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加護持ち領主の和平活動  作者: アイゼン・ジム・トンプソン
第三部 タクミの成り上がり編
79/135

案ずるより産むが安かったけえ

手が緑色になり、握力がなくなりかけたころ、グロリアーナがついに根をあげた。


「…もう、無理ですわ。一旦街に帰りましょう」


肉体操作系の加護を持っているらしいが、腰をかがめての薬草採取は相当に厳しかったらしい。彼女の眼がどこか虚ろで地面にへたり込んでしまっている。


まあ、帝国の四家の長女が薬草摘みを黙ってこなしているだけでも大したもんだと思うけどね。よほど弟のギュスターブに家督を奪われるのがいやらしい。ちなみに帝国では家督は男女関わらず優秀な方か先に生まれたほうが継ぐものらしい。


「おいたわしやグロリアーナ様…」


目を涙で潤ませながら、グロリアーナの手をマッサージしているダニエルもあれだけ大切にしていた礫熱剣れきねつけんボナヴェンチャを地面に置きっぱなしにしている。


「おーいミカエラ!そっちの調子はどうだ…って情けねえなあ」


泥まみれになったフェルナンドとガートが森の奥から戻ってきた。2人はギルドの依頼品である薬効のある樹皮を集めに行っていたのだ。なぜ、泥まみれになったのかは知らない。馬鹿だからじゃないの。


「うるさいっ!グロリアーナ様の白魚のような指でこんな汚い草を摘むなど元々が無礼だったのだ!」

「誰が無礼だ誰が」


ガートがつめよったダニエルの肩を突き飛ばす。よろけたダニエルは地面に置いた剣に目をやるが、すぐにグロリアーナの顔を見てガードに目を戻した。


「まあ、帰りもあることだ疲れ果ててしまうのは下策だな。それに、失敗を補って余りある収穫もあったみたいだし」


フェルナンドが、俺の横に腰を下ろして水筒を取り出し、グロリアーナにすすめた。断るかと思っていたんだが、意外にもグロリアーナは水筒をうけとり水を口に含んだ。


「一体、あなた達はワイバーンを狩ってまで、なぜ薬草摘みなどするのです?ガルシア領なら回復薬くらい街で購入できるでしょうに」

「いやだってさ、Bランクにならないと竜退治ドラゴンスレイの許可が出ないんでしょ?ワイバーン狩ったって報酬出ないんじゃ意味ないしね」

「…あなたは、Bランクになるために薬草を摘んでいたと、いえ、私に土いじりをさせたの?」

「え、そうだけど。ギルドにはほかに依頼がなかったし…かといって薬草摘みだけじゃ借金が返せないし…」


白目をむいたグロリアーナは額に手を当て、狩猟服のポケットから金色のカードを取り出した。


「私は、Aランクのギルドカードを持っていますのよ」

「うそん」


でもそうか、ワイバーン狩っていたわけだし、無許可じゃないよな。Aランクというのは意外だけどシャンタルメリューの攻撃力を考えたら当然か。


え、でもグロリアーナがAランクを持っているってことは、別に俺たちが急いでBランクになる必要はなかったってこと?もちろん、ギルバートに対する義理はあるけど、ワイバーンを合法的に狩ることができたら薬草なんて市場で売っているのを買って依頼を達成したことにしてもいいわけだし。(よくよく考えたら依頼内容は薬草を納品することで、森で摘んでくることではなかった)。もちろん、大分損はするけども、そもそもワイバーン1体狩ることができたら薬草なんて畑一杯買い占めたって懐がずきりともしない。


「よし!帰ろう!」


俺と同じ考えに至ったのかフェルナンドは小さく拳を天に掲げた。

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