暗雲がたちこめてるけえ
「弟はガルシア家と通じてローゼンバウム家を乗っ取ろうとしているのです」
?????
いやいや、いや...いーーや。
あるな。
あのサイコサドはどういうわけかわからないけれども、至るところにコネクションを持っている。
それも、アドナイアスにも知られないようにだ。つまり、家同士の付き合いとかそういうものではない。あいつ自身が自分で築き上げてきた人脈なのだ。だから、グロリアーナの弟に手を出していたとしても不思議じゃないんだけどね。
手を出すって、もちろんそっちの意味じゃないよ。
いやそっちの意味かも。
自信ない。
「でもさぁそんなに簡単に貴族の家って乗っ取れるもんなの?」
「割と簡単ですわよ、弟は四大伯爵家の長男、それに、ローゼンバーグ家には跡取りがいませんから」
「それは子供がってこと?」
「ええ、今の当主様のご子息が生きていればそろそろ跡を継がれていたころですわ」
「その方は亡くなったのか」
「ガルシア家のドラゴン討伐で亡くなったそうです。まだ16歳だったといいます」
そういうことがあったのか、ドラゴン討伐というのはあの魔物ディモンズドラゴンに違いない。
ガルシア家の屋台骨を揺るがすたあの事件、もしそこで息子をなくしていたらローゼンバーグのあの態度も理解できる。
いや、むしろこっちが煽りまくってるんじゃないかと今更不安になった。
まぁバスコは「死んだ奴が悪い!」とか言って余計炎上しそうだけど...
「それで?」
「弟は数年前から屋敷とは離れた場所にある別荘によく行くようになっていました。本人は借りだと言い張っていましたが、矢が綺麗なまま全然減らないんですもの、すぐに気づきましたわ」
「ただ弟もなかなか用心深い性格ですから、召使たちに探りを入れるわけにもいきません。そこで私はペルペチュコ家に潜入を依頼したのです」
「ペルペチュコ家ってあの。」
「ええ、暗殺とか毒殺とかそういったものは違法ですけれども、探りを入れる程度の依頼ならどこの貴族だってやっていますわ」
「で何かわかったの?」
「ガルシア家から頻繁に手紙が来ていることを知りました。しかし家とガルシア家には何の交流もありませんし、弟はまだほんの数回しか帝都に行ったことがなく、ガルシア家の前当主やミヒャエルとも会った事はなかったはずです」
「それで、あのミヒャエルが当主になってからも手紙は届いていたようです」
「ようですってのは?」
「ペルペチュコが姿を消したのです」
「とんずらしたってこと?」
「それなら良いのです。報酬も前金しか払っていませんでしたし。私が懸念しているのは、その…」
「消されたのかもしれないってことか」
「ええ、私の領地には溶岩溜まりがたくさんありますから」
人ひとりくらい簡単に消せるってことか…
「その、ペルペチュコを消した人間に心当たりは?」
「弟、弟の護衛のガストン、弟の教育係のロジャーズ、それから弟の友人でシャンタルメリューの分家のシャマシュもなかなかの手練れだと聞いています」
まあ、4人がかりなら殺害も隠蔽も可能か。
でも、大体わかった。グロリアーナが弟に当主を譲りたくない理由。
これだけヤバイ雰囲気があるのに、そりゃあ譲れないよね...
「ちなみにさ、錬金術師とかって最近弟を訪ねてこなかった?」
「...錬金術師ですか。魔術師と違って判別する方法がありませんから...」
あのド変態がいるかもしれないと思ったのにな。まあ、メルカリアスがあるから意味ないか。
「あっ、でも最近エルフの奴隷を購入したと聞きましたわ!」
「エルフ?」
「ええ、シャンタルメリュー領は暑くて、寒い環境の厳しい土地ですので、森の中で暮らすエルフには適していませんの。すぐに死んでしまうので、奴隷にしても領地に連れてくることはまずないのですけど...」
ああ、マリちゃんから聞いたな。なんでも他領土、特に北方貴族の領土ではいまだに奴隷制があるとか。
異種族との婚姻を法律で可能にしたガルシア家は相当進んでいたらしい。
あのあと、バスコやマリちゃん家でも同じ法律を出そうとしているけど、臣下に止められて相当もめていると聞くし。
「そのエルフって見たことは?」
「ありません。けど、個室を与えられたり冷風の加護のついた衣服を与えられるなど、とても奴隷の扱いではないと聞きました」
あやしー
「よし、とりあえず領地についたらそのエルフから調べておこう!」
「水中火はどうしますのよ」
うっ、すっかり忘れてた...
「もっ、もちろんどうにかするさ」
領主って立場じゃなくなっても前途多難だぜ...




