様は最近おなかが出てきたから駄目です!」

「ふざけるな!これを見てもまだ言うか!」


バスコはシャツをべっ、とまくり上げるとゴム板みたいな腹筋と分厚い胸襟をあらわにした。

「しまえよ、もうっ!」

「汚いものを見せないでください!」


フェルナンドが「ほう…」とつぶやいたのは聞かないふりをした。


俺は机をどんと叩いた。

「ああもう!グロリアーナは!どうした!」

「シャンタルメリュー様には眠っていただきました!」

「…生きてるよな?」

「もちろん、頭を殴っただけで人は死にませんからっ」


マリちゃんは椅子に立てかけてあるシャベルを愛おしそうに撫でた。

オラニエ家の秘宝「フィダルゴブラッキー」。ゴブリンの王を討伐した際にオラニエ家が手に入れた秘宝と言われている。

マリちゃんの加護とか、そういうものがなかったとしても、シャベルで人の頭を殴って死なない?


何てことしてくれてんだ。


俺はいつのまにか、ケーキを頬ばっているマリやんの後頭部をグーで殴っていた。

「…まだ息があるな。タクミ、鈍ったか」

「馬鹿言うな。シャベルなんて使ってねえわ」


床でくたばっているマリちゃんを揺り起こし、ほっぺたをぺしんぺしんと叩く。

「グロリアーナはどうした!起きろ、マリア!パンツ脱がすぞ!」


フェルナンドが「ほう…」とつぶやいたのは聞かないふりをした。


「シャンタルメリュー嬢は客室で寝ている。へんないびきをかいているが、すぐに目覚めるだろう」

俺の顔から血の気が引くのを感じた。

「…それ、大丈夫じゃないじゃん」

胃がきゅっと締まって、痛くなった。

グロリアーナが死んだとき、俺の計画は?隷属法術は?てか、シャンタルメリュー家の人間を殺しちゃったらどうなる?


「やだやだ、いやだこんなのってないよ、もうなんでおれだけがこんなめに…」

「嘘だ。久しぶりにあったのでな、脅かそうと思っただけだ」


バスコは、がははと笑って俺の肩を叩いた。

「まあ茶でも飲め、久々に会ったからな積もる話もある」

「それは気になってたけどさ。グロリアーナは埋まってないよね?」

「タクミ、俺が見てこよう」


バスコが手を叩くと、部屋に現れたメイドにフェルナンドを案内するようにいいつけた。


「マリアからミヒャエルが“戻った”と聞いた時には驚いたぞ」

「マリちゃんが?」

「あのモグラ娘。おつむは大分鈍いが、勘はするどいな。まあ、経緯は起きたモグラ娘から聞いてみろ」


俺はちょっと泣きそうになった。

誰も俺のことを知らない。200年前に置いてきぼりになったフェルナンドとこの世界に取り残されて、誰も俺たちのことを知らないうちにあの地獄で、森で、街で死んでいくのかと思ってた。

けど、バスコは俺のことを覚えてた。

マリちゃんは会ったこともない俺とあのイケメンドサドとを見比べることができた。


「俺もいきなりだったからな。まあ、きつかったわ。加護なかったら死んでたんじゃないかな」

「大変だったみたいだな。ギルドに入ってからの経緯は大体聞いている」

「まじ?なんで知ってるの?」

「ギルバートから早馬があってな。南方剣術と精霊魔法を使いこなす黒髪の女。といえばタクミくらいしか俺は知らん。はじめはタクミの体を持ったミヒャエルかと思ったが、マリアから折よく連絡があってな」


ギルバートか。

バスコと面識があるみたいだったからな。

いつかはばれるかと思ったけど、こんなに早いとはな。


ミカエラとか名乗る意味もなかったのかも。

そういえば、俺のことをミカエラって呼ぶのはギルバートとガートしかいないわけだし、逆になんか申し訳なくなってきた。


「でな、丁度ローゼンバウム領にいた、俺とマリアがその知らせを受けてこの街で待ち伏せしたというわけだ」

「なんでローゼンバウム領にいたのさ?」

「あそこの長女と決闘することになってな。表向きには手合わせだったが」


決闘?ローゼンバウムと?今しないとあかんか?


…もしかして、バスコが下げているレイピアって…


「なあその剣って見覚えあるんだけど…」

「おう、目が高いなレデューテの愛剣“アルヴァスシュープリーム”だ。とうとう取り返してやったわ」


がはははは。と笑うバスコを見ながら。

俺は、厄災がお米と寝袋と歯ブラシを持って、「一週間お世話になります」って家を訪れたらこんな気分がするんだろうな。


と思った。

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