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加護持ち領主の和平活動  作者: アイゼン・ジム・トンプソン
第三部 タクミの成り上がり編
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奴隷落ちじゃけえ!

グロリアーナが街から呼びつけた小男は「闇ギルド」の人間だと答えた。

俺たちがいる街は、南部貴族の領地だから奴隷契約とそれに類する契約ができない。


一方で、借金のかた、金で売られた子供、エルフなどの亜族が金持ちの奴隷になることは往々にしてあり、そのために闇ギルドの人間が呼ばれるのだ。


ぼろぼろのローブをまとった小男はグロリアーナが渡した金貨2枚をふろころに入れた。

この男が動くたびに、ものすごい悪臭が部屋の中をかきまわす。


「本日はお日柄もよく・・・」


ぼそっと、つぶやき。両手を掲げた。

貧しい身なりとは裏腹に、指にたくさんの指輪やアクセサリーを身に着けている。

ちらっと見た限り、魔力を高める効果のあるもの、防御魔法を自動的に発動できるようにしたものなど、いろいろな効果を発揮しそうだ。


「言っておきますけど、隷属の入れ墨を入れている最中に発した言葉はすべて契約に含まれますの。余計なことは言わないほうが身のためですわよ」


グロリアーナは手袋を外し、男に手首を差し出した。

隷属の入れ墨は、契約者の血液と法術のかかったインクを混ぜ合わせて作るらしい。

男が来るまでの間に、グロリアーナは意外にも冷静にいろいろと教えてくれた。


ものすごく痛いこと、契約を破ると入れ墨が皮膚を突き破って心臓に突き刺さること、隷属で契約した内容はどんな法術をもってしても解呪できないこと。


「意外と親切なんだな」

「あなたが信用できないだけで、提案自体は魅力的ですもの。本当に味方になるのなら、便宜を図る覚悟はできていますわ」


俺は、下着以外身に着けているものをすべて脱ぎ、椅子の背に胸を押し当てる形で座った。


「それでは、隷属の契約を」

「いったあああ!」


男が手にした小刀が俺の背中にプスッっと突き刺さった。

男は小刀を抜くでもなく、動かすでもなく、背中に刺さったまま固定している。


「今のうちに契約内容を口に出して」


グロリアーナの耳打ちで、俺はふと我に返った。


「グロリアーナ・フォン・シャンタルメリューがシャンタルメリュー家の当主となるまで俺、白森タクミはグロリアーナの家臣として命を懸けて仕えます。グロリアーナには嘘を絶対につかず、故意に不利益となる行動、発言も起こしません。また、この契約内容は第三者には絶対漏らしません。ただし、グロリアーナが許可した場合にのみ契約内容を明かすことを求めます。」


俺のことばが終わるか終わらないかのうちに、男が小刀をぐりぐりと動かした。

隷属の入れ墨は小さいものの、こんなに深く刃を入れるなんてわからなかった。

入れ墨っていうよりも、切り傷だろ。これ。


痛いよ。


出来上がった入れ墨はまだ、血が流れていて、見えないけれども熱く血が流れているのを感じる。

グロリアーナがその血濡れの入れ墨に手を置いた。


「いだだああいい!」

「グロリアーナ・フォン・シャンタルメリューの名前において、タクミ・シロノモリの宣誓を受け入れます」


グロリアーナが流した魔力が俺の体を伝わり、魂のなにかに触れた気がした。

これが魂の契約ということなのだろう。

だれかに見守られているような、そんな気持ちがいいような気がしないでもない。

けど、これはあくまでも奴隷の安寧だ。


いつかは破られるべき契約に、俺は気持ちよくなっちゃいけない。

そう決意した瞬間に、グロリアーナは手に持った小刀で小男の手を貫いた。


「ぎゃあああああ」

「シャンタルメリューも舐められたものですわ。1日に二度も恥辱を与えられるなんて…」


ろうそくの明かりがグロリアーナを照らしていた。

ルビー色の髪が赤く輝き、グロリアーナの真紅の瞳を照らしていた。

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